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第2話 俺と後輩

 翌朝、今日は1年生が最後の部活登録の日だ。門の前ではいつも以上に気合を入れて部活勧誘をしている生徒もいる。それとは逆に人数も揃ったのだろう勧誘をやっていない部活もあるようだ。

 グランドでは早速新入部員と朝練をしている部活がある。俺はその光景を横目で見つつ教室に行った。

 席に座りスマホをいじっていると八里がやってきた。


「ういーっす。お前部活決まったのか?」

「まぁ何とかな」

「ほぉ。で、どこにしたんだ?」

「……製菓部」

「え? 製菓部ってこの前夏達に誘われたってやつだろ? 結局そこにしたのかよ」


 八里は嘲笑った。


「いろいろあったんだよ」

「でもあそこって部員少ないだろ?」

「俺入れて5人だな」

「ってことはお前と楓と夏とあと2人居るのか」

「1年の子はまだ会ったことないけど千秋って名前の子らしい。もう一人は苺先輩」

「苺先輩かー…… えっ!?」


 八里は何か凄いことを聞いたかのように驚いた。


「どうした?」

「い、苺って豊之香先輩か!?」

「そうだけどそれがなんだよ?」

「お前豊之香先輩知らないのかよ」

「知らないなぁ」

「学年では常に成績1位を取り続けている凄い人なんだぜ。生徒会長候補にもなってるとか」


 八里はまるで自分のことのように自慢した。


「ふ~ん。そうなのか」


 俺はそういうことはあまり詳しくないというかそれほど興味がないのだ。


「反応薄いな…… まぁ、お前そういうの興味ないんだったな」

「まぁな」


 豊之香苺先輩って一体何者なのだろうか……

 その日の放課後一人部室へ向かった。楓は職員室に寄ってから行くと行っていた。夏は宿題を忘れたので下校時刻まで提出するよう言われ現在教室で勉強中だ。苺先輩は何やら家の用事で今日は来れないと言っていた。

 階段を上がり調理室のある廊下に出ると調理室の明りが点いていた。誰か来ているのか?

 俺は調理室を開けるとそこには一人の女子生徒が窓からグランドを眺めていた。

 女子生徒はすぐに俺に気が付いた。


「あっ、えっと……」


 1年生はおどおどしていた。そういえば向こうは俺のことを知らないんだよな。


「俺もこの製菓部の部員なんだ。昨日入部してな」

「そうだったんですか。私は秋田千秋って言います」

「俺は瀬戸春明。よろしく」

「よろしくお願いします」

「そうか、君が千秋なんだな」

「えっ?」

「ん? あっ、ごめん。みんなが千秋って言ってたからつい」


 夏や楓が千秋と呼んでいたのでつい俺も千秋と呼んでしまっていた。


「別に良いですよ。私も春明先輩って呼ばせてもらいますね」


 千秋はほほ笑んだ。

 あれ? この表情どこかで……


「そういえばどこかで会ったことある? なんか初めてって気がしないんだが……」

「覚えていませんか? 入学式のときに」


 俺は入学式のときのことを思い出した。でも生徒は大勢いて――――あっ、俺は思い出した。


「もしかしてあの時予定表渡した?」

「はい、あの時はありがとうございました」

「まさか同じ部活だったとは」

「あの、ところで他の先輩たちは?」

「苺先輩は今日家の用事で来れないってさ。楓と夏はもうそろそろ来るとはずだから」

「分かりました」


 俺は千秋と部室で待っていると扉が開き楓が入ってきた。


「遅くなっちゃった」

「やっと来たか。あれ? 夏はまだなのか?」

「なっちゃんはまだ教室に居たよ。今日は来れないかもって」

「どれだけかかるんだよ……。そんじゃ始めるか」

「今日は何をしますか?」

「まだ材料を買ってないから今日は次回作るお菓子決めをしようかな?」

「私、レシピ本持ってきました」


 千秋はリュックの中からお菓子のレシピ本を数冊取り出し調理台の上に置いた。


「それじゃこの中から選んでみよう」


 楓は千秋が持ってきたレシピ本を開いた。


「どれにします?」

「部活動時間内に作れるものじゃないとだから冷蔵系は無理かもね」


 楓と千秋はページをめくっては悩んでを繰り返していた。

 俺はレシピ本を少し見せてもらった。結構いろいろな種類があるんだな。ページをめくっているとある写真が目に入った。


「これなんてどうだ?」


 俺が選んだのはパウンドケーキだ。作り方を見る限り火や包丁をつかわないみたいだ。


「それじゃこれにしましょ。千秋ちゃんもこれでいい?」

「はい、それじゃさっそく今日の帰りに駅前のスーパーで買いますか?」

「そうだね」

「それじゃ買う材料まとめますね」

「小麦粉多めに買わないと。今後も使うから」

「はいっ」


 二人はメモ帳に材料名を書き込んでいた。

 その時、誰かの携帯電話の着信音が鳴った。


「私のだ。ちょっと待ってて」


 楓はすぐに電話に出た。


「もしもし。どうしたの? ……うん、わかったあとで行くね」


 そういうとすぐに通話を切った。


「この後、なっちゃんの所に行ってくるね」

「あいつまだ宿題やってるのか?」

「うん、まだ終わらないみたい」

「やっぱりな。それじゃ買い物は俺と千秋だけで行ってくるわ」

「別に私一人で良いですよ」


 千秋は気を使っているみたいだ。


「でも結構買うだろ? 重くなると思うし」

「ありがとうございます。それじゃお願いします」

「買い物お願いね。今からなっちゃんのところ行ってくるからお先に」

「おぉ、また明日な」

「お疲れ様です」


 楓は調理室を出ていった。


「それじゃ俺たちも行くか」

「はいっ」


 楓は夏が居る教室に行き、俺と千秋は駅前のスーパーに向かった。

 学校からスーパーまでは大体徒歩で20分くらいだ。日が沈み始め空はオレンジ色に染まっていた。帰宅ラッシュなの駅近くの道路は混んでいた。


「駅前のスーパーって南口のほうで良いのか?」


 駅前には北口と南口両方に別のスーパーが存在している。

 千秋は少し考えたあと答えを出した。


「南口のスーパーにします」

「わかった」


 俺と千秋は南口にあるスーパーに向かった。

 やっぱり夕方だけあって主婦や仕事帰りのサラリーマンなどが総菜を買ってたりして混んでいた。


「混んでいますね」

「休日はそうでもないんだけどな」

「春明先輩この後時間ありますか? 少し行きたい場所があるんですが」

「うん、俺は別に良いよ。それじゃ買い物終わらせて行こう」

「はいっ」


 俺と千秋は買い物を終え店を出た。買った食材は後日俺が持っていく事になった。量はそれほどでもないが千秋が持つと身長的に引きずりそうだ。


「ありがとうございます。食材持ってもらっちゃって」

「別にいいって。それで行きたい場所って?」

「えっとですね。ここから少し行ったところにケーキ屋があるんです」

「ケーキか。最近食べてねぇな」

「あ、それじゃ御馳走しますよ」

「いやぁ後輩から、しかも女の子から奢られるのってなんか悪いよ」

「それじゃ入学式のときのお礼ってことでどうですか?」

「分かった。お言葉に甘えて奢ってもらおうかな」

「そうと決まったら早く行きましょう」


 少し住宅地に入ったところにひっそりとしたケーキ屋があった。


「ここかぁ」

「知ってますか?」

「来たことは無いけど楓と夏が話しているのを聞いたことがあったから」

「ここ凄く美味しいですよ」


 店内に入るとそこにはショーケースの中に綺麗に並べられたケーキがあった。


「いらっしゃい」


 厨房から一人の男性が出てきた。服装からしてパティシエだろう。


「店長さんこんばんわぁ」

「千秋ちゃんじゃん。 ん? 今日はいつもの子じゃないね。もしかして彼氏かな?」

「ち、違います! 同じ部活の先輩ですよ!」


 千秋は頬を赤らめ全力で拒否をした。


「そこまで思いっきり否定されるとちょっと痛いが……」

「はわわ、すっ、すみません」

「あははは。ケーキ決まったら呼んで。僕は厨房に居るから」

「はいっ」


 パティシエの男性は再び厨房に行った。


「さっき言ってたいつもの子って楓や夏か?」

「いえ、同じクラスの子です。よくこの辺りのケーキ屋とかを回っているんです」

「その子とは今日は回らないのか?」

「えっと今日は春明先輩とここに来たかったので」


 千秋は少し頬を赤くしていた。まぁ男性を誘うなんて気を使うだろうからな。


「そうか。それにしてもいろいろな種類があるんだな」

「季節ごとに変わるのも多いんですよ。」

「悩むな~。俺はこれにしようかな」

「私も決めました」

「どれにした?」

「このレアチーズです」

「お、奇遇だな。俺もそのケーキにしようと思っていたところだ」

「お揃いですね」

 

 千秋は嬉しそうに微笑んだ。

 なんだか千秋はとても楽しそうだ。

 やっぱりケーキとかのお菓子が好きなのか。

 今度何か奢ってあげようかな。

2話です

ようやく部員全員登場です

今後部活はどうなっていくのか楽しみですね

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