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5話 【作業厨】と旅立ちの日

「俺、魔法学校いくよ!」


 言ってやった。

 父さんと母さんと離れるのは辛い。

 だが、それ以上に父さんと母さんが俺に期待してくれている。

 それを踏みにじることなんて、出来ない。


「……分かったわ。じゃあ今から入学の準備をしなくちゃね!」


 母さんはそう言って、部屋へと戻って行った。


「リックは、いつも周りの想像の1歩、いや100歩先を行っていた。試験の帰り、『納得いかない』って聞いたとき思ったよ。合格した(またヤラカシた)って」


 あ……そんな風に思われてたのね、俺。

 そんなにヤラカシたつもりはないんだけどな?


 ちなみに、一人称『俺』に変えたのはだな。

 ……一人立ちの前の異世界転生の主人公のテンプレだからだ。

 本当しょうもねぇな、俺。


 その日、普段母さんがしてくれた ”ぎゅ〜っ” は無かった。


〜〜〜〜〜〜


 そんなこんなで入学当日。

 思えばこの6年……と数ヶ月。いろんなことがあったな。

 1歳の誕生日、平均的な赤ん坊が言葉を話す時期に話し始めただけで驚かれたっけ。

 マンションを建てて壊してを繰り返したのも面白かったな。

 今住んでいるこの家も、俺が作り直したものだ。


 そして俺は今日、この家を出て行く。


「リック、お守り。これ持ってきなさい!」


 そう言って母さんが取り出したのはブレスレット。

 これ、お守りだったのか……


「父さん、母さん。今まで育ててくれてありがとう」


「まるでもう会えないみたいじゃないか!父さん怒るぞ」


「そうよ!そっちが落ち着いたら顔見せてね」


 あっ!俺、恐ろしいことに気づいちゃった。


「ねぇ、俺さ。転移魔法で戻って来ればよくね?」


「それが出来れば簡単なんだが。転移魔法は莫大な魔力を使うんだ。ここまでだと、魔力が飽和した魔石が10kgは必要だぞ?」


 それって試験のとき、往復で40kg魔石使ったってことじゃ…?


 ……あ、行けるな。これ。


「ちょっと試しに転移魔法やってみる!」


 実は俺、試験のあとから練習してたんだよね……

 転移の感覚は体感していたし、覚えるのはすぐだった。


 座標指定、魔力を込めてっと。


 シュン!……シュン!


「ただいま!」


「おかえり……ってえ?」


「流石自慢の息子!ぎゅ〜っとしてあげましょう!」


 すぐ帰れることがわかって、母さんは嬉しそうだ。


「じゃあ、次こそ行ってくる!」


「「行ってらっしゃい!」」


〜〜〜〜〜〜


 おぉ、転移魔法。便利だなホント。

 これは作業の効率化に使えるぞ!


 俺のクラスは1年A組だ。


「よし、ここだな。入るぞ!」


 教室に入ろうとした時、


「お前、弱そうだな」


 背後から話しかけられた。

 赤毛のちっこいやつ。そばかすがあって、まさに男版赤毛のアンか。


「おまえうまそうだな…?」


「ちげぇし!弱そうだって言ったんだ。耳イッてんのか?」


 俺は今、猛烈に……


 感動している!!!!

 とうとう俺のことを正当に評価してくれるヤツが現れたんだぞ!

 父さんと母さんは俺のことを褒めてくれた。でも、父さんの方が《魔力》は上。

 俺はまだ『作業力』が足りないのだ!


「俺はリック。お前とは仲良くできそうだ!名前を教えてくれないか?」


「え?あ、オ、オレはカイル……よ、よろしく」


 カイルか……よし。覚えたぞ!


「カイル君、よろしく!もしかして、緊張してるのか?」


「き、緊張じゃねぇし!余りにも変わった反応だったから。それに…カイルで、いいし」


 あーこの手の子は元の世界ならショタコンお姉さん方の餌食に……


「何あの可愛い子!」

「今年の一年は豊作ですわ」

「どっちが攻めで……」


 すでになっていた。

 一人違うのが混じってはいたが。


 教室に入ると殆どの人が席に座っていた。

 俺の席は……ここか。


 ん?隣が空いてる。


「入学おめでとう!私はこのクラスの担任、テリーヌだ。まずは自己紹介から。成績順に発表しろよ!まずはリック・グレーティアからだ」


 お、俺からか。つーかこのクラスで成績トップなのか。

 まじかよ……


「俺はリック・グレーティア。リックって気軽に呼んでくれ。俺の……」


 ガラッ!


「遅れてすみません!マリー・ブロッサです!よ、よろしくお願いします!」


 突如として現れた少女はそう言った。

 白い雪のように透き通った髪、美しい目……


 簡単な話、俺はこの少女に一目惚れしてしまったらしい。

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