肆
鑑定屋。
この世界には、魔法関連を鑑定する店がある。
人でも動物でも、植物も剣も服も、紙だって、なんでも鑑定する店がある。
そんな店をまとめて、鑑定屋、と呼ぶ。
壱之助は、その鑑定屋に来ていた。
店内に居たのは、眠たげな初老と、退屈そうに水晶玉を指でなぞる少女。
そんな2人の口から溢れる言葉を、机を挟んだ真正面で、今か今かと待ち伏せているのが壱之助である。
そんな中、やっと物憂げな少女が、口を開いた。
「イチノスケ、トウカイリン」
「はい!」
「貴方は……」
すぅ、と少女は厳格な雰囲気を纏ったまま、一呼吸して……。
「あんだぁ、土属性でべ」
「ちょっ、じっちゃん! わっちのセリフ横取りせねでぇな!」
「おまんがなかなか言わんでけ、おらが言っだべだな。……それよか、おらん飯はまだが?」
「ご飯はさっきば食べだど! いいがらじっちゃんは黙っでんな!」
……異世界っぽい雰囲気を醸し出していたのに、急に生々しい話になって、反応に困る壱之助を前にし、こほん、と少女が空咳をした。
「イチノスケ、トウカイリン。貴方の魔法は土属性です。占いによると、得意魔法は “ 再生の石盤” 、“隕石爆発” の2つ。なんと、驚くべきことに、2つとも最強上級魔法です」
そこで、眠たげな初老が、つんつん、と少女の肩を突いた。
「そだぁは、何だ? 美味いどが?」
「違ぁべ! 美味ぐぁないだ!わっち、じっちゃんは黙っでんなっ言っだべ!」
こほんこほん、と少女は空咳をした。
「何か、ご質問はございますか?」
「はい! それって美味しいんですか?」
「あんだもじっちゃんと同じ思考回路だっだどっ?!」
壱之助の言葉に、ついつい方言が出てしまった鑑定屋の店員の少女。そのセリフに、壱之助の背後にいたアスネリは、深く頷いたのであった。
面倒臭げに、かなーり詳しく説明してくれた少女によると、 “ 隕石爆発は、その名の通り、隕石を作り出して、爆発させることができるという魔法だ。
つまりは、土で作る、一種の爆弾である。
もう1つの魔法、再生の石盤は、その名の通り、なんでも「再生」することができる。
ただし、石盤に魔法使用者が触れることが条件となる。
その「再生」というのは、物や生物の記憶を再生、というのも含まれるが、死にかけた者を生き返らすことも出来る。
どんな傷を負っていようと、どんなウイルスに身体を蝕まれていようと、死にかけた生者のみ、死にかける前の状態の身体に戻る……つまり、「再生」することが出来るのである。
「ふんふん。その魔法2つとも、核爆弾並みの脅威ってことですね。……核爆弾って、口の中に入れるとサクサクして美味しいよねぇ」
と、アスネリに共感を求める壱之助は、核爆弾を何かのお菓子と間違えている。
「SSレベルの貴方の魔法は、この街では魔法練習場でしか練習できませんので、ご注意ください」
「えすえすれべる? そんなラベルが貼ってある魔法なんですか? わかりました、じゃあ取り敢えず、核爆弾食べたいので魔法練習場に行ってみますね!」
そう言った後、壱之助はパッと背後を振り返る。
「アスネリ、魔法練習場、知ってる? 知ってたら、案内してほしいんだ」
「ハイハイ、知ってるサ。……あとお前さん、いろォいろ勘違ァいしてェないかィ」
「へ?」
呆れるアスネリをぽかんと見上げ、壱之助は首をかしげたのだった。