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3話「灰色空の街のどこかで」

翌朝、圭が目を覚ますと、部屋にトミの姿が無かった


圭は一瞬、遅刻が頭に過ぎりケータイの時計を見た


時刻は10時を指していた、曜日は土曜だった


「なんだよ・・・」圭はケータイを置いて、再び寝転んだ


トミは土曜日に環境整備委員の仲間と共に近くの川沿いのゴミ拾いの行っている

3ヶ月前から行われていて、ボランティアでやっている


圭も誘われたが行ったことは一度も無い


圭は少ししてベットから降りて、部屋を出てすぐ右にある階段を下りた


下は食堂になっていて、朝、昼、晩で3食出るのだ


「おはようございます」圭は呟くように静かに言った


「圭ちゃん!!アンタ若いのが、今もう10時だよ」

食堂のおばちゃんが呆れながら朝食の白ご飯に納豆、サラダ、煮干をトレーに入れて圭が座るテーブルに置いてくれた


食堂には誰も居なかった、この寮には30人の寮生がいる


「いただきます」圭は納豆を混ぜながら言った


「トミは今日もゴミ拾いよ・・・アンタもなんかしたら?」

食堂のおばちゃんが皿を洗いながら言った


おばちゃんはおばちゃんでも35歳で、良く見ると美人だ、だが男しか居ないこの寮で折角のベッピンを殺している、圭は黙ってご飯を口に入れた


「もう3年なんだし・・・進路とかどうなの?」


話し相手が圭しか居ないためか、おばちゃんは次々にしゃべった


「成績はどう?」「昨日は何時に寝たの?」「門限守ってる?」{ちなみに門限は夜10時だ}


親のように質問がぶつけられた


圭は特に反応せずに、黙々とごはんを食べた



「そいえば・・・バンドのメンバーだった小野君を昨日の夜見たよ」


小野とはショーのことだ


「ショーを?」圭はようやく反応して箸を止め、顔を上げた


「私が帰る頃だから12時くらいかな・・・スーパーの店員と追いかけっこしてたわ・・・アレは万引きね」おばちゃんは探偵のように考えるポーズをしていた


「あいつは・・・万引きの常習犯だから」

圭は当然のように納得して箸を進めた


「あんた達・・・最近一緒にいないわね?」

おばちゃんは圭を見つめて言った


「色々と」圭は顔を上げずに、食べながら言った


「私・・・密かにあんた達のファンだったのよ・・・バカが5人も集まってね」

おばちゃんは思い出し笑いをしていた


確か初めてギターを弾いたのはココだったな


圭はお茶を飲み干しながら思い出した


「4人でもいいじゃない・・・また笑わせてよ」

おばちゃんは一人盛り上がっていた


「ごっさん」圭はトレーを流しに戻して、食堂を出た


部屋に戻って服に着替え、下に下りて食堂を抜けて外に出た



風が涼しくて気持ちよかった


空には綺麗な青空が広がっていた



「映画でも見ようか」圭は財布の中のお金を確認して一人呟いた


20分ほど歩いて、大型ショッピングモールに着いた


4階建てで、様々な物が売ってある、圭は2回にある映画館を目指した


階段を上って、一番左の建物に入った


入ってすぐ上にあるモニターに上映作品と上映時間など書かれている


圭はケータイの時計を見ながら見る作品を探した



圭は少し画面を見た後、受付に行き、チケットを買った


映画までは40分、隣の本屋で時間を潰し、映画を見た



その後、マックに行き、服を見ていると同じクラスの安西雅人と出会い、二人でカラオケに行った


安西とは2年の時の宿泊学習で班が同じになり、それから仲良くなった


修学旅行も共に街を探索した



安西と別れて時計を見ると10時を過ぎていた


「やべ・・・おばちゃんが切れる」寮の責任者でもあるおばちゃんは門限を破ると翌日皿洗いをさせると言うルールを作っている


圭はいつもはしごを使って裏から入るのだ



すっかり暗くなった夜道を歩いてると後ろからものすごい足音が響いてきた


「なんだ?」圭は止まって振り返ると、暗い闇から男が猛スピードで走ってきた


男は圭に気づかずに止まることが出来ずに、二人は正面衝突した


ドン!!と音が響き、二人はその場に倒れ込んだ


「いって・・・」圭は打ったオデコを左手で抑えながら相手を見た


相手は急いで後ろを確認して、何も来ないことに安心したのか、その場に座り込んだ


手には膨れ上がったバックが握ってあった


「お前・・・ショーだろ?」圭はショーに近づいて言った


「その声・・・圭ちゃん!!」ショーの声のトーンは高かい


「お前・・・まだ万引きしてんのかよ」

圭は膨れたバックを見た



「ぶつかったお詫びに一杯やろうぜ」

ショーは道の下の川沿いの縁石に歩いて行った


「お前いつもこんな事してんのか?」

圭は呆れながら着いて行った


「万引きってな・・・取るときじゃなくて、店を出る瞬間妙にドキドキするんだよ」

ショーは座ってバックを明けた


酒、タバコ、つまみ、漫画、雑誌、CD、などが溢れた


「おいおい・・・どんだけだよ」

圭は中の物を見ながら座った


縁石の上に街頭があり、二人を照らした


「んでな・・・あのドキドキが欲しくてよ」

ショーは続きを話した


「万引きは中学までだろ?普通」

圭は酒を空けて一口飲んだ


「万引きくらしか・・・このドキドキは味わえないんだよ」

ショーが少し寂しげに見えた


「俺なんて・・・なんもないよ」

圭は夜空を見上げた


「俺さ・・・子供の頃親父から人は死んだら空に帰るって聞いたんだ・・・・星になるって」

ショーが突然言い出した


「ありきたりだな」圭は少し笑った


「俺の母親は3歳の時に死んだから・・・・親父がそう言って誤魔化してた」

ショーも空を見上げた


「だったら・・・あいつも・・・」圭は呟いた


「あ?」ショーが横目に見て聞き返す


「アッキーも見てんのかな?今の俺達を」

圭は空を見渡していた


「笑ってるだろな?・・・結局何も変わらないから・・・俺はさ」

ショーはワザとらしく鼻を掻いた


「俺もだよ・・・爆笑もんだ」


その日の夜空はやけに綺麗に見えた


圭の頭の中にGReeeeNの「BEFREE」の二番のサビが響いていた

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