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そのハムスター、享楽家につき ~色々な称号、熨斗付けて返却したいんだけど?~  作者: ウメルヴァ
ハムスターに転生 1章 プロローグ

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あーれーおよしになってぇ剥かないでぇ〔前編〕

 庭造りねぇ。

 あたしは最初っから見てたけど、木の配置がどうとか、四阿あずまやの向きがどうとか、通路の石の形と間隔がどうとか、かなり手間暇かけて造ってたよな。

 正直、まどろこっしいと思ったからな。

 ティファは知ってるのかねぇ。

 ・・・時々様子を見に行ってやるか。

 ん?あれは・・・


「ミランダ、これから仕事か?」

「あらー、アイシャちゃん。体力回復薬と炎症抑制薬を作っておこうと思ってねー」

「ん?・・・ティファのためか、随分と優しいな」

「シズネちゃんの手伝いを1回やって分かったんだけどー。穴掘りって凄いキツいのよー、1時間やっただけで腕はだるいしー腰はビキビキ痛いしー、次の日なんてー筋肉痛で腕が動かなくなるのよねー」

「そんなにか?」

「えぇ。シズネちゃんのバケモノじみたステータスが納得いったものー」

「・・・それ本人に言ってやるなよ?」


 嫌がるんだよな。

 普通と違う意味の言葉を。

 あいつは今でも自分は下から数えた方が早い弱い存在って思ってるはずなんだよな。

 自分は弱いって思ってるくせに、上から目線の奴がキライ。

 しかもだ、死んだっていいから徹底的に逆らうって訳の分からねぇ奴だしな。


「もちろんよー。拗ねて膨れたシズネちゃんも可愛いけどねー・・・アイシャちゃんみたいに命懸けでする事じゃないしねー」

「・・・言ってくれるじゃないかい。あん時は、あそこまでと知らなかったんだよ、仕方ねぇだろ」

「あはははは、私も同感ー。たった1ヶ月会わなかっただけで強くなってたからねー」

「あたしの【強者感知】に引っ掛かったくらいだしな・・・思い出したぞ、あん時は随分と意地の悪い事をしてくれたよな」

「なんの事かしらー?長生きし過ぎかなー?最近の物忘れが激しくってー」


 こいつ・・・やっぱ底意地が悪い。

 あんなズタボロになってたのを忘れるってのはねぇだろう?

 あたし自身あそこまでなったのは初めてだったしよ。


「それにさー、ホイホイ再生薬をあげてたら今でも誰彼構わず喧嘩売って廻ってたんじゃないのー?」


 えっ?

 ・・・かも知れないな。

 そう考えると、あれで良かったのか?

 うーっ・・・分かんねぇ。

 でも、丸くなったのは確かだな。


 どう言う事か知らねぇが、シズネの周りには強い奴が寄って来るんだよな。

 以前のあたしなら、片っ端から喧嘩売ってたはずだしな。

 面白れぇ事に、あたしが気に入らない奴はシズネも気に入らないと来た。

 しかも、あたしより先にキレちまうんだよな。

 ホント、シズネってのは面白れぇ奴だ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 あっ!

 ミランダさんだぁ♪


「ミランダさんおかえりー♪怪我とかしなかった?」

「私は大丈夫よー、シズネちゃんこそー・・・おでこが腫れてるー?大丈夫ー?」


 マジっすか!

 たんこぶ出来ちゃったのか。

 痛かったもんなぁ。


「こいつにデコピンされたの」

「あらー?アイシャちゃん久し振りねー。暫く見ない内にイメチェンしたのー?」


 ・・・どんなイメチェンだよ?

 左腕が二の腕から先が無くて、両足は太股に穴が空いてて、脛は骨が砕けてひしゃげててるんだよ?

 どんなドMでも、こんなふうにはなりたがらないと思うんだけど。


「まぁ・・・ちょっとな、こいつに手伝ってもらったよ」

「おい!コラッ!摘まんで持ち上げるな!右も消すぞ!」


 マジで消すぞ?

 まだまだ【穿つ】余力は有るんだからな。


「ところで、ミランダ。再生薬をくれねぇか?」

「ん?・・・んー・・・シズネちゃんに何したのー?」

「喧嘩売った」


 一言で言っちゃえばそうだけど・・・

 普通に売られた位なら買わないわよ。


「そうなのー?シズネちゃん」

「・・・私の造った物を壊した・・・知らなかったとはいえ壊して謝りもしないの、そんで嘘吐きって言ってデコピンしたの」


 盛り土して造った土台なんて見分ける事は難しいだろうから、それは仕方ないかも知れないけど。

 嘘吐きとデコピンは腹が立つよ。


「おい、強い奴は居たじやねぇか、嘘だったろ」

「だーかーらーっ!私は強くないっ!スキルが上手くいっただけ」


 私もビックリな位に【破砕】【穿つ】がヒットしたんだもん。

 私自身が強い訳じゃないもん。


「だとしてもだ、あたしを圧倒したじゃないか。それは、お前の実力だ」

「シズネちゃん、この人ー・・・アイシャちゃんはー、こんなになってるけど魔王なのよー」

「・・・・ふぇ?」

「シズネちゃんの言う通りー、スキルがたまたま上手く当たったとしてもー、並みの人ならここまでには出来ないと思うのよー」


 ま、魔王だったの?

 えぇー・・・

 不味いのを叩きのめしちゃった・・・って事?

 ・・・

 ・・

 ・

 逃げなきゃ。


「あっ!私、急用を思い出しちゃった、んじゃ」

「どっこ行っくのっかなー?」


 ニコニコのミランダさんに捕まってしまった。

 なんだろう・・・

 そのニコニコ、ちょっと怖いよ。


「ふっふっふーシズネちゃんは嘘吐くの下手ねー、逃げようとしたの直ぐ分かったわよー」


 な、なにーっ!

 バレてたのか・・・


「私はシズネちゃんの事なら何でも分かるのよー」


 ミランダさん?

 それストーカーの常套句みたいで怖いよ。


「バレバレだった?」

「そうねー。直ぐ分かったよー」

「おぉーい。あたしの事を忘れないでくんねぇかー」


 私は忘れたいんだけど。

 厄介事になりそうだもん。

 記憶から消したいんだけど。


 ・・・消す?

 そうかっ!

 跡形無く【穿つ】で消しちゃう?


「シズネちゃん?今、凄く物騒な事を考えなかったー?」


 な、なんで分かったの?

 エスパーなのか?

 心が読めるのか?


「そ、そんな事ないよ?と、ところで何でも知ってるミランダさん」

「長生きしてるけどー、何でもは知らないよー?シズネちゃんの事だけだよー」


 をい?

 その台詞、三つ編みの巨乳眼鏡の委員長の天才ちゃんのとほぼ同じじゃないかい?


 そう言えば・・・似てるかも。

 濃いめの茶色で、腰まである軽くウェーブした長い髪を三つ編みにして。

 パッチリしていて少し垂れぎみな目。

 しれっと核心を付いて来る台詞。

 顔の造りも似てる。

 そして巨乳。

 何で気が付かなかったんだろう?

 3次元にしたらきっとこんな感じだと思うよ。

 モフモフ命って所以外はね。


 って事はだよ?

 不用意な事は言わない方が良いのかな?

 うーん


「ミランダさんは私にどうしろって言うの?」


 正解が分からないなら聞いちゃうのが一番。

 分からないもんは分からないのよ。


「アイシャちゃんの事を許してあげる気はあるー?」

「・・・謝ってくれたら・・・百歩譲って嘘吐きってのは謝らなくても良いけど、壊したのとデコピンの事を謝ってくれたら許す」

「だってよー。アイシャちゃんどうするー?」


 盛り土を壊したのが、わざとじゃないのは分かってるの。

 故意じゃなくても、軽くでも良いから謝って欲しいの。

 デコピンは心底だけどね。


「それで許すのか?それ位なら・・・悪かった」


 何だろう?

 釈然としない。

 壊した方はそれでも良いよ。

 でも・・・


「アイシャちゃん?納得いってないみたいだよー?壊したのはねー、わざとじゃないからそれでも良いけどデコピンがねー・・・って感じかなー?」


 だから・・・何で分かるのよっ!

 ミランダさん・・・怖すぎるよ?


「・・・喧嘩売るのが目的だったとは言え、不意打ちして済まなかった」


 ・・・意外だぁ

 魔王って位だからもっと尊大な謝り方をするのかと思ったんだけど。

 ちゃんと謝った。


「ビックリしてるみたいだからー。オッケーねー、はい、再生薬よー」

「すまん、恩に着る」

「ちゃんと代金は貰うから気にしないでー」


 あれー

 私は払わなくて良いって言われたけど。

 持ってる人からは貰うって事なのかな?


「それは当然だな。しかし・・・デコピンで思い出したんだけど、あれを喰らってピンピンしてる奴には久し振りに出会ったぞ」


 そうなの?

 デコピンだよ?

 悶絶する程じゃないでしょ?


「アイシャちゃんのデコピンは痛いってので有名だしねー」

「うーん・・・ミランダ、怒るなよ。あたしは消し飛ばすつもりでやったんだよ」


 あっ・・・笑顔だけどミランダさんのこめかみがピクピクしてる。

 うっひょー

 こえー


「へ、へぇ、そうなんだ。なのにシズネちゃんはピンピンしてると、さすが私のシズネちゃんねー」


 まてぇいっ!

 いつミランダさんのになったのよ?

 私はペットじゃなーいっ!


「ミランダのなのか?」

「ちがぁーうっ!私は誰のでもなぁーいっ!」

「えぇー、私達は相思相愛じゃないのー」


 いやいやいやいや。

 それ違う。

 確かにね、ミランダさんは約束守るし優しいし良い人だから好きだけど。

 愛してまではいない!


「なぁーんて事を本気で言ったらシズネちゃんに嫌われちゃうねー」

「なっ!・・・私をからかって遊んでたの」

「人聞きの悪い言い方をしないでねー。ほらー、シズネちゃん怒ってる気持ち無くなったでしょー?」


 そう言えば無い。

 むぅ。

 ミランダ流沈静術ってわけか。

 やっぱり凄い人だね。


「ところでさー、シズネちゃんは何でピンピンしてるのー?」

「ふぇ?」

「あたしのデコピンは軽く打っても並みの奴なら瀕死、ちょっと出来る奴でも気絶するんだよ」

「ふぇ?」


 そんなデコピンをハムスターの私に放ったのかっ!

 あ・・・

 そいや、消し飛ばすつもりとか言ってたっけ。

 それじゃ・・・何でだろう?


「お前・・・シズネで良いんだよな?」

「うん、シズネで良いよ。アイシャさん」

「ん、で、シズネは自分のステータスは見れるのか?」

「見た事は無いけど見れるよ」

「んじゃ、ステータスを見てくれないか?」

「ハムスターのステータスなんて高が知れてると思うよ?」

「まぁ、それでも一応な」


 


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