2話「バンド結成」
圭は学校から100メートル歩いた所にある高校の寮に入った
部屋は二人一部屋で、二段ベットが置いてあり、他には、テレビ、冷蔵庫、二人で夏にバイトして買ったPS3が置いてあり、帰ると同居人の「中丸富男」トミがゲームをしていた
「おかえり~」トミは圭の方を一度も見ずに、画面を見たまま言った
「おう」圭は自分のベットのある上の階に行き、座り込むとケータイを開いた
「新着メールなし」の表示を確認するとケータイを閉じて、トミがプレイしているゲームの画面を見た
「今日どっか寄ってきたの?」トミが何気なく聞いた
トミは環境整備委員で、放課後に学校の掃除をして帰るため、いつもは圭が先に帰り、トミを待っているのだ
「ああ・・・部室にジャンプ読みたくて」
「俺はてっきりまたバンドやるのかと思ったよ」
トミはコントローラーを操作し、掛けているメガネを少しずらした
「今更するかよ」圭は声のトーンを少し落として言った
「あんだけ燃えてたのにな」
トミの言葉に圭はバンド結成時のことを少し思い出した
元々うちの「桜山高校」に軽音部は無かったが、文化祭の3ヶ月前のある日、アッキーが突然にバンドを組むことを発言した。
2年のとき同じクラスだった5人は「映画研究部」を設立し、部室を借りてやりたい放題していた
そんな時にアッキーが突然放った言葉が「文化祭でなんかやろう」だった
「やるって何を?」ショーは冗談半分でアッキーに尋ねた
「俺達は今何もしてない・・・・勉強に勤しんでいる訳でも部活でインターハイも目指してない」
アッキーは演説のように声を荒げて言った
「いきなりどうした?」パソコンに夢中の信介が言った
「何かこの高校に爪あとを残したい」アッキーは一人立ち上がって、4人の顔を見ながら言った
アッキーは「熱くなる」や「今しか出来ないこと」とか熱血教師並の熱さを持っていて、一度火が付くと止められなかった。
「んで?何するの?」圭はアッキーを見ながら言った
「バンドだ」アッキーはロックバンドのCDを見せながら言った
「バンド!!」4人声が同時にハモった
「そうだ!!高校生が!!文化祭でするってたらバンドよ!!」
アッキーは子供のように、はしゃいで言った
全ての始まりはそこからだった
「ギターの練習だって・・・うるせ~音響かせてたのに」
トミの言葉に圭は現実に戻った
「悪かったな」圭はトミの言葉が嫌味に聞こえ、ムっとした
「でもま・・・仕方ないか」
そう言われると圭は無性に哀しくなった
あの時死んでたのがアッキーじゃない他のメンバーなら「Boyz」はきっと活動していただろう
それだけは何故か確信が持てた
「ああ・・・仕方ないよ」圭は下を向いて、呟くように言った
仕方ない、この言葉を使って俺はこの先いくつの壁から逃げていくのか
圭はイヤホンをさし、ケータイの中にある音楽を聴いた
「結局お前たちはこのレベルなんだよ」
夢の中学校の教室でアッキーを二人で話している
アッキーが言い放った
「うせ」圭はアッキーから視線を反らして言った
「一度くらい何かに挑んでみろよ」
いつもの熱いアッキーの言葉が妙に胸に刺さった
「今出来ないことはな・・・死ぬまで一生出来いぞ」
{うるせ~俺だって}圭は心の中で思った
「お前らは生きてる・・・まだ間に合うぞ」
アッキーはかわいい笑顔で言った
言い放つと静かに消えた
「待てよ!!おい!!俺が聞きたいのはそんな事じゃない!!」
急いで手を伸ばした瞬間に目が覚めた
時計は午前3時を指していた
「また・・・・アイツの夢か」
部屋の窓から見える月が満月だった
「っち・・・出てくんじゃね~よ・・・気持悪い」
圭は再び目を閉じた