3話 【作業厨】のハイスペック父さん
俺と父さんは朝一番に町へ向かった。
「よし、これに乗れ!」
「何これ?」
父さんに乗れと言われたのは、謎の円盤。金色で兎の模様が描かれている。
なんというか、可愛い。女子高生が好みそうな感じだ。
どうやら、俺のは一回り小さいやつのようだ。
「これは、レコーズ。国民的乗り物だぞ!一人1台は持ってるぞ!これに乗れば、町までひとっ飛びだ」
なんだよ、レコーズって。説明になってないし。この円盤が国民的乗り物って何?車みたいなものだと思う。
「よし、乗ったか。それじゃあ魔力を流せ!方向は重心を傾ければ変えられるからな」
ハンドルがない車と。危険物じゃねえか!
そう思いながらも魔力を流す。
フワ、フワフワフワ。
魔力を流すと円盤が浮かび始めた。
これってもしかして。
「さあ!付いてこい!」
「いやぁぁぁぁあ!」
文字通り、ひとっ飛びだった。
~~~~~~
おぇぇぇぇ。乗り物酔いなんて初めてだ。
これが国民的乗り物ってこの国の人、どんな平衡感覚してんの?
「この距離で酔っているようじゃまだまだだな」
くぅ。悔しい。
あっ、次の作業はこれにしよう!
こうして、俺の次の作業は簡単に決まってしまった。
「ここが市場だ。新鮮な野菜を売っているんだ」
へぇ。普通にありがちなやつじゃん。
「あ、領主様!先日は市場の舗装、ありがとうございました!」
「領主様、この前の恩で安くしておきますぜ」
「わぁ領主様だ!カッコいい!」
すごいな、父さん。
俺と同じくらいの年の子供にまで知られているなんて。
どんな仕事したらこんなに慕われるんだ?真面目に気になる。
「この先に、連れていきたいところがあるんだ」
そう言って10分後。
「ここは冒険者ギルドだ」
ほう、冒険者ギルドか……
冒険者ギルド!? 作業しまくって金集めして、また作業する最高の場所じゃないか!我ながら、ひどい認識だとは思うが。
父さんはなんでギルドに俺を?
「おはようございます、マスター!こちらのお子さんは……?」
「今日は息子のリックのステータスを確認しに来た」
「えっ、マスター?誰が?」
「リック様、あなた様の父親、ディーク・グレーティア様はこの冒険者ギルドのマスターでございますよ」
へ?
ちょっと待て。父さんハイスペックすぎやしないか?
父さんは領主でギルマス…… 訳がわからない。
「そんなことはどうでも良い。早くステータスチェッカーを」
どうでも良くねぇよ!
それにステータスチェッカーって?
あー、疑問が多すぎて頭がパンクしそうだ。
「リック様、こちらにお手を触れて下さいませ」
ギルドのお姉さんは温度計のようなものを指差して言った。
「あ、はい」
温度計に触れると、温度がぐんぐん上がって……
割れた。
中身が溢れて床が赤く染まった。幸い、俺の体には液体はかからなかった。
「申し訳ございませんリック様!でも、まさか。そんなことは……」
「なぜ液体魔石式のチェッカーで測定した?魔流式から測るのがルールだろ!」
「ですが、リック様は子供で……」
「ですが、じゃねぇ!すぐに魔流式を用意しろ!それと君は明日から来なくて良い」
「は、はい……」
こ、こえぇぇぇえ……
父さん、職員一人クビにしたよ。これもしかして俺のせいか?
俺が父さんの初めて見る姿に怯えていた。
「なーに、心配要らないよ。お前の力を見くびったあの職員が悪いんだ」
「で、でも……」
「勿論、今月分の給料は支払う。これで次の仕事に就くまでは平気だろう?」
うわぉ。父さん、そこまでやるのか。
さっきは怖いと思ったけど、父さんが慕われる理由がわかった気がする。
「マスター、お待たせしました。先程の職員の代わりにチェッカーを届けに参りました。魔流式でお間違えないですね?」
「あぁ、ありがとう」
そして、俺はさっきのように手を触れた。
《魔力》81019
これはすごい数字なのかすごくない数字なのかわからない。
だが、
カンストさせたいっ!!!!
「何ですかこの数字!?見たことないですよ5桁なんて」
あ、これ5桁でも多かったやつか。まぁ、関係ない。俺の目標は《魔力》ってステータスのカンストだからな!(キリッ)
「あ、君は俺のステータスを知らないのか。よし、俺も測ってやる」
突如として始まった《魔力》比べ。
果たして俺は父さんに勝てるのか?
緊迫状態が続く。
次の瞬間、職員が口を開く。
「ま、《魔力》530000!?」
負けた……
少しでも勝てると思った自分が馬鹿らしい。
っつか、父さん本当にハイスペックだな。
《魔力》53万、戦闘力53万ネタかよ(ボソッ)
父は強し。