10月26日(1)
十月二十六日 日曜日
腫れぼったいまぶたを上げて目を覚ます。時計の針は、朝九時を少し回っていた。
今ごろ聡史君は、律儀に駅前でわたしが来るのを待っているのだろう。
だけどわたしは、ベッドから起き上がる気すら、さらさらなかった。
外は快晴で、明るい光が差し込んでくるにもかかわらず、心はどんよりとした雨模様のまま、回復する気配すらなかった。
そんな時、突然わたしの部屋の扉がノックされた。お母さんか? それとも信也君か――。
どちらにせよ、わたしは返事をする気にはなれなかった。
たとえ火事だとドアを叩かれても、おいしそうな食事の匂いが部屋に広がってきても。
そして、エンマ様に出てこいと怒鳴られたとしてもだ。
本来ならわたしは信也君と毎日のように顔をあわせ、相談にのる義務がある。
だけど、顔を合わせると昨日の出来事を鮮明に思い出してしまいそうだった。そうなればまた口論になってしまうだろう。
そうでなくても、わたしの胸中は穏やかではいられない。信也君の相談を、冷静に聞ける状態ではないのだ。
ノックは一度きりで、二度目はなかった。その方がわたしもありがたかったけど。
寝返りをうって、再び瞳を閉じる。できれば明後日まで、信也君と顔を合わさずに済ませたかった。
だけど目が覚めてしまったので、なかなか睡魔の恩恵をえられない。
それでもわたしは、ひたすらに時間が経つのを待ち続けていた。