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第七十八話 オーガ殲滅

 ブレイクナックルが押さえ込んでいるオーガを殺る為に、十字路に向かって歩く。


「Gyaaaaaaaaaaaa!」


 俺に気付いたのか、ブレイクナックルに移動を邪魔されている四体のオーガが、威嚇する様に咆哮する。

 それを聞き流しながら、近寄ってくるモンスターを左右の大型パイルバンカーで殺しながら進んでいく。


 一体……何れだけいるんだ?


 ――殺せ。

 ――破壊しろ。


 破壊衝動のお蔭か、オーガを殺し尽くすまで退く気はない。

 だが、それまで身体の方が持つか。

 無理を重ね続けている以上、そう長くは戦えないだろう。

 少しでも早く、終わらせなければ。

 ならば、もう一度無理を通せばいい。


 身体強化を最大で発動しろ。

 そう、腐れ甲冑に命じる。


マスターの現状では、身体強化の使用は推奨出来ません』


 いいから、やれ。

 これで、終わらせる。


『……了解。身体強化を発動します。制限時間は五十秒。……カウントダウンを開始します……』


 再び、全身の水晶体が蒼く発光。

 吸われる様に、マナを消費し始めた。

 同時に、水晶体から溢れる蒼い光が全身を包んでいく。


『……四十九……』


 右側のオーガに駆け出し、右の大型パイルバンカーをその腹に突き刺す様に叩き込む。


「Gyaaaaaaaaaaaa!?」


『……四十八……』


 尖端の杭が刺さった所から、血が溢れる様に流れていく。

 何かが砕けた様な大きい音。

 苦痛の悲鳴を上げながら、オーガがこん棒を叩き付けた。

 だが、左の可動盾が完全に防ぎ、こん棒は破片を撒き散らしながら砕け散った。


「Gyaaaaaaaaaaaa!」


『……四十六……』



 咆哮しながら向かってくるオーガの胸に、左の大型パイルバンカーを突き付け作動ボタンを押す。

 爆発音と共に打ち出された杭が、オーガの胸を貫通。


「Gyaaaaaaaaaaaa!?」


 その衝撃で、オーガの胸から上が、血や肉片を撒き散らしながら爆散。

 それを避けながら、右の大型パイルバンカーで串刺しにしているオーガを振り払う。


『……四十四……』


 ブレイクナックル四基が押さえ込んでいる、残り二体のオーガを見る。

 二基のブレイクナックルが連係し、オーガを攻撃していた。

 聞こえてくる、二つの悲痛な叫び。


「Gyaaaaaaaa!?」


 オーガの一体は転倒させられ、頭と腹を押し潰されて止めを刺される。


「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」


 もう一体は立ったまま、万力で頭を挟まれていく様に左右から押し潰されていった。


 ブレイクナックルに連係攻撃なんて芸当出来たのか?


『……四十二……』


 その疑問は、直ぐに解消する。


マスター、ブレイクナックルは怨霊が憑いている武具です。一応知性はあるので、成長すればあの程度は当然です』


 腐れ甲冑の説明があったからだ。

 成長!?

 怨霊憑きの武具が成長するだと。

 その事に驚くが、今はそれ所ではない。

 十字路の向こうに、まだ二体残っているのだから。

 その辺は、後でゆっくり聞けばいい。


『……三十八……』


 寄ってくるモンスターを左右の大型パイルバンカーで薙ぎ払いながら、十字路の向こうで高みの見物をしている二体のオーガに全速で向かう。


『……三十六……』


「Gya!?」


「グッ!?」


 勢い余って、左側のオーガと激突。

 右の大型パイルバンカーが、オーガの腹を串刺しにしていた。


「Gyaaaaaaaaaaa!?」


 悲鳴を上げながら叩きつける様に振るわれたオーガの左拳を、可変盾が防御。

 激突音が、至近距離で響く。


『……三十四……』


 その轟音に顔をしかめながら、オーガの顔面に左の大型パイルバンカーの尖端を叩き込む。

 尖端がオーガの顔面を穿ち、そこから血が流れ出す。


「渡すぞ」


『……三十二……』


 左の大型パイルバンカーを引き抜き、串刺しになっているオーガをもう一体の方へ飛んでいく様に振り払う。

 振り飛ばしたオーガは、もう一体のオーガと激突。

 二体とも、そのまま壁に叩き付けられた。


『……二十八……』


 止めを刺す為、飛んで行った二体のオーガを追いかける。

 壁に叩き付けられた二体のオーガは、そのまま力無く崩れ落ちていく。


『……二十六……』


 完全に崩れ落ちる前に、上になっているオーガの背に右の大型パイルバンカーの尖端を叩き付ける。

 そのまま作動ボタンを押し、杭を打ち込む。


『……二十四……』


 爆発音が響き、大型パイルバンカーの杭が二体の体を貫通。

 その衝撃が、血や肉片を撒き散らしていく。

 続けて響く激突音。

 その瞬間、パイルバンカーの杭を打ち込んだ辺りの壁が発光。

 壁は破壊されず、光が杭を受け止めた様だ。


『……二十……』


 これで、オーガを全て始末した。

 やっと……終わったか。


 身体強化を解除しろ。

 そう、腐れ甲冑に指示する。


『了解。……身体強化を解除します。……ブレイクナックルを回収、再装備しました』


 腐れ甲冑の宣言の後、水晶体から光が消え、全身を包んでいた蒼い光も消え失せた。


「ハァ……ハァ……」


 目の前のオーガ二体が、光と共に消えていく。

 辺りを見ると、モンスターの姿は無い。

 どうやら、終わった様だ。


 疲れ果てた身体を引き摺る様にして、マナポーションを飲みながらバリケードに戻っていく。

 のんびり戦利品を回収している余裕は無い。

 投擲したダガーを見つけるが、投擲後に剣身が壊れたのか使えるものが全く無い。


 大損だな。

 この損失分も後で請求しておこう。



 ふらつきながらも、何とかバリケードの前に辿り着く。


「上げてくれないか?」


 台に乗り、通路を監視している警備隊員に声を掛ける。


「おう、ご苦労様。掴まれ」


 軽く声を掛けられ、手が差し伸ばされる。

 その手を掴み、バリケードをよじ登って階段前の広間に戻る。


「済まないな」


 手を貸してくれた警備隊員に礼を言っておく。


 何処かで見た覚えのある男だ。

 思い出そうと、頭を捻る。


「気にするな。ギルド長にこき使われる可哀想な後輩に、手を貸してやっただけだ」


 以前にもかけられた科白。

 それで思い出す。

 お飾り領主の護衛隊長だった男だ。


「何故、あんたがここにいる? 家族の為に、安全な仕事を選んだと言っていた筈だが」


「あれから直ぐ、首になってな。お前が、お飾りの領主を処刑したのが原因だぞ。あの男(ギルド長)とは関わりあいたく無かったんだが……嫁さんと子供の為だ。背に腹は代えられんよ。それで、仕方無くギルドの職員になったんだ。そうしたら今回の騒動だ」


 家族持ちは大変だな。

 結婚は人生の墓場と言うが、本当の様だ。


「警備隊が怪我人だらけで、人手が足りなくてな。元探索者だった俺も駆り出されたって訳さ」


「ご苦労様だな」


 そろそろ、立っているのも辛くなってきた。


「その言葉、そっくり返してやる。さっきの戦闘を見たが、相変わらず無茶苦茶しているな。それと……今回の氾濫を発見して、そのままここ(広間)に溢れ返っていたモンスターを一撃で殲滅したと聞いているぞ」


「仕方無いさ。見付けた時には、ダンジョンから出てくる所だった。つい、勢いでな」


 あれは、やりすぎたと思う。

 疲労で動くのが辛かった。

 反省はするが、後悔はしてない。

 やっただけの収穫はあった。

 “爆波”という技を手に入れたのだから。


「勢いでモンスターを殲滅するか……と言うか、普通は一人でそんな事出来ないぞ」


 遠回しに非常識と言われている気がするが、気のせいだろうか。


「なら、モンスターを街に出しても良かったのか? あんたの家族も助かったんだ。問題無いだろ」


「……ああ、問題無いな!」


 どれだけ家族が大事なんだ。

 だが、答えるまでに間があったな。

 少し悩んだが、自己解決した様だ。

 考えるのを止めただけかも知れんが。


「所で、これからどうするんだ? もう少し、ここにいてくれるとありがたいのだが」


「帰って寝る。昨日今日と無理し過ぎた。後は知らん。死ぬ気で頑張ってくれ」


 そう言って帰ろうとした途端、身体から力が抜けていく。

 目の前が真っ暗になり、崩れ落ちる様に倒れる。


「おい、大丈夫か!?」


 駆けよってくる様な感じの複数の足音。

 それが聞こえてくる中、意識が薄れていった。


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