伍
「ここが魔法練習場なの? 凄く広いねぇ!」
そう言いながら、瞳をキラキラと輝かせる壱之助の隣で、アスネリは苦笑した。
「どこの魔法ォ練習場もォ、このくらいの広さァはあるヨ?」
ここは、国立第五魔法練習場。
どうやらこのメテレル国には、国立魔法練習場が5つもあるらしい。
この国の人々が崇める、五鬼神教。
この五鬼神にあやかり、第五魔法練習場まであるのだという。
ちなみにこの魔法練習場は、国で5つあるうち、一番都会寄りなので、通う者もたくさんいるらしい。
周りを見渡せば、大柄な厳つい男も、華奢な女性も、小さな子どもさえが魔法らしきものを使って、何かを浮かせたり、叩きつけたり、ぶん投げたり、縮めたり、と様々なことをしていた。
「よ〜し、僕も練習する! 何すればいい?」
「そォこからかィ?」
魔法を使うには、生命力が必要である、というのは、先程アスネリに教えてもらったばかりである。
が、具体的にどうすれば良いのか、異世界に来たばかりの壱之助に、分かるはずが無かった。
「お前サンの魔法、 “再生の石盤” 、“隕石爆発” 。この2つの名称のどちらかを言葉にしながら、その上に生命力を乗せるのサ」
「つまり……」
壱之助は、神妙な顔になって、アスネリを見る。
「つまり……どゆこと?」
「……分かってなかったのかィ」
呆れたようにアスネリは笑った。
「つまァり。腹に力を込めて “再生の石盤” ! って言やァ、魔法ォが使えるのサ」
「それだけ?!」
「そりャそうサ」
頷くアスネリに、壱之助は少し拍子抜けた。
魔法魔法というからには、もっとこう、技術的にも難しいものだと思っていたのだが、意外とそうでも無いらしい。
「あァでも、たァだ叫ぶだけじゃァ、上手くはァならないヨ?」
「へ?」
「集中しなァがら、腹に力を込めて、的にィ当てる。これがどれだけ難しィのかァ、身をォ以て味わいなァ」
アスネリは楽しげに、その赤い唇をにやりと歪めた。
*✳︎*✳︎*✳︎
「ひゅぉう?!」
「まだァまだ、当たってェないよォ」
「ぅぇええ?! まだ?!」
壱之助は、ただひたすらに、“隕石爆発” を練習していた。
小さな隕石を作り出し、爆発させる。
これを狭い的に当てて、そこの的だけ吹き飛ばす。
要するに、射撃や弓道などと似た感じである。
射撃は兎も角、弓道は何度か経験のある上、アマチュア並みにはうまいのだが壱之助であるが、これがまた、簡単なようで案外難しいのであった。
ちなみに “再生の石盤” は、消えかけた何かを蘇らせる魔法である為、練習対象物が無い。だから、練習が出来ないのであった。
そして、
「む、難し……!」
「ほらァほら、手ェが止まってェる。早くしなきゃァ、日も暮れるよォ?」
紅髪美人アスネリは、どうやらスパルタ教師タイプのようだった。