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第4話 夏と懐かしの思い出

 千秋と買い物行った翌日、日曜日だというのに特に何もない俺は暇つぶしに町を歩いていた。

 何かないだろうか? 辺りを見渡すと〝ゲームセンターリニューアル〟と書いてある旗を見つけた。


「(ゲーセンで暇つぶしでもするかな)」


 俺は駅前にあるゲームセンターに向かった。

 店内はゲームの音が鳴り響いている。


「(人が多いな~……ってあれは)」


 店内に入ってすぐのところで夏がゲーム台を見ながら歩いて居た。

 夏もすぐに俺に気がついた。


「あれ? 春明じゃん。奇遇だね」

「夏はよくここに来るのか?」

「暇なときはここによく来るよ」

「そうなのか。ここって最近リニューアルしたんだな。昔といろいろ配置変わっているし」


 辺りを見渡すといつもレースゲームがあった場所はコインゲームエリアになっていた。よく見るとあっちこっち変わっていた。


「結構変わっているからね。あっちがアーケードゲームで向こうにリズムゲームになっているよ」

「クレーンゲームはどこだ?」

「クレーンゲームはアーケードの隣。案内するよ」


 夏に連れられて建物の奥へと進んで行った。

 そこには何台ものクレーンゲームがあった。


「こういうのって取れないよな。しかもこのぬいぐるみデカいから動かなそう」

「そんなことないよ? 見てて」


 そう言うと夏はぬいぐるみの入ったクレーンゲーム台にコインを入れた。


「あのタグを狙って~……ほらね。こうすれば簡単に取れるよ」


 あっという間に1つのぬいぐるみを取って見せた。


「そういうのだけは詳しいな」

「ゲームとか好きだかね。昔よく兄と来ててさ。その時いろいろ教えてもらったんだ」

「兄がいるのか」

「居るよ。でも今一人暮らしをしているから実家には居ないけどね」

「だから一人で来ているのか?」

「楓はこういうのやらないから……」


 夏はちょっぴりさみしそうにぬいぐるみを抱きしめた。


「だったら俺を誘えよな」

「でも千秋に悪いし……」

「ん? 千秋がどうした?」

「ううん、別になんでもー。ちょっと向こうの休憩スペースで何か飲もう」

「そうだな。ここ音がすごいし」


 休憩スペースに行った。

 ここはゲームコーナーと壁で仕切られていて話し声がしっかり聞こえる。


「どれ飲む? 僕が奢るよ」

「良いのか? それじゃぁアイスカフェオレで」


 俺と夏は自動販売機で買った飲み物を持ってテーブル席に座った。


「そういえば夏って自分のこと僕って言うよな」

「あ~、やっぱり変かな?」


 ちょっと恥ずかしそうに目をそらした。


「ちょっと気になったから。あっ、もしかして聞いちゃ駄目だったか?」

「そんなことないよ。小さい頃からよく兄とその友達と遊んでいたからね。公園とかよく行ったなぁ」

「公園か~、懐かしいな」

「もう遊具も小さいからね」


 俺も昔はよく友達と公園など行って遊んだものだ。その時のことを思いだしていた。

 すると記憶に何か懐かしい場所が浮かんだ。


「そうだ。ちょっと駄菓子屋行かないか?」

「駄菓子屋? この辺りにあったかな?」

「まぁついて来ればわかるさ」


 そう、あの頃はよく駄菓子屋で友達とお菓子を買って近くの公園で遊んだものだ。

 ゲームセンターから10分ほど歩くとそこには駄菓子屋がある。


「昔ながらのお店だね」

「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」


 狭いお店の中には女性店主が椅子に座っていた。


「お婆さんが居なくなってから変わらずですね」


 昔から居たお婆さんは昨年無くなって一度はお店を閉じるはずだったが娘であるこの女性がお店を引き継いで今もあるのだ。


「私の母が開いたお店ですから私が守らないとね」

「春明ってここに昔から通っているの?」

「小さい頃、親に連れてきてもらってから時間があれば来ているかな」

「お勧めのお菓子ってある?」

「やっぱりこれだな。あとはこれとこれ」


 俺は昔から変わらずあるお菓子を選んで小さなかごに入れた。


「それじゃそれ買おうかな」


 夏は俺が選んだ駄菓子と気になった駄菓子を買い、俺も薦めた駄菓子と新作だろう駄菓子を買った。


「ありがとうね」

「買ったことだし近くの公園で食べるか。それじゃまた来ます」


 女性店主に挨拶したあと俺と夏は駄菓子屋の裏にある公園に向かった。日曜日だけあって子供もちらほら居る。

 空いているベンチに座り先ほど買った駄菓子を食べた。


「この公園も懐かしいな。小学生の頃よく来たっけ」

「僕、この公園来たことがあるかもしれない」

「夏の家ってここから少し遠いだろ? 小学生がわざわざバスでここに来るなんてことはないだろうし」

「でもなんか見おぼえがあるんだよね。確か家族でこの辺りに来て僕はここで遊んで待って居たような……それでここで何かあった気がする」

「何かって?」

「同じ年の男の子に駄菓子を分けてもらって一緒に遊んだような……」

「どんな駄菓子だったんだ?」

「えーっと……あっ、春明が今手に持っているやつだ」

「これか?」


 その駄菓子は俺が昔から好きでよく買っている物だった。

 小学生の頃も買ってこの公園で遊んで……

 その時遊んでいたメンバーに誰か居たような気がした。でもまさか。

 

「なぁ、その時遊んだ男の子ってどんな子だったんだ?」

「えーっと……確か白いライオンの絵が描いてある青いメッシュ素材の帽子をかぶっていた。それでそれが球団のグッズだって話になって――――」

「その子は野球ではなくサッカーが好きだった」

「え? なんで知っているの?」

「なんでだろう? なんかそんな気がしただけだ」

「そう? まぁその子達と遊んでサッカーが好きになったのかもしれない」


 俺は確信した。小さい頃この公園で知り合った男の子が実は女の子でしかもここに居る夏だってことに。

 だけど俺はなぜかその事を言わなかった。

 昔のことを話していると反対側にあるベンチにカップルらしき二人組が座った。


「彼氏って欲しいのかな……」

「なっ、何を急に!?」


 つい声に出てしまっていたみたいだ。


「あっいや別に何となくそこのカップル見てたらそう思っただけだ」

「そう。まぁ女の子はこの年になったら欲しいでしょ。僕は無理だけどね」

「どうしてだ?」

「だって僕は舞台に上がらないから……」

「舞台に上がらないっていうのは?」

「僕は主役じゃなくて脇役……いいや、スタッフなのかもね」


 夏が少し無理に笑顔を作ったことくらい俺にだって分かった。


「夏だって主役になれるさ。自分にもっと自信持てよ」


 俺は夏を励ましてやった。


「その笑顔ずるいな~。……もう少し頑張ってみようかな」


 夏は笑顔を見せた。

さっきのと違い心の底からの笑顔って感じだ。


「その意気だ!」

「もう少し自分に素直になるよ……」


 公園で遊ぶ子供の声に交じって夏は呟いた。


「ん? 何か言った?」

「何でもないよ~。よし、ゲーセンまで走って行こう」

「おい、待てよ~~」


 元気よく走り出した夏を追いかけた。

 その後ろ姿はさっきまでとは全く違う感じがした。


読んでいただきありがとうございます

実は3話を投稿していたと思って4話はほとんど出来上がっていたんですよ

それで今回のこの4話を投稿しようとしたら2話まで詩か登校してないことに気が付いて

ビックリでしたよw

次回投稿はまた先になると思いますが応援お願いします


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@huzizakura

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