伝説のふぁーましすと?ふぁーましすとってなに?〔前編〕
ふっふっふ・・・ここから私の出番なのよね。
出番なんだけどね・・・
シズネちゃんの最初に出会った異世界人になれなかったのは悔しいのよね。
ノスフラト君と数時間しか違わなかったらしいけど・・・
それでも2番は2番だものね。
もっと外出するんだったって後悔しまくったわ。
はっ!
もしかして・・・今も森に行けばモフっ子が彷徨っているとかする?
うん。
森の中の散歩を日課にしよう。
可能性は低いだろうけど、部屋に閉じ籠って居たら出逢いはゼロなんだしね。
「ミランダさん?」
「ん?なぁにー?」
「かあさまの怪我ってそんなに酷かったの?ノスフラトさんが心配するのって初めて聞いたよ・・・」
シズネちゃんの怪我は結構酷かったね。
自然治癒に任せても治ってたろうけど。
傷跡が遺ってハゲてたろうなぁ。
でもね、私の目が黒いうちはモフモフがハゲてるなんて許さない。
だから無償ででも治療しちゃうんだよ。
「かあさまはそれについて何にも言わなかったから、今は大丈夫なんだろうけど・・・」
「そうねー、今は何ともないけど薬を使って治療しなかったらー、大きい傷跡が出来てたと思うよー」
あれ?・・・ティファちゃん?
表情が怖くなってるけど・・・やっばい?
もしかして言ってはいけない事を言っちゃったかな。
おいおいおいっ!
それを出しちゃダメだってっ!
「ティ、ティファちゃん?セイバー・オブ・デッドリーシンを出してどうするのかな?」
一応聞いてみたんだけど。
言わずもがな。
予想は簡単につくんだけどね。
「猫殲滅作戦、発動させるよ」
あぁ・・・やっぱりかぁ。
その剣を出すって事は迷いも躊躇も無く本気って事だよねー
この娘・・・可愛い所もいっぱい有るけど、基本的に物騒な娘だわぁ。
シズネちゃん・・・早く戻って来てよ。
私じゃ無理だ!
「待て待て待て!そんな事をしてもシズネちゃんは喜ばないと思うよ?・・・ノスフラト君も思考の海に沈んでないで何とか言ってよ!」
「・・・ん?・・・ティファ殿、この庭には猫もやって来るであるな?」
「・・・うん」
「シズネ殿が許可したからやって来るのである。即ち、シズネ殿は猫に対して怒ってないと言う事なのである」
「で、でも、かあさまは怪我を・・・」
「シズネ殿は怪我なんて事よりも大勢で楽しく過ごす事を選んだのである。そのシズネ殿の広き心根を娘のティファ殿が無にしてはダメではないのか?」
「それは・・・」
「もし作戦発動するにしてもシズネ殿に聞いてからするのが良いのである」
「うんうん、そうね、帰って来て猫が居なくてがっかりするかも知れないし、怪我だって私の薬でちゃんと治ったんだしさ」
「・・・うん、聞いてからにするよ」
ノスフラト君・・・
さすがだね。
理詰めで封じ込めたよ。
私にはできないよ。
私はやっぱり薬を作るしか能が無いのかなぁ。
でも、ハムスターにまで効くとは思わなかったけどね。
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こんにちはっ?
こんばんはっ?
もしかして・・・
おはようごさいますっ?
まっ、どれでも良いか。
私は異世界で仕事を貰ったシズネです!
えへっ。
仕事だって、なんかちょっとだけ格好良い気がしちゃう。
えーっ!?だって私にやって欲しいってリクエストだよ?
腕利きの職人みたいで格好良いじゃない。
嬉し過ぎで張り切ってたんだけど『怪我人にやってもらうのは気が引けるのである』って事だから、治療をしに行くところなの。
ノスフラト君って良いとこあるよね。
あっ!
ノスフラト君ってのはね、微妙な人の名前。
そんでね、この人は元魔王なんだって!
魔王なんてのが居る世界なんだねー
異世界に来たって感じだよねー
そんなのが居るから私に優しくない世界なんだね。グスッ
でね。
元ってのが気になって聞いてみたらね。
『頭の悪い施政者の口車に乗ったお頭の足りない自称勇者が人魔族の街に攻め込んで来る情報を入手したのである、被害を最小限にするために人魔王を辞めたのである』
だって。
口車に乗せられる勇者って・・・最悪じゃない?
だってさぁ、噂話で物事を判断するって言っても間違いじゃないと思うんだよね。
間違いだろうが冤罪だろうが関係なく決めつけちゃうんでしょう?
うん、やっぱり最低最悪だよ。
そんな奴は勇者じゃなくて愚者だよ。
ノスフラト君も災難だったよね。
って思ったんだけどね。
元々やりたくなかった魔王だったんだって。
人魔王ってのは世襲制で他に次ぐ人が居なかったから仕方なく継いだんだってさ。
ホントは本の収集をして、それを読み耽る生活がしたかったんだって。
似非勇者のおかげでそれが出来る様になったから少しだけ感謝もしてるんだって。
なんとも微妙な感じではあるけど、魔王を辞めて街に被害が無いのを確認してから旅に出たそうだから無責任って訳でもなさそうなのよね。
それでも・・・やっぱり微妙な感じよね。
まぁ私には関係ないからいいけどね。
そうそう。
それとね、魔王の前に単語が付くでしょう?
だから他にも魔王が居るのか聞いたのよね。
そしたら。
『魔王は種族毎に居るのである。獣魔王・竜魔王・鳥魔王・魚魔王・妖魔王・虫魔王・幽魔王・蛇魔王などであるな』
・・・たくさん居るわよね。
種族を国家って考えればそうでもないのかな?
それに他の魔王ってのは『拒絶の壁』の向こう側にいるみたいだし、私には関係ない・・・よね?
転生者だから関わりますとか・・・ないよね?
誰か、お願いします、関わらないと断言して下さい。
じゃないと私、泣いちゃうよ?
「どうしたのだシズネ殿?傷が痛むのか?」
「え?あ?いや?ホントに異世界に来ちゃったんだなぁ・・・って思ったの。なにその魔王いっぱいってって感じ」
「ふむ、魔王と言ってもただの種族長であるから本当の意味での魔王ではないな。唯一魔王と呼べる者は過去に1人しか居らんのである」
「それって・・・どういう意味?」
「うむ、魔族全ての頂点に立ったのは1人しか居らんのだ、その者だけが本当は魔王と呼んで良い存在なのである」
「へぇそんな人が昔いたんだ」
「うむ、唯一無二のスキルによって他を圧倒したのである」
「唯一無二って恰好いいね、なんてスキルなのかは分かってるの?」
「うむ、【穿つ】である」
へっ?
【穿つ】?
えっと・・・【穴掘り】の【穿つ】なのかな?
そんな訳ないよね?
捨てスキルで他を圧倒なんか出来る訳ないよね・・・
そうよ、きっと他のもっと凄いスキルにも【穿つ】って言う同名の凄いのがあるんだよ。
じゃないと私が最強になっちゃうじゃない・・・恐いとか危ないのはイヤだもん。
だからきっと【穴掘り】のじゃないよね?
またまたお願い、誰か違うと言ってお願いします。
「着いたのである、ここがファーマシストの住まいなのである」
「ふぁーましすと?」
「うむ、ファーマシストである、しかもここに住まうファーマシストは900年程昔に禁断と言っても過言ではない物を開発したのである」
「ほへぇ、なんか凄い人なんだねー」
「そうなのであるが・・・それを巡ってトラブルが続出したために街の付近に居ると命の危険が有るので『拒絶の壁』付近に引っ越して来たのである」
「凄い人ってのは波乱万丈なんだね、私は平穏無事が良いから凄い人・・・じゃなくて凄いハムスターにはならない!」
「・・・既に類い希なる存在である」ボソッ
「なんか言った?ノスフラト君?」
「いや・・・独り言である」
「そう?・・・でさ、ふぁーましすとって・・・なに?」




