引っ越し希望者登場〔後編〕
あの声は・・・
なんて意味深に言ってみたけど、こっちに来てからの知り合いって2人しか居ないのよね。
目の前に居るノスフラト君とミランダさんの2人。
だからミランダさんだぁね。
何だろ?何かあったのかな?
もしかして、人化するのに良いマテリアルが見つかったとか?
だったら嬉しいなぁ。
何はともあれ、お出迎えだね。
廊下に顔をちょこっと出して見えるかを確認・・・見えない。
それじゃあ、出入り口から顔をちょこっと出して見えるかを確認。
・・・あっ、居た。
階段の下でこっちをジッと見てるよ。
あっ!
見つかった。
をっ?
目がキラキラし始めたぞ。
「シッズネちゃ~ん!今日もモフモフで可愛いねぇー♪」
おぉう。
私、いつ捕まったんだ?
ぜんぜん見えなかったよ。
うぅむ・・・
ファーマシスト・ミランダ、侮り難しっ!
ステータスはそんなでもないって言ってたけど。
目視出来ない素早さで、そんなでもないのか?
そうなのか?
誰でも出来る普通の事なのか?
・・・かも知れないのかも。
あっちの友達にも好きな事柄になると、いつの間に?ってのが居たからね。
だとすると、私が個人的に好かれてるのか。
モフモフだから好かれてるのか。
どっちなんだろう?
高確率でモフモフだからな気がしてならないんだなぁ。
だってさぁ。
『モフモフは正義』
って台詞に共感しそうだもの、この人。
でもでも。
人化したらモフモフじゃなくなっちゃうんだから、モフモフ目的じゃないのかも?
うーん・・・分からん。
つか・・・
「えぇかげんせーいっ!そんなにこねくり回されたら団子になっちゃうでしょーっ!・・・私を団子にしても美味しくないよ」
「あははは、だってかぁいいんだものー」
「可愛いければ団子にするのか?ミランダさんは」
「う・・・うーん・・・うーん・・・うーん・・・」
「分かった分かったから、やっても良いから。でも止めてって言ったら止めてね?」
「それはもちろんよー。それよりー、この階段は素敵ねー」
「そう?土と砂利だからそんなでも無いと思うけどな?」
「私は初めて見たデザインだよー、入口を中心に半円形の階段ー、どの方向からも上がれるってのが良いよー。こうゆうのお城にも無かったよー」
「ふむ、言われてみれば我輩の城にも無かったのである」
「そうなの!?私の居た所は普通にあったよ」
「異世界は進んでるのねー。それとねー、これっ!細かい溝が掘ってあるけど何でー?」
「滑り止めだよ。後、雨が降った時に水が溜まらない様に溝に沿って流れてねってなるはずなの」
実際はどうなるか分からないんだ。
階段に傾斜をつけたわけでも無いから流れないかも知れないのよね。
「シズネちゃん・・・貴女は天才かっ!?」
「なんでっ!?これもあっちじゃ普通なんだよ」
「さ、さすがは異世界ねー、一度見に行ってみたいよー」
あのね、私思ったの。
あっちはスキルもマテリアルも無いから色々と発展したんじゃないか?って。
だってね。
やり続けてれば熟練度が上がってスキルゲットして出来る様になったり。
マテリアル装着してスキルゲットとか無いじゃない。
スキルが無いから切磋琢磨したって無駄な人も出て来るよね?
そういう人は技術じゃなくアイデアで勝負する人も居るはずだよね?
そのアイデアが素晴らしい物だったらアッと言う間に普及する。
そんな事を繰り返して技術は勿論だけどデザインなんかも発展したんじゃないかな?って。
まぁ、私が暮らしていた時代よりずっと前は、だけどね。
「中も凄そうねー。見ても良いー?」
「うん、ノスフラト君も良いでしょ?」
「構わないのである」
「では早速ー」
まだまだ未完成だから失望させちゃうかな?
「ふぉぉぉぉっ!すっごいピッカピカだぁ!これってー、その小さい光球の光が反射してるのー?」
やけに明るいと思ったら、そういう事だったのか。
これは、ちょっと明る過ぎだよなー
これも何とかしないとね。
「シズネちゃんっ!ここすっごいよー!」
「ありがとう、でも私は不満。言われるまで気が付かなかったけど、横と下から光が来るのは納得いかない」
「なんでー?明るくて良いと思うけどなー」
「ノスフラト君は下から光を当てられて読書できる?ミランダさんは薬の調合できる?」
「えっ?」「ふむ」
私は苦手なんだ。
横とか下から光が来てるって認識出来るのが。
気が散って集中出来ないんだよね。
「集中してしまえば出来るのである。しかし、集中するまで気になるやも知れんのである」
「私はー・・・どうだろー?そんな事は経験が無いからなー」
「経験ないなら気になるんじゃないかな?だから、なんとかしないといけない事だと思うの」
対策は木で壁と床を覆えば良いかな。
壁と床を木で造るなら、防音対策も出来るかも。
「後ね、多分なんだけど、ここって1枚岩をくり貫いてるでしょ。だから、遠くで岩を叩いた音が伝わって来るんじゃないかなって思うんだ。だけど壁と床を別素材で作れば防音も出来るはずなんだ」
「シ、シズネちゃんっ!貴女はやっぱり天才よっ!」
またまたぁ。
居住性を考えたら、そうなるんだって。
それに、自分が住みたくない部屋を完成ってするのは悪徳業者ってもんだよ?
うーん・・・
コルクが防音素材だって聞いた事あるんだよね
だから、大鋸屑とかでも防音素材になるのかな?
綿とかは探すの難しそうだし・・・大鋸屑みたいに木材を細かくしたのを試そう。
それはそうとして・・・
「だーかーらー。天才違うって。造るからには納得行く物が造りたいの。ミランダさんもそうじゃないの?」
「・・・そうねー、作った物を不良品とか言われるのは癪に障るわねー・・・」
さすがは伝説のファーマシスト、分かってくれたよ。
あれ?
そう言えばミランダさんは部屋を見に来ただけなのかな?
その可能性もあるけども・・・だ。
「ところでミランダさん。何か用事があって来たんじゃないの?」
「あっ!そうだったっ!シズネちゃん、人化に良さそうなマテリアルが見つかったよー」
「我輩も絞り込んで、これが良いのではと言うのを決めたのである」
「ホントに!ありがとう♪で、何が良いの?」
ちょっとワクワク。
いや、かなりワクワク。
どんなスキルなのかな?
「えっとねー 【物質操作】がいいと思うー・・・だけどー、人化するには熟練度をカンストしないとダメだと思うのー・・・」
「吾輩も同じ物に至ったのである。【変化】以外で人化するならば【物質操作】しか無いと思われるのである」
「一応ねー【変化】の裏取引相場を調べてみたんだけどー、金貨10万枚だってー・・・これ普通の村を村民付で買ってもおつりが来る値段よー」
なんじゃ、その値段は!
村が買えるって・・・そこまでして買うもんじゃ無いよ。
【物質操作】をカンストすれば良いんなら、そっちを買ってカンストすれば良いんだしね。
「でもー・・・スキルのカンストなんて出来ないのが普通だからー・・・他に無いかもう少し調べてみるよー」
え?
私、すでにカンストしてるスキル有るけど?
【穴掘り】ももう少しでカンストですけど?
なのに、しないのが普通なの?
どーなってるの?
もしかして・・・私は特別だったりして♪
・・・なわけないか。
「カンストってしないものなの?」
「普通はしないのである。上限が999となっておるが実際は100万前後なのである」
「?・・・意味わかんないんだけど?」
「細かい説明をすると・・・」
ノスフラト君の言うことにゃ。
1から100まで溜まる速度でカンストをさせるなら100万前後まで溜める事と同じだそうだ。
つまり。
100以降は熟練値の溜まり方が悪くなる、そういう事らしい。
これは、あれだね、運営が悪意を込めてカンストは簡単にはさせねぇぞ!
っていうネトゲと同じだね・・・
私の場合は900以降で悪意を実感出来たって事なんだろうなぁ。
【頬袋】の900以降が異様に長く感じたのは、納得いったよ。
「だがしかし、シズネ殿ならカンストは夢ではなく現実に出来るのである」
「ふぇ?」
「ノスフラト君?シズネちゃんでも流石にカンストは難しくないー?」
「そんな事は無いのである。吾輩は調べてみたのである。収納系のスキルの大半のカンストスキル【無限収納】を持って居るであるな?それと【穴掘り】もそろそろカンストではないのであるか?」
・・・調べれば分かるんだ。
ノスフラト君の蔵書数を考えたら辞典みたいなのが有っても不思議じゃないしね。
「うん、そうだけど」
「ふぇ?・・・カンストスキルあるのー?」
「ならば【物質操作】も可能なはずである。それに、石材の加工がし易くなるのである」
な・・・なにぃ!
石材の加工がし易くなるなるだと!
それだけでもゲットに値するスキルじゃないのか?
しかもカンストすれば人化まで出来るなら尚更ゲットでしょう。
・・・決まりだな。
「ミランダさん、ノスフラト君、私【物質操作】に決めた!で・・・いくらするんだろ?」
「それなんだけどねー・・・私にもここに部屋を作ってくれないかなー?そしたら私がプレゼントするよー」
え?
造るのは良いんだけど、ここに住むの?
いろいろと至らない所が満載のここに?
私だったら、あっちの家の方がいいけどな・・・
「私の家ねー、そろそろ建て替えの時期なのよー。結構手間が掛かるからシズネちゃんに部屋を作って貰えるとすっごい助かるのよねー。造ってくれるなら引越し荷物を減らすんで街に薬を売りに行って来るついでにマテリアルも買ってこれるしねー」
「街に行くのであるか?ならば吾輩も資金を出すのである。予想を遥かに超えた部屋を作ってもらった上に。この後に本棚付の書庫まで作って貰うにしては報酬が低すぎるのである」
「え?じゃ、じゃあ、欲しい物が有るのノスフラト君にはそれを買ってもらってもいい?」
「うむ、何であるか?」
「ガラスと塗料。特に塗料は大量に欲しいの。あと照明器具なんかも有ったら良いと思うんだ」
「ミランダ殿、吾輩の収納袋を1つ貸すのである。それにガラスと塗料を頼めるであるか?」
「オッケー任しといてー」
へへへ。
なんか色々と楽しくなりそうだよ。
知らなかったけど、私って物作りが好きみたいだし。
ミランダさんが越して来るってのも楽しそうだし。
異世界は優しくなかったけど、異世界の人は優しかった。
うん。
嬉しい事だねー
この先時間帯を変えていろんな時間に投稿予約しています。
ここだけの話・・・20話かな?
次のレギュラーキャラ登場です。




