相馬
「つばきいいいい」
茶髪の男が擦り寄ってくる。
「寄るな気持ち悪い。金は貸さんし、女も紹介しないぞ」
「女に困ってるように見えるか?」
確かに彼はスタイルも良く、顔も整っている。
身長は180cm程あり、服のセンスも悪くない。
だが、茶髪が壊滅的に似合っていないのだ。
「その髪染めない限り困り続けるだろうな」
「仕方ないだろ!契約の代償なんだから!」
「他の女が寄り付かないようにしてるんだろ。かわいいなお前のUnknown」
「ちくしょう!ちょっとナンパしてくる!」
「お大事にー」
嵐が去った後のような部屋でベッドに倒れる。
学園長の姿。
これは昔から気になっていた事で、在学中から探りを入れていたのだが、ここまできてやっと尻尾を掴んだ。
きっかけは、50年前の写真と変わらない姿の学院長に気付いた高3の頃か。
当時僕は図書室に通い詰めていた。
そこで、何故か閲覧禁止であった卒業アルバムに興味を持ち、当時契約したばかりのエマを使って盗み見たのだ。
全く変わらない姿の学園長。
契約者であっても、50年も経てば多少見た目は変わるものだ。
しかし、アルバムの写真には、現在の学園長との相違点は微塵も確認されなかった。
それも今日をもって、謎は解明された。
といっても予想通りのオチだったのだが。
突然、電話が鳴った。
「斎野と申します。椿さんの番号で間違いないでしょうか?」
爽やかな男の声だ。
「はい。ご用件は?」
「突然失礼致します。お仕事の依頼なのですが…」