ライバル出現!?
「ねぇ〜、軽音部に入ってくれない?」
俺はとりあえずクラスの男子に話しかけていた。これでクラスは全員に声をかけたが、誰も軽音部に入りたいと言ってくれる人はいなかった。俺と陽介のクラスは全滅らしい。
「これで一週間部員見つからずじまいだな」
「何でこんなにも音楽に興味ある人がいないんだろう」
「本当、本当。聞くのはいいけど弾くのは無理ってどういう事だよ!?」
放課後のプレハブ二階で俺と陽介は愚痴をこぼし合っていた。陽介に至っては部員見つからなさに半ギレ状態になっている。
「お〜い!部員見つかった?」
プレハブの階段から岡田が歩いて来た。
「見つかるはずねーだろーが!」
陽介がとうとうキレた。岡田は少しびっくりした様子でいたが、まあまあと手を前に出した。
「その様子だと見つかったの?岡田のクラスでは」
「クラスじゃないけど、塾にいた」
「また塾友か!」
「なんと家にギターがあるんだって!」
「おお!」
俺と陽介は一緒になって喜んだ。
「ただ!」
岡田が喜びを遮った。
「ただ?」
「向こうの学校で軽音部やってる人」
俺と陽介は同時にコケた。
「意味ねーじゃねーか!」
起き上がって二人してツッコんだ
「俺ちょっとそいつに会いたくなった」
「は!?」
陽介が意味不明な事を言い出した。
「いや、何かアドバイス貰えるかもよ?」
「・・・・・」
そして俺たちは桜坂第五高等学校1年の灰沢大志のところへ向かった。
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「アイツだな・・・」
陽介が高校近くの道から一人で黙々と帰っている大志を指差した。眼鏡をかけていて細い顔。いかにも真面目って感じのやつだった。
「よし!話しかけてみようか!」
「・・・・・・」
岡田が不安そうに黙っていた。
「ねぇ!」
気が付くと陽介が話しかけていた。
「何?」
灰沢は低い声で聞き返した。
「軽音楽部あるんだろ?そっちの学校」
「関係ないだろ。他校が口を挟まないでくれ」
「なっ・・・・!!」
陽介が怒っているのは見る間でもなく分かった。
「まだ軽音楽部あるか聞いただけだろ!」
「用件が無いなら帰ってくれ」
「分かってらぁ!」
そう言うと陽介はこっちに戻って来た。
「という訳です!」
陽介はキッパリと言い張った。
「何やってんだ!せっかくの正式な軽音楽部員を」
「だってアイツの性格見たかよ!アドバイス聞いてられっかよ」
「確かに・・・・僕もアイツに頭はさげたくないな」
「帰って啓人の曲の練習しようぜ」
そう言って陽介と啓人はプレハブへと向かって行った。
(待てよ!俺たちが軽音部作ったらアイツがライバルになるのか・・・)
そう思いながら俺も二人の後をついていった。
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プレハブの二階で俺たちは楽器を構えていた。
「よし!行くか」
岡田が押さえていたメトロノームが動き始めた。
俺が歌い始めるとベース音が増し音に重みが出た。陽介は予想以上に器用で、3日ほどでオリジナルのベースパートを作り上げた。そしてしばらくすると、岡田のメロディーが加わった。リードギターとしてのポジションとなった岡田は運指に力を入れて自主練習していたらしい。もうこの曲はだいぶ曲らしくなってきた。
みんな練習してうまくなった。
俺の歌も。
周りの楽器も。
リズムもだいぶ良くなった。
ーーーーーーーーーーーー後はドラムがいればーーーーーーーーーーーーー。