引っ越し希望者登場〔前編〕
かあさま・・・やっぱり凄いよ。
ミランダさんの話からすると、玄関から結構広い範囲・・・100メートル四方位は、高さ2メートル以上の盛り土をしてる事になるよ。
しかも盛り土をした端っこは崩れないように石垣にしてあるよ。
その石垣だって。
『熊本城の石垣っぽさを出すのに苦労したよー』
って笑って言ってたけど・・・
熊本城ってなんだろ?石垣っぽさってなんだろ?
私には分かんないけど、かあさまは凄く得意気だったから上手に出来たんだろうなぁ。
不規則な大きさの石を綺麗にピッタリはめ込んであって、下に行くにつれ末広がりになってるよ。
ノスフラトさんに聞いたんだよ。
角の石は長くなっていて奥まで刺さっているって言ってたよ。
しかも1つ1つが反りに対して直角に刺さってるってよ。
他の所でも直線が長いと同じ事がしてあるってよ。
どんな効果が有るのか私には分からないけど、きっと凄い事なんだと思うよ。
だって、かあさまが造ったんだもん。
凄いに決まってるよ。
やっぱり【穴掘り】って凄いよ。
こんな凄いの造っちゃうんだよ?
私も何か造ってみたいよ。
壊すんじゃなくて造りたいよ。
私のスキルってね、壊すのばっかりなの。
スキルで何も作れないの。
だから、やっぱり【穴掘り】のマテリアルが欲しいよ。
「ミランダさん、あのね、私やっぱり【穴掘り】のマテリアルが欲しいよ」
「な、なんでかなー?」
ミランダさん?
なんか焦ってる?
「私もね、かあさまみたいに、こんなお庭を造ってみたいよ、壊すんじゃなくて造ってみたいよ。ダメ・・・かな?」
悩んでるよ?
なんでなのかな?
私、変な事言ってるのかな?
「うん、私もティファちゃんの造った庭を見てみたいなー。明日買いに行こうねー♪」
「明日・・・なの?」
「うーん、今日はもう夕方だからー、お店が閉まっちゃうしねー。それとー、ティファちゃんはマテリアル装着は装備が無いと出来ないでしょー?」
「セイバー・オブ・デッドリーシンに出来るよ」
「あの剣で掘る訳じゃないでしょー?」
「・・・掘るのは難しいと思うよ」
「だからマテリアル装着できる腕輪とかも買わないとねー。そうそう、穴を掘る道具もねー」
そっか、かあさまは自前の爪でが有ったけど、私は道具が無いと掘れないんだったよ。
『断崖荘』は、かあさまが居るから穴掘り道具が無いんだよ。
なんだろう。
かあさまってホント凄いよ!
私も・・・・かあさまみたいになりたいよ・・・なれるかなぁ?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
はろろーん♪
・・・別になんちゃら症候群に感染していて、キレると何するか分からない性格はしてないと思う・・・思いたい。
シズネちゃんでっす。
あのねー、今朝やっと階段が完成したよ。
でもね、階段より先に部屋の方を先に仕上げたんだ。
階段が完成したら部屋を直ぐにでも使って貰いたかったから。
仕上げに使った【整形】・・・これが凄いの。
ボッコボコだった壁が真っ平のツルツッルになって大理石みたいなんだよ。
試しに整形した床を背中で滑ったら止まらなくて壁に激突して痛かったんだから。
・・・後で床は滑り止めで浅い溝をいれとかないと。
それはさて置き。
【整形】よ【整形】!
これの凄い所はね、イメージ出来れば平以外にも仕上げられるところなの。
それのどこが凄いのかって?
分からないかなぁ?
イメージさえ出来れば【整形】で模様も描けるのよ。
凄くない?
凄いよね?
凄いのよ!
滑り止めの溝だって、直線じゃなくて波紋を描く様な物も出来るし。
キャラクターを描く事だって出来るんだよ。
これ自由度が高過ぎて面白いの。
自分で掘った物だけじゃなくて、外壁にも【整形】は使えたし。
盛り土して造った砂利と土の混じった階段にも使えたのよ。
もししたらさ、土とか石以外にも使えるんじゃないかって思ってるの。
ほら、木とか布とか革とかにさ。
それが出来たら何か面白そうじゃない?
まぁ、まだ書庫を造らないとダメだから、まだまだ先の話だけどね。
そうそう、部屋だけどね。
ノスフラト君、口を開けたまま呼び掛けるまで微動だにしなかったよ。
予想以上の更に上を行ってたんだってさ。
シズネちゃん、こだわりの一品だもん喜んでもらえて当然よね!
・・・
・・
・
ウソっす。
ビクビクしながらドキドキしてたっす。
だから、喜んでもらえてスッゴく嬉しかった。
あと、安堵した感じが半端なかったっす。
だって。
気に入ってもらえるか心配だったもん。
自分なりに上手くいってもさ、相手が気に入るかは分かんないでしょ?
だから、気に入ってもらえてスッゴくホッとしたの。
「ノスフラト君、気に入ってもらえて嬉しいけど、まだ完成じゃないの、窓を造りたいんだけどね材料も無いし取り付け方も分からないの」
「窓・・・であるか。我輩は要らんのである」
「えっ?ダ、ダメよ、空気の入れ換えも出来ないし。何よりお日様の光が入らない部屋なんて不健康の極みだよ」
「ふむ、しかしな、我輩は本が読めるならば他はどうでも良いのである」
「だから、それはダメッ!本は暗所で保管するのが良いけど、ノスフラト君は日の光に当たらないとダメッ!病気になっちゃうよ?」
そう。
某国営放送局の番組で、日の光を浴びて病原菌とかに対抗する免疫細胞を作る栄養素が生成される。
って言ってたもの。
異世界だから私の知識が当てはまるかは分からないけど、引き籠もりが健康的な訳ないもの。
せっかく知り合えたのに死別とかイヤだし。
だから窓は造る、絶対に!
「で、あるか。了解なのである。シズネ殿がそこまで言うのであらばそうするのである」
「うん♪良かった♪そうそう、あのさ一番大きい本と一番多い大きさの本を出せる?」
「うむ・・・これとこれである」
でかっ!
横が50センチ・・・もうちょっとあるかな?
縦が1メートルちょい。
厚さが2センチ・・・しかも裏表の表紙の厚さが合わせて1センチ・・・半分表紙なのか・・・ちょっと呆れる本だな。
それと。
こっちは百科事典位のサイズだね。
結構サイズが大きいんだな。
「それをどうするのであるか?」
「ん?書庫には本棚が必要でしょ?だから本棚を造り付けにしようと思ってね」
「我輩は平積みにしようと思っていたのである」
ノスフラト君・・・
かにかくにダメダメだよ。
ズボラ過ぎるよ。
「本を平積み保管なんてしたら傷んじゃうよ?ちゃんと保管しないとダメだよ」
私もいつか読ませてもらうんだから、ちゃんと保管して欲しいの。
「そうなると、6倍では足りんやも知れんのである」
「そん時は広げるから大丈夫だよ」
「そうであるか。申し訳無いのである」
この人はホントに元魔王なのかな?
だって、人の話はちゃんと聞くし、御礼もちゃんと言えるし。
イメージにある魔王とぜんぜん違うんだもん。
ノスフラト君の格好から連想できる魔王って言ったら・・・
陰湿で無慈悲、私なんか想像も出来ない拷問を平然と実行できそう。
・・・こわっ!
ノスフラト君が実行してる所を想像しちゃったよ。
似合い過ぎてた・・・あれは存在しちゃいけないタイプだよ。
ホント、ノスフラト君が人畜無害で良かったよ。
もう人畜君って綽名を授与し・・・
・・・
・・
・
大概だな。
人畜だけだと家畜の人間版みたいに聞こえちゃうよ。
奴隷って言ってるのと同じ様に聞こえるよ。
絶対に却下な綽名だわ。
気が付いて良かったよ。
危うく最低の奴になるところだったよ。
「そうである、シズネ殿、報・・・
「ヤッホーッ!シズネちゃんー!ノスフラト君ー!居るーっ!?」
あの声は・・・
かにかくに
の意味は『あれこれと』とか『いろいろと』です
14歳の使う言葉じゃないけど、多目に見てください。




