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ヒトデナシ  作者: 影絵師
17/27

バジリスクを愛する男が、狼と蛇の異形に変えられる

Pixivでのリクエスト「バジリスクとなった彼女と慣れ始めたある日にお互いの食糧調達に別れたあと彼氏が黒い狼ヘルハウンドに襲われ致命傷を受ける。

 殺される瞬間に彼女が現れて助けに入るが、出血が酷く虫の息だった彼氏がヘルハウンドとして生きたくはないから彼女にトドメをさしてほしいと頼み、彼女は涙を流しながら彼氏を殺し異形化するまで包み込み続ける。

 彼氏の異形化が始まると下半身は彼女と同じ蛇だが、上半身はヘルハウンドの影響か狼になっていた。しかし彼氏も彼女の事を思う気持ちが強かったのか暴れる異形とはならず『姿はちょっと違うけどこれからも君を愛しているよ』と下半身を巻き会わせながらキスするラブストーリー」


ざっくり内容

・上記のまま

・本来は健全版ではありませんが、「狼の上半身、蛇の下半身」の異形は……人外好きの私でも苦手でした。なので健全版にしております。


https://novel18.syosetu.com/n0322fl/22/←これの続きです(R-18注意です)。


 鳥と蛇の異形――バジリスクに変化した恋人を、男が受け入れてから数ヶ月過ぎた。

 異形化した人間は例え自我を保てたとしても、村や街等の残された人間社会には居られなくなる。男はバジリスクと共に住んでいた村から離れ、人気のない廃村に移り住んでいた。ここは人間の姿が全く無く、それを餌にする人外や異形の姿もない安全な場所だ。ここなら男とバジリスクが穏やかに過ごせるだろうと思っていた。


 ある日、男とバジリスクがそれぞれの食糧調達しに別れ、廃村付近の森を探索した。人間である男は兎も角、異形化した恋人であるバジリスクは同じ異形の肉を食べられるようになった。バジリスクが異形を食べて腹を満たせられれば、数少ない人間用の食料を男に食べさせることが出来る。

 バジリスクと別れ、食料品を探していた男は横転している馬車を見つけた。周囲を警戒しながら馬車に近づき、載せられていた荷物を確認する。中身は数週間保つ保存食がいくつか入っており、お目当てを見つけた男は急いで鞄に移し入れていく。

 保存食を鞄に入れていく中、何かの唸り声と足音が聞こえ、手を止めた。

 ゆっくり振り返ってみると、燃えるような赤い目に黒い体の大きな狼――ヘルハウンドがこちらを睨んでいた。保存食を見つけた嬉しさのあまり、警戒を怠ってしまった自分を呪いながら男は刺激しないように立ち上がり、慎重に離れようとする。

 しかし、狙いを定められた獲物は見逃されるわけがなく、ヘルハウンドが一気に駆け出した。男が逃げ出そうとするも、あっさりと追いつかれてしまい、肩を深く噛まれてしまった。

 突然、別れていたバジリスクが唸り声を上げて姿を現し、愛する男を噛み付いているヘルハウンドに飛びかかる。蛇と鳥の異形であり、自分の三倍もある大きさのバジリスクに男を放して逃げ出した。


 

 だが、それで男が助かったわけではない。ヘルハウンドに噛まれた部位から大量の血が流れ出てしまっている。


 

 重傷を負って地面に横たわっている男を見つめながら、バジリスクは必死に考えた。


 近くの村に運んで、医者に診てもらう? 私を警戒するか、武器を持って攻撃してくるかもしれないけど、もしかしたら診てもらえるかも……


 ハッピーエンドのおとぎ話の展開を期待しながらも、不安で動けないバジリスク。そんな彼女に、ヘルハウンドに襲われてからしばらく何も言わなかった血まみれの男が苦しそうに、それでも優しく話しかけた。


「なあ……た、頼みがあるんだ……」


 彼の言葉にバジリスクは耳を傾ける。


「お、俺は……あの犬っころなんかになりたくない……どうせ死ぬなら……君が殺してくれ……」

「……っ! 嫌よ、あなたはきっと助かるの! それを諦めないで!」

「頼むよ……俺は、君と同じ存在に……なりたい……」


 瀕死でありながら真剣な顔の彼に、バジリスクは涙を流しながらも頼みを引き受けた。

 鋭い嘴の先を男の胸に当てる。弱くなっていく心臓の鼓動を感じながら、笑顔になって目を閉じていく彼を泣きながら見ていた。


 そして、嘴で貫き、彼を殺した……


 運良く痛みを伴わなかったのか、穏やかな死に顔の男を、バジリスクは両手の翼で優しく包み、下半身の尾で優しく巻き、冷たくなっていく男の遺体が温かく変わっていくのを待ち続けた。

 その姿はまるで、卵を孵化させようと抱える親蛇か親鳥かに見えた……




 ……数時間後。

 男の体に変化が現れた瞬間、バジリスクの心が張り裂けそうだった。激しく震える遺体、苦痛による悲鳴が嫌でも感じ取ってしまう。それでもバジリスクは抱き続けて、男の変異が終わるのを待つ。


 男の腰が割かれ、そこから鱗に覆われた長い尾が生えて下半身となる。

 上半身の皮が毛皮に変わっていく。

 両手の指先から鋭い爪が生えた。その両腕がバジリスクを強く抱きしめ返した。

 頭に三角耳を生やし、口元にマズルが形成されていく。


 悲鳴と共に変化が止んでいき、それに気づいたバジリスクはもう一度男を見てみた。

 バジリスクと同じように、人間時の面影が全く無かった。蛇そのものである長い尾の下半身、上半身は狼そのものだった。ヘルハウンドとバジリスクに殺された結果が、狼と蛇をかけ合わせた異形に変化したのだ。

 バジリスクから一旦離れ、自分の体を見下ろした男――狼蛇は、少し驚いた表情になる。


「……見たことも聞いたこともない怪物だね、少し色物過ぎるというか……」

「でも、中身は変わってないわ、あなた……」

「ああ、今でも君のことが大好きなんだよ」


 狼蛇の下半身がバジリスクの下半身に巻き付き、お互いに絡み合っていく。その状態で狼蛇が上半身をバジリスクに近づけ、優しく接吻した。

 異なる特徴が多すぎる存在と関わり続けるのは難しい。しかし、少なくても共通点に目を向け続ければ共存できるだろう。

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