15.空から降ってきた彼女1
ぴしっ、ぱらぱら、ばらばら、がんごんっ、どんッ。
天井を見上げ、大きなものの落下を見て、とんだヴァイオリンをつかまえた後、目を閉じてしまっていたらしい。
シェリーは恐々、目を開いた。
目を閉じる前の瞬間が浮かぶ。伸ばされた自分の手と、間近にヴァイオリンを。少しだけの過去から、拍を置いて移動した現在では、シェリーは胸に楽器を抱え持っていた。
逆さま……。けれど、無事よね。
しっかりと持ちたいけれど、ぎゅうと抱きしめるのも壊してしまう結果となりそうで怖い。
落としてしまいそうで、身動きが取れない。どこをどう掴んでいいものなのかわからないのだ。楽器は繊細なものだと聞いているし、むやみにいじってはいけないと厳しく教育されてもいる。
「これは、私は、どうしたらいいものかしら」
姿勢自体おかしな格好のまま、シェリーは持ち主の姿を探して首を回した。
扱いに長けている人物が側にいるのだから、押し付けてしまえばいい、ではなく、本人に返せば良いのだ、大切なものなのだから。
けれど回した先で見たものに驚きすぎて、途端にヴァイオリンの首を強く握りしめてしまった。彼が抱えているものは、大きさと言い重さと言い、ヴァイオリンの比ではない。投げ出された手の白いひらと、曲がった足の履く茶色いブーツを見て、シェリーは制御なしで叫んでいた。
「だっ、大丈夫? ななんで? 今落ちてきたのって、人だったの? なんで空から人が降って来るの?!」
「ともかく」
「えぇ」
「ソファのケースを下ろして、場所を空けてくれないか」
「そうね、そうよね。えぇ。あ、でも私これを、これ、ヴァイオリンをどうしたらいいの?」
「テーブルの上に置いて。あぁ、大丈夫。それでいい」
再び扱いに注意をはらって、シェリーはヴァイオリンをテーブルの上に寝かして置いた。
ゆっくりと片手ずつ離して、じっと見つめる。微かにも動かないことを確認すると、やっと身を返した。
ソファの上に蓋を閉めて置かれている黒い皮の箱を抱えるように持ち上げて、それも丁寧に床に下ろした。他に置けそうな場所は見つけられなかったのだ。
気付き、テーブルの下から転がっている弓を拾い上げる。そしてゆっくりと立ち上がり、ヴァイオリンと並べて置いて、
――勢いをつけてくるりと振り返る。
彼が『彼女』を、ソファに寝かしているところだった。
「その子、天使かしら。空から登場するなんて」
まだ信じられない思いが消えない。消えるわけもなく、彼女は存在を続けていた。もちろん。
……「人間だよ」
ついて出た言葉に返事が返った。囁くようなその声に合わせ、シェリーは足音を立てないように慎重に、彼の横に座り込んだ。
ひざまずいている彼は、あまり動揺していないように見える。一人で慌て騒いでしまったようで、恥ずかしいような気持ちだ。あろうことかこの自分が、誰より事態を驚くなんて。
そして落ち着きを取り戻せば、持ち前の好奇心が主張し出した。体を伸ばして、天使ではない彼女の顔を覗き込み、
「リース」




