表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第5話 楓と初めてのお菓子作り

 本日は教職員の会議やいろいろやることがあるとかで授業は午前中で終了。

 部活もないためみんなは即帰宅。

と言っても家に帰った俺はやることもなく時間を無駄にしていた。


「(なにするかな……八里は午後からバンドの練習って言っていたし。……暇だ)」


 やることもない俺は暇つぶしに本屋に向かった。

 近くにある本屋で雑誌を立ち読みしていると棚の反対側に何やら見おぼえのあるヘアピンが見えた。


「(あのヘアピンって……)」


 反対側に回ると予想が的中した。


「よっ、やっぱり楓じゃん」

「あっ、春明君」


 そこには私服姿で小さなポーチを肩にから斜めにかけている楓が居た。


「わざわざこっちで買い物か?」


 楓は電車通学なので私服でここに居るってことは一度家に帰って再び来たということだ。


「ここの本屋はレシピ本が重質しているの。あとケーキ屋に行こうとしていて」

「ケーキ屋か。暇だからついて行っていいか? 」

「いいよ。それじゃぁ行こう」


 俺と楓はケーキ屋に向かった。

 着いたケーキ屋は以前千秋と行った場所だ。

 店に入るとパティシエの男性がケーキをショーケースに並べていた。


「こんにちわ~」

「楓ちゃんいらっしゃい。おや、君はこの前の」

「先日はどうも」

「春明君この前来たんですか?」

「千秋と来たんだよ」


 何かを察したのかパティシエの男性はニヤニヤした。


「こっちが君の彼女かい?」

「えっ!?」

「彼女!? ち、違います! 同じただの部員です」


 楓が全力で訂正した。


「ただの部員って……」


 このやり取りなんだかデジャブのような気が……。


「す、すみません」

「あははは、予約のケーキを準備するからそれまで試作のチーズケーキ食べて待ってて」


 そう言うとパティシエの男性はチーズケーキを持ってきた。


「ありがとうございます」

「良いんですか?」

「いつも楓ちゃんにはいろいろアドバイス貰っているからね。あとで感想教えて」

「それじゃ頂きます」

「いただきまーす」


 俺と楓はチーズケーキを食べた。


「あーん。ん~…美味しいです~」


 楓は幸せそうにケーキを口に含んだ。

 俺も一口食べた。口の中にチーズの風味が広がった。


「うん、これは美味いな」

「生地がしっとりしててパサパサ感がないですね。それにブルーベリーソースが甘酸っぱくて――――」


 楓がグルメリポーターのように語りだした。

パティシエの男性が厨房からケーキの入った箱を持ってきた。


「どうだった?」

「俺はあまりこういうの分からないんですが凄く美味しかったです」

「ありがとう。またいつでも来てくれ。はい、これ注文のケーキね」

「ありがとうございます。それじゃまた来ますね」

「ごちそうさまです」


 楓ケーキを受け取り俺と店を出た。


「春明君この後時間あるかな?」

「今日は一日暇だから大丈夫だけど」

「良ければお菓子作ってみない?」

「そうだな。せっかく製菓部に居るんだからやってみるか。あっ、でも今日は学校に入れないはず」

「それは大丈夫。私の家でやるから」

「えっ?」


 電車に乗り楓の家へ向かった。

 電車に乗ること3駅ほどで楓の地元の駅に着いた。


「結構山の方に住んで居るんだな」


 辺りを見渡すと駅も小さく後ろには大きな山があり高い建物と言っても駅前にマンションが1棟あるだけであとは家や小さな商店ばかりだ。


「お店もあまりないのでこのあたりの人は電車で出かけるの」

「それで今日も来ていたのか」

「うん。家はすぐそこだよ」


 そう言って歩くこと数分。楓の家に到着した。


「おじゃまします」

「夜まで両親は居ないからゆっくりしていいよ」

「お、おぉ」


 そう言えば女子の家に行くのって初めてかもしれない。

 キッチンに案内され椅子に座って待って居ると楓はキッチン棚からいろいろ道具を取り出し、材料もテーブルに並べた。


「それで何作るんだ?」

「チョコケーキでも作ってみようかと」

「難しくないか?」

「簡単だよ。えーっと、まずはクッキーを袋に入れて砕くの。袋破けないようにね」


 俺はクッキーが入っているジッ〇ロックを机に置き、上から麺棒などを使い砕いた。


「こんな感じか?」

「そうそう」

「そこに溶かしバター入れて混ぜて、この型にクッキー生地を敷くの」


 溶かしバターを入れ、袋を軽く揉んだ。

 それを取り出し丸い型に敷いた。


「結構均等にするの難しいな」


 スプーンなどを使い均等で尚且(なおか)つ堅くなるように力を入れた。


「次にチョコレートを湯煎するよ」

「ゆ、湯煎?」

「ボールに細かく切ったチョコレート入れてそれをボールごとお湯につけて溶かすやり方だよ」

「お菓子作りも簡単じゃないんだな」


 俺はチョコを湯煎しとかし始めた。


「体力もいるからね」

「少しずつだけどチョコ溶けてきたぞ」

「ドロドロになるまで頑張って」

「おぅ」


 徐々にチョコは溶けドロドロになってきた。

 思っていたより溶けるまで時間が掛かった。


「やっと溶けきった……」

「溶けたら生クリームと混ぜて型に入れて少し上から落として空気抜いて」

「これだけでも美味そうだ」


 高さ5センチくらいの場所から容器を机の上に落とし空気を抜いた。


「あとは冷やして完成。お疲れ様」


 楓はチョコケーキを冷蔵庫に入れた。


「疲れるけどお菓子作りも楽しいな。これはハマるかも」

「固まるまで時間かかるから明日学校に持っていくね」

「それにしてもレシピ見ないでよく作れるよな」

「結構読んでいるからね」

「そんなにレシピ本持っているのか」

「ケーキ専門とかあるからね。見てみる?」

「ちょっと気になるな」

「こっちにあるから来て」


 楓と一緒に2階にある部屋に入った。

 そこは楓の部屋だった。ものすごく整頓されていてベッドの上には動物のぬいぐるみ等が置いてあった。

 これが女の子の部屋なのか。


「春明君どうしたの?」

「なんでもない。それで本ってこれなのか?」

「うん。これがケーキ専門でこっちはゼラチンを使ったお菓子の専門誌だよ」

「チョコ系専門まであるのか」

「最近は結構細かいジャンルであるよ。こっちは抹茶系のが多くてこれはね――――」


 楓は嬉しそうにお菓子について語った。

 よっぽどお菓子作りが好きなんだな。

 翌日、楓はみんなには何も告げず部活を始めた。


「ねぇ楓。今日って何作るの?」

「何も材料無いみたいですけど」

「実は今日は作ってきた物を食べてもらおうと思って」

「何か作ってきたのですか?」


 楓は冷蔵庫から箱を取り出しみんなの前で開けた。


「何これ!? 超美味しそうじゃん」

「見た感じ生チョコレートケーキですわね」


 苺先輩は見ただけで何のケーキか即答した。さすがだ。


「今回は春明君も手伝ってくれたんですよ」

「春明が!?」


 夏がすごく驚いた。そこまで驚くことは無いと思うが……


「今回これ作って思ったんだけど、俺はお菓子作り好きかもしれない」

「喜んでもらって嬉しい。これからもよろしくね。それじゃさっそく」

『いただきまーす!」


 初めて作ったお菓子は特別な味がした。

 誰かが作ったものを食べるだけではなく作る側の気持ちを知ることが出来て良かった。

どうも藤桜です

読んでいただきありがとうございます

今回は楓の話でした

初期設定では春明が居なかったので楓が主人公だったんですよねw

次回はいよいよメンバー最後の苺の話です

それではまた!


@huzizakura

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ