第四十五話 「A組崩壊」
神奈川県立統合学園。
その日。
ついに、“A組”が限界を迎えた。
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朝。
校内モニター。
《A組特別会議開催》
全校がざわつく。
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「……来たか」
柴崎が真顔だった。
「何が」
「エリート崩壊」
言い方が終わっている。
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一方。
A組教室。
空気は重かった。
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以前のA組は。
完璧だった。
高Lスコア。
高評価。
模範恋愛。
だが今。
誰も笑っていない。
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「……意味あるのか」
A組男子が呟く。
「こんな点数競争」
静かな空気。
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別の女子も小さく言う。
「最近、恋愛が楽しくない」
その言葉は。
以前なら絶対出なかった。
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理由は明白だった。
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Eクラス。
D組。
あいつらは。
点数を気にしていない。
でも。
笑っていた。
自然に恋愛していた。
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「俺たち……何やってたんだろうな」
A組男子が机を見る。
「“好き”より、“評価”ばっか気にしてた」
誰も反論できなかった。
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その頃。
Eクラス。
いつもの騒ぎ。
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「松永ぅぅぅ!!」
「なんだ」
「焼きとうもろこし、D組に人気すぎる!!」
「当然だ」
謎の自信。
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その時。
旧校舎入口。
A組生徒たちが現れる。
静かな空気。
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「……珍しいな」
俺が呟く。
一ノ瀬雪乃も少し驚いていた。
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そして。
相沢が前へ出る。
「……頼みがある」
全員静かになる。
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「Eクラス方式を教えてくれ」
沈黙。
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「は?」
柴崎が固まる。
「A組が?」
「ああ」
相沢は真顔だった。
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「もう分からないんだ」
静かな声。
「どう恋愛すればいいのか」
その言葉は。
多分、本音だった。
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A組は。
ずっと“正解”を教えられてきた。
でも。
“好きになる方法”は誰も教えてくれなかった。
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一ノ瀬が静かに前へ出る。
そして。
少し笑った。
「難しくないよ」
「……え?」
「一緒にご飯食べたり」
「話したり」
「失敗したり」
優しい声。
「そういうのから始まるから」
A組生徒たちが静かに聞いている。
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その時。
松永が真顔で言った。
「あと焼きとうもろこし」
「絶対入れるなお前」
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だが。
A組女子が少し笑った。
その瞬間。
空気が少し変わる。
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すると。
教師が乱入。
「よぉぉぉし!!」
嫌な予感。
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「本日より!!」
黒板設置。
《A組・Eクラス共同生活体験》
「早ぇぇぇぇぇ!!」
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「待て!!」
A組側が混乱する。
だが。
Eクラスは慣れていた。
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「まあ最初は嫌がるよな」
「俺らもそうだったし」
完全に先輩面。
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その頃。
中央恋愛省。
《A組Lスコア依存率低下》
《感情共鳴指数上昇》
研究員たちが騒然としていた。
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「ついにA組まで……!」
「エリート教育崩壊です!」
だが。
白鷺優斗は静かだった。
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「崩壊ではありません」
小さく呟く。
「“人間らしい恋愛”へ戻っているだけです」
それは。
恋愛省特別監察官としては。
あまりにも異端な言葉だった。
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一方。
夕方。
農地。
A組生徒たちがぎこちなく畑を耕している。
「……難しいなこれ」
「だろ?」
柴崎が笑う。
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すると。
A組女子が、小さく笑った。
「なんか……」
「ん?」
「こういうの、初めてかも」
静かな声。
評価も。
点数も。
順位もない。
ただ誰かと一緒に作業する時間。
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その瞬間。
《感情共鳴指数》
《A組安定率上昇》
監視ドローンが光る。
「だから空気読めぇぇぇぇ!!」
今度はA組まで一緒にツッコんでいた。




