家に着いたら腹ペコカップルが?〔後編〕
「ストーップー!ストップー!ストップー!死にたく無かったら止まりなさいーっ!」
「はいっ!・・・でも、死にたく無かったらって物騒っすよ?」
あれ?
この声・・・もしかして女の子なのかな?
ドラゴンの性別・・・見ただけじゃ分からない。
でも、女の子の声だよなぁ
「冗談でもないし大袈裟でもないのよー」
「シズネ・・・そんなヤバかったか?」
「パニック寸前ー、殺る気満々まで後1歩って所かしらー」
失敬な!
怖かったけどパニックまでは行かないよ。
まぁ、殺る気は有ったかな。
だって怖かったんだもん!
頭だけで私の数十倍はある厳つい顔した真っ赤なトカゲが急接近してくるんだよ!
迫り来るトラックなんかよりずっと怖いんだよ!
覚悟決めて応戦しないと死んじゃうの確定してたんだよ!
だったらやるでしょ?
「でー、スカージュちゃんは何か用かな―?」
「私、私今朝からずっとミランダさんを探してたっす!家の有った所に行ったら家が無いし、自分で探せって書いてあるし、探す方を間違えて『樹海』に入りそうになっちゃったし、見付けたら見付けたでミランダさん居ないし、泣きそうでした」
「ミランダーお前は女泣かせだったんだな、こないだはシズネを泣かしたし」
「それー、なんか釈然としないんだけどー!シズネちゃんは私が悪かったけどー、スカージュちゃんは私のせいじゃないー!」
そうかな?
看板に壁って文字を入れとけば『樹海』には行かなかったんじゃないかな?
「シズネちゃん、ゴルドみたいな奴がまっしぐらで来てもいいの?」
遠慮します。
いやっ!
拒否します!あんなのが来たら出れない深さの穴掘って落とします!
・・・
・・
・
「いっぱい落とし穴作ろうかな」ボソッ
「や、止めようー。シズネちゃんのいっぱいは洒落にならないだろうからー」
そっかな?
ざっと100個位?
それくらいないと安心出来ないよね?
「でー、スカージュちゃん。人型になってー。その姿を怖がってる子が居るのー」
「えっ?あっ!はいっ!」
ふぉぉぉぉぉっ!
すっげーっ!
一瞬で人型になったよ!
かっけーっ!
私もやってみたーいっ!
「あっ!・・・ミランダさんその子は・・・可愛いっすね!ペットっすか?」
「誰がペットじゃー!失敬なっ!」
「おぉっ!喋った!」
確かにおっぱいに挟まって頭だけ出して様子見てるから、堂々としてないからペットみたいかも知れないけどさ。
いきなし『ペットっすか?』は無いだろう。
ほら、ミランダさんも何か言ってよ。
ん?・・・何で視線を逸らしてるのかなぁ?
・・・もしかして。
「私が咄嗟に否定しなかったら『そうよ♪』って言うつもりだった?」
「そ、そんな事はー・・・」
あったんだね。
まったくこの人も初志貫徹ブレないんだから。
「あ・・・」
ん?
「あふぇー」
へたり込んだ?
もしかして早とちりしたのを反省したの?
「お・・・お腹減ったっす。今日は何も食べてないっす」
今は夕方だよ、そりゃ空くでしょうよ。
うーん、食べ物を分けても良いんだけど・・・
自分の価値観であげたりするなってアイシャさんに注意されたからなぁ。
・・・
・・
・
買って来た物じゃなきゃ分けても良いのかな?
だったら。
「木の実で良かったら採って来てあげるよ」
「食べれるなら何でも良いっす」
「分かったーちょっとだけ待っててね。ミランダさん、お茶でも出してあげて私ちょっと行ってくるね」
「シズネ、ちょっと待・・・行っちまった・・・木の実ってあれだよな?」
「あれだよねー」
「シズネ殿にとって木の実とはあれだけなのである」
「ミランダ、茶菓子が有ったら用意してもらえるか?」
「なんすか?危険な木の実なんすか」
「危険って言えば危険かもねー」
「基本的には希少な木の実である」
「ところでスカージュ、彼は誰だ?」
「彼はシュヴァツっす。あたしの夫っす」
「「夫!?」」
「そうっす♪昨日結婚したっす」
「おま・・・まだ学生だろ?」
「今期で卒業っす」
「卒業と同時に結婚だと?・・・生意気な!」
「あははははは、そこは勘弁して下さいよアイシャさん」
「ただいま!」
「早ぇな!」
大急ぎで拾って来たからねー
とりあえず30個づつ有れば足しになると思うけど。
変身しても胃袋に入るのはドラゴンサイズだったら洒落にならないんだけど、大丈夫だよね。
「あら、シズネちゃん早かったのねー、まだお湯が沸いてないからお茶はまだなのよー」
「茶はまだって事だが、とりあえず行くぞ。ノスフラトはどうする?」
「我輩は買った物の整理をするのである。我輩も知っておかねばならぬ案件なら後程知らせて欲しいのである」
「そうするよ」
ノスフラト君は片付けかぁ。
私もいっぱい買ったから整理はしたいんだけどな、こっちの2人も気になるんだよな。
どうしようかな?
「ほれ、シズネ行くぞ」
あっ!こらっ!摘まむな!
「大暴れモード発動!」
「あっ!こらっ!分かったから止めろ!・・・まったく上からだと他に掴む所がないんだからちっとは我慢しろ」
「だってぇーそこ摘ままれるのイヤなんだもん」
アイシャさんの肩に置かれて一緒に旧ミランダ宅に入ったんだけど。
散らかってるな!
何か作ってるみたいだけど、作業が完了するまでは片付けない人なのかな?
初めて来た時は片付いてたから・・・そっか、妖魔王の使い魔がいきなり来たから片付ける時間がなかったんだ。
「そこのテーブルは触らないでねー、座るのはあっちのテーブルねー」
なるほど、こっちのは作業台も兼ねてるのか、色んな物が置かれてるなぁ。
葉っぱ・根っ子?枝?石・黒こげの何か・皮?毛?爪?角?羽・種・何かの液体・空瓶?
うーん・・・薬って得体の知れない物から出来てるんだなぁ。
「でー、スカージュちゃんは-、何で私の所に来たのかなー?」
「それは、頼る人がミランダさんしか居なかったからっす」
「頼る?何でだ?お前の親父を頼れば良くないか」
「その親父・・・父上から匿ってもらうためっす」
うん、まったく話が見えない。
私は聞いても仕方無い気がするんだけどな。
「もしかしてー、結婚が関係してるー?」
「そうっす!父上が許してくれないっす!だから駆け落ちして来たっす」
駆け落ち!初めて見たよ。
すっげー!
親に逆らってでも一緒になりたい人かぁ。
やっぱりすっげー!
「んー・・・あのさー、それなら私の所に来ちゃダメなんじゃないー?」
「なんでっすか?」
しかし、このスカージュちゃんは見た目からは予想もつかない喋り方だなぁ。
見た目?
見た目はね一言で言っちゃうとお嬢様って感じ、お淑やかな印象がある美人さん。
髪型は真っ赤なロングのストレートに3本の黒い線が入ってて、ドラゴン形態の模様と同じなの。
つか、あれ?
知り合ったのは、また美形ですか・・・
そう言えば、街中を歩いている人達も美形ばっかりだったような気がする。
・・・もしかして。
この世界のルックスの平均点って凄い高いんじゃない?
だったとしたら、私は世界一のブチャイクなんじゃ?
・・・人化どうしよう?
美化して人化とか器用な事は出来そうにないしなぁ。
でも服は着たいよなぁ。
・・・考えとこ。
「ヴラド君と私は知り合いだものー、当たりを付けて来る可能性は高いよー」
「うっ・・・来るっすか・・・他に行くあてがないっす、どうしたら良いっすかね?」
「駆け落ちなんて行くあてが無いのが普通だろ」
「そうなんだけどねー、箱入りのスカージュちゃんは知らなくても仕方無いかもねー」
箱入り?
見た目通り、良いとこのお嬢様なの?
中身は・・・先輩大好きの後輩ちゃんだけどね。
「シュヴァツだっけか?お前はどうしたいんだ?」
「オレは親を説得してからの結婚でも遅くはないと思ってます」
「だから、あの父上が親無しのシュヴァツの事を認める訳が無いって何度も言ったでしょ」
「親無しなのか?だとしたらヴラドが認める可能性は低いかもな、あいつは世間体ってのを気にするからなぁ」
ふーん、娘の幸せより自分の体面のが大事なのか。
なんかいけ好かない感じだね。
「親なんて遅かれ早かれ居なくなるもんなんだけどねー。そうそうー、シズネちゃんの拾って来た木の実ー、ミラクルナッツだからー、食べ過ぎると凄く寿命が延びるから気を付けてねー」
「へっ?・・・うっわぁ!生命力が6000も上がってる!マジっすか?」
「オレも7000位上がってる」
おぉ、凄い上がったなぁ。
バクバク食ってたからなぁ。
「有り得ないっす・・・一気に6000って有り得ないっす・・・この人はなんなんすか?」
「大家さんよー?もしここに住むなら頼み込む相手って事よー」
「「えっ?」」
なるほど、そうゆう事ね。
私が強制連行されたのは、こうなるのを見越してだったのね。
うーん。
別に構わないんだけど、父上ってのが来たらどうすんだろう?
それだけでもちゃんと聞いておかないとね。
しかし・・・2人して見詰めないで欲しいな。
恥ずかしいって。
「『拒絶の壁』を掘ったのってアイシャさんかノスフラトさんじゃないんですか?」
「あたしじゃ傷一つ付けれないよノスフラトの魔法でも無理じゃねぇか」
「じゃあホントにこの人が・・・あの私達をここに住まわして欲しいっす!お願いします!」




