第十九話 「学園祭後夜祭」
学園祭は終わった。
だが。
神奈川県立統合学園には、最後のイベントがある。
――後夜祭。
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夜。
校庭中央。
巨大キャンプファイヤーが燃えていた。
炎が夜空を赤く照らす。
音楽。
笑い声。
提灯の灯り。
恋愛社会らしく、後夜祭は“カップルイベント”として有名だった。
《恋愛適性最終測定》
《ペアダンス》
《感情同期観測》
「最後まで国家が恋愛管理してくるの怖ぇよ……」
俺が呟くと、一ノ瀬雪乃が小さく笑う。
「でも今日は、少しだけ普通の学園祭っぽい」
確かにそうだった。
⸻
Eクラスは完全にお祭り状態。
「売上一位ぃぃぃ!!」
柴崎が酒でも飲んだみたいなテンションで暴れている。
「焼きとうもろこし革命成功!!」
「だから革命言うな」
松永はまだ焼いていた。
「後夜祭需要」
「お前ほんとブレねぇな」
⸻
その時。
キャンプファイヤー近くで歓声が上がる。
「うおっ!?」
「マジ!?」
見ると。
柴崎と朝霧がいた。
距離が近い。
いや。
近いどころじゃない。
「……え」
数秒後。
柴崎が勢いのまま。
朝霧へキスしていた。
Eクラス停止。
俺も停止。
そして。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
Eクラス大爆発。
「やりやがったぁぁぁ!!」
「漁業班ァァァ!!」
「国家反逆キスだ!!」
「その呼び方やめろ!!」
柴崎が真っ赤になっていた。
一方。
朝霧も顔を真っ赤にしながら笑っている。
「……もう、急すぎ」
「ご、ごめん!!」
「でも」
少し照れながら。
「嫌じゃない」
再爆発。
「うおおおおおお!!」
Eクラスが死ぬほど盛り上がっていた。
⸻
一方その頃。
少し離れたベンチ。
松永と瀬名が静かに座っていた。
騒がしくない。
でも。
ふと見ると。
二人は自然に手を握っていた。
「……」
「……」
会話は少ない。
だが。
空気は穏やかだった。
瀬名が少し笑う。
「松永くん、手熱いね」
「炭火触ってたからな」
「理由そこ?」
松永は真顔だった。
「でも、離したくない」
瀬名が少し目を丸くする。
そして。
「……うん」
小さく握り返した。
⸻
一ノ瀬は、その光景を静かに見ていた。
「……いいな」
ぽつりと呟く。
「何が」
「みんな」
炎を見つめながら言う。
「ちゃんと好きって分かってる」
静かな声。
「私、まだよく分からない」
演技ではない。
本音だった。
⸻
その時。
Eクラス連中がこっちを向く。
「九条ぉぉぉ!!」
「嫌な予感」
「お前らもなんかしろ!!」
「なんで!?」
「空気読め!!」
「後夜祭だぞ!!」
国家よりこいつらの圧が怖い。
⸻
一ノ瀬が少し笑った。
「……どうする?」
「どうもしない」
「逃げる?」
「逃げたい」
すると。
一ノ瀬は少しだけ考える。
そして。
そっと。
俺の制服袖を掴んだ。
「……今日は」
小さな声。
「少しくらい、恋人っぽくしてもいいかもね」
心拍が上がる。
分かる。
演技じゃない。
今のは、本気で照れている。
だから。
俺の方まで少しだけ動揺した。
⸻
その瞬間。
《リアルタイムLスコア更新》
モニターが点灯する。
Eクラス生徒たちの数値が上がっていく。
柴崎。
朝霧。
松永。
瀬名。
そして。
俺と一ノ瀬も。
ざわめき。
白鷺優斗が遠くから見ていた。
炎の向こう側で。
静かに。
「……感情による数値変動」
小さく呟く。
「やはりEクラスは、異常だ」
だがその顔は。
どこか少しだけ楽しそうだった。




