10月24日α(3)
エンマ様の部屋に入ると、わたしのただならない状況を感じ取ったのか、一時的に判決を中断してくれた。
「どうしたんだ、ミリア」
優美ちゃんの死が、早まった事実を告げると、エンマ様は腕を組んで考え込んだ。
そして、わたしに尋ねてくる。
「ミリア、お前はどうするつもりだ?」
「もちろん信也君に伝えますよ! 明日の出来事なんですから、今日忠告すれば防げるはずです!」
「そうだろうな……だが、鷹野信也にこの事実を伝えてはならん」
悪魔のような言伝を受け、わたしは思わず絶叫していた。
「ど、どうしてですか!」
「では逆に聞くが、もしも山倉優美を助けた結果、次に死ぬのが三日後だったとしたら、どうするつもりだ? また三日間ほど鷹野信也を生き返らせるというのか?」
「そ、それは……」
「それではきりがないだろう? 鷹野信也には悪いが、生き返らせた時点の情報だけで、山倉優美を救ってもらう。その結果、山倉優美の死ぬのが早くなろうと、それは運命なのだ」
「はい……」
「もちろん、ミリアが山倉優美を助けることも許さんぞ。ミリアの役目はあくまでサポートであり、山倉優美を救うのは、鷹野信也でなければならん。ミリアはミリアで、現界人の恋愛を学ぶという使命もあるんだからな」
「わかりました……」
返事はしたものの、わたしは納得がいかなかった。
もちろん信也君が優美ちゃんを救えようが救えまいが、わたしの中界での生活に影響はない。
だけど毎日相談を聞いているわたしは、努力している信也君の姿を知っている。こんな終わり方で、信也君の望みが絶たれて欲しくなかった。
「ところでだ、ミリア」
「はい?」
話を切り替えて、エンマ様はわたしをにらみつけた。
「お前は中界に帰って来すぎだ」
「えっ? あ、そうかも……」
「そうかもじゃない。せっかく現界で生活するよう手配しているのだ。今後はよほどの用事がない限り帰ってくるんじゃないぞ?」
「も、もし帰ってきたら?」
怖いもの見たさといった感覚で、尋ねてみる。するとエンマ様は、にべもなく言った。
「地界巡礼ツアー一ヶ月に、今後の仕事は一生夜勤……でどうだ?」
「そ、それは勘弁してください!」
地界巡礼ツアーだけならまだしも、夜勤なんて絶対にやりたくなかった。
「よし、これならそう簡単には帰って来ないだろう。では、そういうことで、現界に戻すからな」
「あ、ちょっ!」
抵抗する間もなく、わたしは自分の部屋へと戻っていた。