vs ダークガーゴイル
タグ:ブレバ 実況
くにひこ ジェイ ハルミ
なるほどわからん ガーゴイルリレー
犬「なん…だと」 神回 ジェイ終了3分前
「夜中に機嫌よく歌いながらチャリを飛ばしていたら、後ろからお巡りさんに追いかけられました!ジェイです!」
「先日二人の兄が、どちらがアイスを食べたかで大喧嘩していましたが、食べたのは実は私です。ハルミと申します」
「近所に住んでる幼馴染がいつの間にか合鍵を作ってやがり、よく家に入り込んでくるようになったので先日こっそり鍵を変えました。
帰ってきたら幼馴染のヤツが庭の犬小屋を占拠して寝てました。くにひこです」
「いや、この年になっても案外犬小屋に入れるもんなんだね(笑)自分でも驚きの発見」
「ちなみに幼馴染はこいつです」
「ジェイくんでしたか」
「くにひこくんとジェイくんは小学校からの付き合いなんですよね」
「そうそう!一年から三年生まで同じクラスだった(笑)」
「当時からこいつはうるさかった」
「ひどい!」
「うらやましいです。妬ましいです。妙にお二人の仲がいいなと思っていましたが、私だけ仲間外れですか。致し方ありません。私もくにひこくん家の犬小屋に入るしか」
「ホントにやめてくれ」
「くにひこくん家の犬涙目(笑)」
◇
「さて、前回ようやくクエスト受注までこぎつけた訳だが
一回目、チュートリアルクエスト
二回目、買い物とクエスト受注
三回目でようやく冒険に出るぞ」
「めでてえ!」
「移動をする前に、場所を確認しましょう。まずはこちらのマップをご覧ください」
ジェイのメニュー画面からマップを表示する。
マクロ表示に切り替えると、大陸全部が見渡せるようになった。
世界地図が5つに千切れている。
内三つ、ざっくり丸く切り取ったような形の切れ端と、北東と南西の地図の切れ端が色づいて表示されているのだ。
南東と北西の地図は未だ失われたままだった。
「画面中央、大陸がすっぽりと入った地図が第一世界ミットエアです。現在地はやや西よりの赤矢印のところ」
「内陸のところだな。基本的に森とか山脈が多い」
「すぐ南には湿地帯も広がっています。この地図の中心から外側に向かっていくにつれて敵が強くなっていくと思って良いです。ちなみに他の二枚の地図は、ワールドエリア解放クエストで解放された新エリアです。各エリアに魔王がいて、そいつらを全部倒したら真エンディングだそうで」
「まだ二つほど解放されてないな」
「はたしてブレバプレイヤーたちが真エンディングを見られるようになるのはいつの日か(笑)」
「目的地は瘴気の森です。森の奥地に要塞があり、そこが当イベントの舞台となるダンジョンとなる訳です」
「おお、そこまで移動する訳だね?」
「いえ。移動はしません」
「なんで(笑)だってまだここはスネアドルム……な、なんだってぇぇぇぇっ!?」
ジェイがマップ画面を閉じると、そこに広がるのは黒々とした森。
「はい。実はもう着きました」
「瞬間移動だとぅっ!?」
※もちろん、ちゃんと歩いて移動しました。
「ゲーム実況をこれまで何年もやってきましたが、ようやく……ようやくこの領域に辿り着きました」
「ば、バカな!それは禁断の術……!それを使えば動画上が『んc』とか『(ry』とかいうコメントであふれてしまうという………は、ハルミちゃん!まさかその禁術に手を出したというのか!?」
「だって仕方がなかったんです……ええ、イケナイことだと理解はしていました……。でも、あんなにコメント欄で『あくしろよ』と言われたら、やるしかないでしょう!?」
【んc】
nice cutの意。
【(ry】
以下略、の意。
【あくしろよ】
早くしろよ、の意。
ゲーム実況者に対しては、「早く先に進めよ」もしくは「早く次を投稿しろよ」という意味合いになる。
「ちなみにここまでくる途中何度か敵とエンカウントしたが、全部逃げたからな。ステータス上昇はしてないぞ」
くにひこが冷静にフォローを入れる。
「おい、いつまで茶番をやってる。とっとと進むぞ」
「「はーい」」
三人は瘴気の森へ足を踏み入れた。
その名の通り、空気がどことなく黒く淀んでおり、周囲の枝葉がすっかり爛れている。
おまけにこの森の辺りだけ暗雲が立ち込め、更におどろおどろしさを醸し出していた。
「なんだこのホラー感は(笑)BGMまでなんか女の人の悲鳴みたいなの聞こえるし」
森に入った途端、草原の軽やかな音楽から一転し不協和音が鳴り続けている。
「怖いBGMっていえば、ぼくあれが嫌だったなー。ほら、初代某モンスター収集ゲームのお墓の町で流れてたやつ」
「あー…」
「みんなのトラウマですね分かります」
「ね!」
「うーん。怖いBGMですと、私は青い鬼さんですかね。こう、近付いてきた時の圧力が」
「あれは何も知らない子どもは泣くよね」
「俺はゼル伝の井戸の中」
「「あー分かる」」
「どうしよう、むしろここの音楽がそれっぽく聞こえてきたんだけど(笑)」
やいのやいの言いながら、森の中を進んでいく。
進めば進むほど、毒々しく紫の霧がたちこめてくる。
「あ」
「あ?」
「どしたの?くにひこくん」
「いや……気付いてはいけないものに気付いてしまったな、と」
「なに(笑)」
「どうぞ仰ってください」
「さっきからHP減ってきてる」
「えぇぇぇぇっ!?あ、ホントだ!」
ジェイのプレイ画面の端には、同じパーティとなった三人のHPゲージが見られるようになっている。
三人のゲージは徐々に削られていた。
「状態異常は出てないな。経過時間によるダメージか?」
毒状態になればアバターの頭上に毒を示す紫の泡が浮かんできて、ステータス欄に毒表示が追加される。
しかし現在三人のアバターは健康そのものである。
「落ち着いてる場合じゃないって!どうすんの!?」
「どうするもこうするも、先に進むしかありません。おそらくこれは地形ダメージの一種でしょう。一刻も早く森を抜ける他すべはありません」
「よよよ、よし!早く行こう!」
その時、割と身近な場所から咆哮が轟いた。
ギギィィィィィィィッ!!!
金属が擦れたような声と共にそいつは姿を現わす。
黒くツヤのある表皮、惚れ惚れするような筋肉のついた上体、たくましい腕の先には獲物を切り裂くための爪が黒光りしている。
爬虫類を思わせるとがった頭に、ズラリと牙の並んだ顎。
瞳孔の見えない鋭い瞳は黒曜石だろうか。
「が……」
茂みから這い出してきたそれを見て、ジェイは戦慄した。
「ガーゴイル……っ!!」
下半身はどこかの壁に埋まっていたのか、壁ごと引き剥がしてズルズルと引きずっている。
「やはり最初にガーゴイルにエンカウントしますか…」
ハルミは嘆息ついた。
と、同時にピコーンと電子音が鳴る。
〈ダークガーゴイル と 遭遇した!〉
「こいつ強いのか?」
「ミットエアの魔王城で中ボスを張っているのと同じモンスターですね」
くにひこは硬直した。
しかしハルミは慌てず杖をかまえる。
「お二人共。落ち着いて聞いてください。ガーゴイルは一定回数攻撃を加えると、翼を広げて飛行状態になります。飛行状態になると攻撃が当たらなくなるので、そうなる前にカタをつける必要があります」
「まずこれ攻撃が通るのか(笑)明らかに硬そうなんだけど!」
「私の指示通りに動いてください。悪いようにはしません」
ダークガーゴイルが地面に爪を立てて猛然と迫る。
ギギィィィィィィィ!!
「避けて!」
三人はその場を飛び退く。
ダークガーゴイルの爪が木をなぎ倒した。
「ひぃぃぃっ!?」
ジェイは悲鳴を上げる。
だがハルミは油断なくダークガーゴイルを見据える。
「また《かぎ爪》来ます!ジェイくん!」
「は、はい!?」
「次の攻撃、受けてください!」
「冗談でしょ!?」
ダークガーゴイルはぐりんっとこちらに向き直る。
再び腕を振り上げる。
「ええい、ままよ!」
ジェイはやけっぱちに叫び、腕をクロスさせる。
痩躯がいとも簡単に吹っ飛んだ。
「きっつ……っ」
HPゲージが瀕死圏内までごっそりと持っていかれた。
倒れこむジェイに緑の光が降り注ぐ。
ハルミの《慈愛のしずく》だ。
「くにひこくん、今です!」
「おう!」
すかさず駆け寄ったくにひこが、宝刀マサカリを重さのかぎりぶん回す。
攻撃後硬直中のダークガーゴイルの頭を捉ええた。
しかし。
ガキィン!!
「……ちっ」
攻撃を弾かれ、思わず舌打ちが漏れる。
ダメージが通っている感覚が全くなかったのだ。
地を蹴り、素早く後退。
後をやはり巨大な爪が通り過ぎる。
「おい、全然効かねえぞ!」
くにひこが怒鳴ると、
「当たり前です!」
とハルミは信じられない答えを返してのけた。
「ジェイくん、立てますね?次の攻撃は《ぶちかまし》のはずですから、避けて反撃を!それ以外なら《防御》をお願いします!」
「なんかぼくだけハードじゃない!?」
「気のせいです!」
「ヤバイヤバイ!ぼく今、破魔の護符つけてない!!」
代わりに叡智のピアスで知力を上げる方を優先したのだ。
チョイスを間違えたか、とジェイは顔を歪める。
「来ます!」
ハルミの合図と共に、ジェイは腹を括って一歩前に出た。
これまでのダークガーゴイルは全て近接攻撃だ。あえて前に出ることで狙いをジェイに絞らせる。
「来いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ピコーンと電子音が鳴った。
〈ジェイ はスキル《挑発》を覚えました〉
「やった!?記念すべき初スキル!」
「アホか!集中しろ!」
思わずもろ手を上げて歓喜したジェイに、ダークガーゴイルが突撃をする。
もはやその重量こそが凶器。
ダークガーゴイルはその全身をもってジェイを引き潰そうと迫る。
ジェイは間一髪で横に飛ぶ。
ステップを踏み、
「これでも喰らえ!」
ピコハンを振り下ろした。
ピコッ。
「………えー」
ギギィィ?
「……………ですよねー(笑)」
なんかやったか、とばかりに首を傾げるガーゴイルに、ジェイが乾いた笑いを浮かべた。
ハルミが武器を収め、高らかに叫ぶ。
「撤収!!!」
※タグはその内増えていきます。
久々の無理ゲーブレイバーズです。
更新は不定期ですが、書き溜まり次第上げます。