学園長2
二人が去った後、小さな部屋を沈黙が支配していた。
「どうでしたか」
その沈黙を破り、静かに問う。
ガリムの目には深い何かが見え隠れしている。
深すぎて何も見えない。深海のような瞳だ。
「確かに興味深い」
学園長、レイビス・ストレアは答える。
銃弾は、威力減衰させていて、致命傷は得られないものだった。
だからこそ、直撃コースで発砲したのだが。
「あいつ、因果律にまで干渉してたわ」
銃弾は直撃コースだった。
しかし、当たる前にその運命は捻じ曲げられ、よりによって握り締めていた消しゴムに当たって反射するなどという馬鹿げた結果を生み出した。
握り締めていた消しゴムに、だ。
手を傷つけずに一体どうやって消しゴムに当てたかは不明だが、何故このような回りくどい事をする必要があったのか。
最初にやったように、鉄の壁でも出した方が手っ取り早いし、確実だ。
「きっと、縛りが強力すぎるのでしょう」
悲しそうに、ガリムが言う。
「どういう事?」
「今日、彼が強く命じたのは、彼女を消しゴムに擬態させるものだったのです。咄嗟の能力使用時に、それが足を引っ張ったのでは?」
「時間の経った命令がそこまで強く残る事ってあるのかしら?」
「命令の強さと、契約の質によりけりですが、ありえない事ではないかと」
しかし、と言いよどむガリム。
「それじゃあ、彼との契約が長引く程……」
「彼女は自分の首を閉めていく事になるでしょうね」