午後にはお茶の会が開催されます
翌朝。
距離を考えると有り得ないほどの短時間で街を走り抜け、華麗に辻褄を合わせてくれたメレディスに感謝を捧げつつ、シェリルは朝食の席に着いた。
フレディおよびおば様の様子から鑑みるに、どうやら、バレてはいないようだ。
本当に何か困ったことになったときには、メレディスに助けを求めよう、などと不謹慎を通り越して不吉な考えを抱きつつ、彼女は昨晩の出来事を思い返し、その要点はと言えば。
「フレディ」
「はい」
よく眠れたとはいえそうもない顔色ながらも、妙に穏やかな表情でカップを傾ける彼に、そんな言葉をぶつける気になったのは、ただただ、おもしろそうだから。
多少、大義名分的な理由をくっつけるとすれば、お兄ちゃんを独り占めできなくて寂しい、見たいな感情に由来する八つ当たり、とも可能ではある。一応は。
「すてきな恋人が見つかったのね」
瞬間。すべての音がなにか得体の知れないモノに吸い込まれ、消えたような沈黙が走り抜けていった。テーブルのこちら側で、おば様が口に手を当てる。
驚き、だけどそれは楽しげな。
がちゃん、などと言う不協和音を立てて、カップをソーサーにぶつけつつ、フレディは期待通りの反応を見せてくれる。
「シェリー、どうして……!」
混乱するのはこちらばかりだなんて、あまりにも不公平すぎる。オリジナル度の濃い根拠にがっしりと支えられた自信を味方に、シェリルは非常に可愛らしくお兄ちゃんの顔を覗き込んだ。
「いつ、私を紹介してくれるの? お兄ちゃん」
「……今日の午後、お茶に招こう」
「彼女の名前教えて。フレディ」
知っているのに聞いてみたのは、決して追い討ちをかけたいだけではなく、フレディがその名前を口にするときの顔を見てみたいと思ったから。
いろいろな人が呼んでいたけれど、まだ一度も彼の口からは聞いていない。
いったいどんな、顔や声や、それから。
「メアリーアン」
想像していた以上に、呪文に近く聞こえる言葉だった。なににつけても、とにかく想像なんかは超越してしまうものなのだと、シェリルは結論を出してみた。
こんなに、誰より長い時間を一緒に過ごしてきた私に、こんなことが起こるのね。不思議。こういうことも、ある。
幻よりもはるかにはっきりと、あの人の存在を感じるなんて。
冷めたカップを改めて口にと運びながら、魔法を使う恋する青年は、観念したようにつぶやいた。
「おばさまのケーキも、食べ頃だろう」




