崩れゆくバンド
俺らはオーディオインターフェイスやパソコンなどを使い、曲の録音作業を開始した。
「なんとかうまい事出来てるな・・・」
軽音楽部として活動できた俺たちは部費を使っていろいろ楽器を買っていた。
俺はfenderのストラトキャスター、
陽介はmusicmanのスティングレイ、
徹はgibsonのレスポールだ。
孝則はpearlのドラムセットが気に入っているらしく、買わなかった。
こうして演奏力もUPした俺らは地区のLIVEなどに出まくって、どんどん知名度を上げていったのだ。
「これなら文化祭も楽勝だな!」
来月に迫っている文化祭に向けて陽介は意気揚々だ。
「そろそろ大会にも出れるし」
そう、俺たちの目標の一つでもある「大会」。
大きな大会でグランプリを勝ち取ること。絶対に叶えてやるという熱い気持ちが俺の中をよぎっていた。
「あんたたちってプロにならないの?」
「沙雪・・・」
思ってもみない一言だった...って顔してるよみんな。俺たちは文化祭と大会のことで頭が一杯だった。プロなんて考えたこともなかった。
「・・・い、いいね!沙雪!いいね!」
陽介がベースを置いて沙雪に指を差す。陽介がベースを置いて話し始めるのはテンションが上がっている証拠だ。
「だってあんたたち上手いもん」
「そーだよね!やっぱし!」
陽介と沙雪。二人で盛り上がってる中。一人だけ乗り気じゃないメンバーがいた。
「僕は・・・それは・・・将来に関わってくるから難しいと思う・・・」
徹だ。
「何でだ!音楽で飯食ってけるんだったらそれ以上の幸せはないだろ!?」
「食ってけるかどうかなんて分からないだろ!?」
「・・・ッ!!」
徹が初めて出す怒鳴った声に陽介は一瞬たじろいだ。
「僕の親は真面目でその上頑固で、勉強のことはうるさいから・・・っ!・・・僕はちゃんとした職業に就かないとダメなんだよ!音楽で食っていくなんてそんな、保証出来ない仕事に就くわけにはいかないんだよ!」
「知らねーよ!そんなの。お前の人生はお前で決めるんじゃないのか!?何のためにここまでやってきたんだよ!!」
喧嘩ムードになってきた二人を俺は抑えようとしたが、孝則がそれを止めた。
「あいつらどっちも正しいこと言ってんじゃん。二人がこれから人生どうするか、今決まると思うから邪魔すんなって」
「でも・・・ッ!!」
沙雪も止めようとはしていなかった。
「徹!今までLIVEとかやってきたのは何だったんだよ!」
「文化祭で成功する為と大会で優勝する為だろ!?陽介は目標がズレてる。初めの目標はプロになることじゃなかったはずだ!」
「何だと・・・ッ!!」
陽介の怒りがピークに達していることは全員が目に見えていた。
「俺は気持ちの話をしてんだ!プロになる意識もねえ奴がバンドにいて、文化祭も大会も成功するわけないだろーが!!そんなこと分からないんだったらバンド辞めろよ!」
「!!」
(馬鹿か・・・陽介・・・!)
俺は必死にフォローしようと思ったが、言葉が上手く見つからなかった。
そして徹は何も言わず音楽準備室を出ていった。
「何言ってんだよ!?陽介!!」
俺はどっちかと言うと陽介が許せなかった。別にプロを目指さなくたって楽しくバンドをやっていたのに、それだけで良かったのに、徹がいなくなってしまった。
「知るかよ・・・」
「何・・・ッ!!」
「もう戻れないだろ!」
「・・・ッ!!」
俺は無力だった。徹も止められなかった。徹との思い出が俺の頭の中を流れた。楽しくて仕方なかった。どんどんバンドが崩れていくのを心で体で感じていた。
「何だっていいから・・・陽介も辞めないでくれよ・・・」
「・・・・・」
暗く重い雰囲気が音楽準備室を包んでいた。
だいぶ時間経ちました。
すみません。
また投稿すると思います。
よろしくお願いします。