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世間知らずに異世界暮らし  作者: 緋和皐月
第1章 始まり
8/48

「では、アスネリ様のお連れ様、イチノスケ・トウカイリン様、で、宜しいですか?」


 にこやかに受付の女性が聞いてくる。


「あァ、そォさ。急に決まったことで、悪いねェ」

「いいえ、大丈夫です。お気になさらず、アスネリ様」


 そして、女性は苦笑を浮かべて、アスネリの背後を見た。


「なんだか……、無邪気な方ですね」

「濁さァなくて良いサ。子どもっぽいってェ、はっきり言ってェやんなィ」


 2人の視線の先には、きょろきょろと辺りを見渡す壱之助がいた。


「わぁ……目が浮いてる……あ、小人がいる……」


 ポケーッと口を開けたまま、ブツブツ呟く壱之助は、側から見ても変な奴である。


 まぁそうなるのは仕方がない。

 この宿、なんと、監視カメラの代わりなのか、ギョロリとした目玉がフワフワと浮いているのだ。

 そしてその下にいる、可愛らしい小人たちは、その目玉を濡れた布で拭いたり、机を整理整頓したり、何かの紙切れを食べたり(?)していた。


 こんなのまるで、


「ポリーハッターだぁ……!」


 きらきらと瞳を輝かせて、小さく呟く壱之助の襟首を、掴んで引きずりながら、アスネリは部屋に行く。


「あっ、あぁぁっ! ちょっアスネリ待っ」

「なァんか文句ァあるかィ?」


 アスネリが浮かべた、凄味のある美しい笑顔は、壱之助に有無を語る事を許さなかった。




 2人は泊まる部屋に向かった。


「こォこが宿泊部屋ァ、さネ」


 壱之助の襟首を、やっと離したアスネリは、そう呟く。


「わ……わーっ!」


 襟首を離され自由になった壱之助は、ダッと駆け出した。


「うわぁ、すっごく大きい! ふっとい! ……黒い?」


 壱之助は、なんだか語弊を招くであろう言い方をしながら、布団(ベッド)に飛び乗り、脚を触り、布団の生地に首をかしげたのであった。


「すごーいすごーい! え、ここで寝るの? あ、でもベッド1つしか無い……」


 見るからにしょんぼりした壱之助に、アスネリは口を開く。


「あァ、アタシはソファで寝ェるから、ベッドは譲ってェあげるヨ」

「え、ソファで寝れるの?」


 ソファは座るものだよ? と首をかしげる壱之助。

 忘れてはならない。この男、生粋のお坊ちゃんである。


「寝ェれるサ。それともォなんだィ? 一緒ォに寝ェるかィ?」


 アスネリの、からかうような冗談めいた口調に、ぴたり、と壱之助の動きが止まる。


 嫌な予感、とアスネリが顔をしかめたその瞬間。

 パァァ、と壱之助が顔を輝かせた。


「さすがアスネリ! 頭良いね!」

「……ハ」

「そうだよ、2人で寝ればいいんだ、そうだそうだ〜ぁ」


 うんうん、と満足げに頷く壱之助に、しまった、と思ってもすでに遅しのアスネリだった。


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