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無理ゲーブレイバーズ  作者: 駄文職人
【ブレバ】無理ゲーを攻略してみた その2
5/10

宝刀マサカリ

タグ:ブレバ 実況

 くにひこ ジェイ ハルミ

 全て計算通り ダイナミック不法侵入

 壮大な人違い 伝説のピコハン使い

ブレバ鳥人間コンテスト

「はいっ、今回もやっていきましょう!

 ブレバ実況プレイ【無理ゲーを攻略してみた】お送りするのは、めんつゆ至上主義、ジェイと!」

「ねぎと焼き海苔は欠かせません、ハルミと」

「しょうゆオンリー、くにひこでお送りします。

 ……これ何の話か分かんねぇだろ視聴者は」

「卵かけご飯の食べ方の話です ( 笑 ) 」


 キラリと光る〈ブレイバーズ・アドベンチャーオンライン〉のタイトルを背景に、ジェイ、ハルミ、くにひこが順に挨拶をしていく。

 今日のメニュー画面の後ろは満点の星空がきらめいている。このメニュー画面の映像はランダムで変わる仕様だ。


「ジェイ君、めんつゆをかけるのですか」

「三倍濃縮でいつも食べてるよ! 時々ふりかけもかけるよ!」

「何の味で食べたいんだよ、お前は」

「それよりぼく、ハルミちゃんのねぎでびっくりしたんだけど ( 笑 ) 」

「おや、合うのですよこれが。卵とねぎ。マヨネーズを混ぜても癖になります。

 ジェイ君もぜひお試しください」

「マジで ( 笑 ) 帰ったらやってみる」

「おい、ゲームやるぞ」




 閑話休題。




「えー、前回のあらすじ!

 隣町に着きました!  以上っ 」

「割愛するまでもなく、本当にそれだけしかやってねぇからな」

「そんな訳で、我々は今ティンパニアのお隣さん、スネアドルムの玄関口までやって参りました」


 必要最低限の施設だけを取り揃えた城壁都市ティンパニアとは違い、スネアドルムは住宅地や商店街などの地区が整然と並ぶ赤レンガ造りが中心の美しい町だ。


 平野のど真ん中、交易ルートの交差点に位置するこのスネアドルムは東西南北にそれぞれ門を構えている。

 門を交点として対角線上に伸びる大通りはいつも所狭しに並んだ古くからの店で賑わっている。


 特にここ数日はスネアドルム限定で運営によるバーゲンイベントをやっているので、あちこちで花や弾幕が咲き乱れ一層華やかさが増していた。


《本日特売! 今なら二十%オフ!》


「どこぞの百貨店のようだ」


くにひこが冷静にコメントした。


「荷馬車護衛のクエストをクリアして報酬もらったからさー、どっかで買物しようよ。

 折角の交易都市なんだs」

「 ぜひMP回復アイテムを 」


 食い気味にハルミが希望を述べた。


「うお。今回はずいぶん主張するな、ハルミ……」

「前回魔力切れで動けなくなっちゃったもんね (笑 ) 」

「ゲーム序盤はまだ魔力ゲージが少ないので、こまめに補給しないと長期クエストは保たないのです。

 という訳で、ぷりーずぎぶみー!」

「わぁったから落ち着け。とりあえず、クエストのフラグ回収がてら町を散策するぞ」




「あれ? そういえばクエストの概要、まだ視聴者の皆さんに説明してなかった?」

「おぉ、そういえばしていない気がしますね。道すがら、今後の予定について説明しておきましょう」


 ハルミが教師のように人差し指を立てて説明を始める。



「我々がこれから挑戦する本命クエストは、正式名を《囚われの精霊巫女》と言います。

 無理ゲーだの都市伝説だのと巷で呼ばれていますが、具体的には、 ダンジョンを攻略して幼女を救う簡単なお仕事です 」

「せめて少女と言え」

「ロリでも可」


 くにひこが黙ってジェイをぶん殴った。

 ジェイは大通りのど真ん中を派手に転がっていった。HPゲージが三割消失した。


「飛びましたね」

「腕力12あるからな」

「し……死んじゃう……」


 てくてくとハルミは落ち着きを払って路上に突っ伏しているジェイのそばまで歩いてきた。

 動画はジェイのプレイ画面なので、カメラのフレーム内に戻る位置まで来て彼女は説明を続ける。


「クエスト名からも分かる通り、精霊巫女を助けるためには精霊巫女を崇めている集団、つまり精霊教団の幹部から巫女失踪の情報を聞かなければなりません。

 当面の目標は精霊教団と接触する事ですね」

「しかもその精霊教団の本拠地がこのスネアドルムにある」

「ありがたい話です。ただしクエスト受注にあたって、いくつかフラグを立てておく必要があります。

 一つ目は、三人以上のパーティで行動している事」

「これは問題ねぇな」


 ハルミの言葉にくにひこが頷く。


「もちろんです、その上での三人プレイヤーによる豪華メンバーなのですから。

 次に、同様のパーティの顔ぶれで最低一回はクエストをクリアしている事」

「おぉ、前回のわんわんお退治は無駄じゃなかった ( 笑 ) 」


 いつの間にか復活していたジェイが口を挟んだ。


「寄り道しているように見えるかも知れませんが、我々もちゃんと計算して行動しているんです。

 ただ、最後の条件は少し難しいですね。パーティ内の誰かの腕力もしくは魔力が20以上である事」

「あれっ !?  いきなり詰んだ !? 」

「レベル上げ、全くしていませんからね」

「残念だ。ここで俺たちの冒険は終わった」

「呆気ない最終回だった ( 笑 ) 」







「華麗にその流れをぶった斬ります。ちゃんと抜け道があるので安心してください」

「ちっ」

「くにひこ君、今舌打ちしました?」

「え? 抜け道って言ったって、それこそホントに修行パートになるんじゃないの?

 実況、ダレない?」


 素朴なジェイの疑問を、ハルミはちっちっと指を振って否定する。


「最後の条件、実は装備による補正数値も判定対象に入ります」

「うん?」

「更に。幸いにして、ここにわんわんおを殲滅した報酬が」

「お?」

「そしてなんと。本日偶然にもこのスネアドルムではイベントによる値下げ祭りが行われています」

「ま、まさか……」

「賢い視聴者ならもうお分かりですね?」


 ぱっとハルミはくにひこに向き直った。

 ぴっと親指を立てる。




「くにひこ君にはここでブロードソードとさよならしてもらいます」

「俺か! いや、そんな気がしてたけれども!」




 武器変更により、一時的にくにひこの腕力を上乗せするのだ。


「とは言っても、要はフラグさえ回収できれば良いのです。

 ええ、ダンジョンに入ってから装備変更してもなんら問題はありません」

「うはっシステムの隙を突くような事を ( 笑 )」

「何を仰います。システムの裏を掻いてこそプロのゲーマーでしょう」

「さらっととんでもない事言ったよこの人 !?」

「今回は正々堂々と突破する分まだマシですよ。

 とにかく、今回のお買い物の第一目的はくにひこ君の腕力補正を充実させる事です。

 ブロードソードの補正 + 2を差し引きますから、今の所持金で買える腕力 + 10の武器を探さなければなりません」

「きっ厳しい……これは厳しい」

「ですからこれからは一切の無駄遣いはできません。

 いえ、 ここで何を買うかによって今後の展開が大きく左右される と言っても過言ではありません。

 わざわざ収録日をバーゲンイベントに合わせたのもその為ですし」

「今ぼくらは町をのほほんと歩いているけれど、その実とんでもなく重大な選択を迫られているって事か ( 笑 ) 」


 やがて三人の足はスネアドルムの中央広場まで辿り着いてしまう。

 広場は値下げ祭りの弾幕が一層華やかに主張している。しかも花びらが上空から降っている演出付きだ。見渡すと路上パフォーマンスをしている NPC までいる。

 見ているこちらもお祭り気分に浮かれてしまいそうだ。


 しかしそんな周りの空気も、重大な選択を迫られている三人にとってはただの背景のようだ。


「んー、前回発覚したジェイ君の知力2もどうにかしたいところです。

 これからの激戦を前にスキルなしは少々厳しい。何がってフォローに回る私のMPが」

「叡智のピアスは? あれ確か補正 + 5くらいあっただろ」

「やはりそうなりますか。あれ割と高価なんですよね。

 ちょっと待ってください。電卓叩いてきますから」


 ボイスチャット越しにカタカタと軽い音が聞こえ出す。


「マジで計算しているんだ ( 笑 ) 」

「まず、計算できるって事はあいつスネアドルムの各店舗の品揃えから売価まで全部把握してるって事だろ。バカじゃねぇの」

「むしろすげぇ天才だよ。ハルミちゃん、他の実況でもとことん分析してやり込むタイプだもん」

「こないだ上げてた実況なんか、レアアイテムのドロップ判定計算して乱数調整してたぞ」

「じ、人力TASだと…… !? 」


 しばし間。


「……はい、お待たせしました。カツカツですがぎりぎり足りるでしょう」

「おぉ!」

「前回のわんわんお退治で頂いた報酬が50000ギンス、そしてくにひこ君の残金が37ギンス、ジェイ君の262ギンスです。私が残金0なので我々の所持金は50299ギンスという事になります」

「待て」

「何でしょう?」

「何で俺らの残金まで知ってる」

「もちろん計算で出しました。装備を見れば何をご購入されたかは分かりますから」


 どうやらティンパニアのお店状況まで把握済みらしい。


「おかしいな。俺、呪石クエストのザコ戦で金増えてたはずなんだがな」

「あぁ、呪石をお持ちの狂戦士ですね」

「おう」

「ドロップしたのは946ギンスでしょう?」

「なんで知ってるんだ !? 」

「やだこの子コワイ」


 当然、ドロップする金額は戦闘によって変わる。

 それは敵のレア度や個体数だけではない。戦闘中のクリティカル回数や乱数を計算式に代入されて弾き出される。


 はずなのだが。


「ふふ、このハルミ様を舐めないでください」

「あぁ。ぶっちゃけちょっと舐めてた」


 くにひこは冷や汗を腕で拭う。


「話が逸れましたね。我々の所持金は50299ギンス。

 東の武器屋では宝刀マサカリを29800ギンスと大変お買い得で売っています。こちらの補正腕力がきっかり10です」


「「マサカリっ !? 」」


「何でだろう、金○郎しか出てこない ( 笑 ) 」

「ちなみに両手持ちの装備だそうで。刀身が斧のような形状をしており、重みを頼りに振り下ろすタイプの武器だそうです」

「 ホントにマサカリじゃねーか !?  それ俺が担ぐのか !? 」

「あっはははっ!(大爆笑)」


 壁に手をついて笑い転げているジェイをくにひこが蹴っ飛ばす。


「フラグ回収の為です。致し方ありません。そしてジェイ君の叡智のピアスですが」

「おぉ!」

「なんと値下げ対象外でした」

「なん…だと」

「精霊教団スポンサーの聖具店でしか売っていないんです。何故かこちらはバーゲン対象外店舗でして」

「なんてこったい !? 」

「上級ダンジョンでは魔物が希に落としたりするんですが。残念ながらそれを回収する時間はございません。

 という訳で、こちらは店頭価格の10000ギンス」

「め、面目ない……」

「ついでなので、破魔の護符も買いましょう」

「なんだそれ」

「体力補正が + 2ですが、体力ゲージが三割を切ると即死耐性が付与される優れ物です」

「おぉ、買おう」

「三つで6000ギンスです」

「ぐはっ……いや、でもこれは必要経費だ!」

「これで残金が4500ギンスほどですね。これらは適当に安い店で回復アイテムを充実させる為に使いましょう」

「ん? ハルミは装備変更しないのか?」

「とりあえずは必要スキルを揃えてから考えます。どうせクラスチェンジ予定ですし」

「もう人生設計してる ( 笑 ) 」

「もちろんですとも。私とて回復専属のメンバーに留まるつもりがございませんので。うふふ」

「「なんか良からぬ事を企んでるっ !? 」」



【ジェイ パラメータ】

 腕力:7( + 2)→9

 敏捷:9( + 3)→12

 体力:4

 知力:2( + 5)→7

 魔力:3

 魅力:5


 装備:ダガー(腕力 + 1)

 ダガー(腕力 +1)

 革ブーツ(敏捷 + 3)

 叡智のピアス(知力 + 5)


 スキル:盗む




【くにひこ パラメータ】

 腕力:10( + 10)→20

 敏捷:5

 体力:6( +5)→11

 知力:6

 魔力:1

 魅力:2


 装備:宝刀マサカリ(腕力 + 10)

 ―

 鎖帷子(体力 + 5)

 狂戦士の呪石


 スキル:斬り払い、刹那の一歩、オーラブースト




【ハルミ パラメータ】

 腕力:2

 敏捷:2

 体力:4( + 6)→10

 知力:8

 魔力:8( + 3)→11

 魅力:6


 装備:月桂樹の杖(魔力 + 2)

 加護の腕輪(体力 + 3)

 祈祷師のローブ(魔力 + 1)

 ロザリオ(体力 + 3)


 スキル:恵みの風、慈愛のしずく

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