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第8話『揺れる水面、咲の告白』

文化祭まで、あと二週間。


校舎中が慌ただしさに包まれはじめるなか、俺たち2年B組も出し物の準備で教室がざわついていた。


「でさー、うちのクラス、結局メイド喫茶に決まったって知ってた?」


「男子のテンションだけが無駄に高いよな」


「お前も嬉しそうだったけどな」


澪が鋭いツッコミを入れてくる横で、俺は苦笑いしながら机を並べていた。

一応、俺は飾り付け班になっていて、ダンボールを切って看板の下書き中。


「光、そこちょっと線曲がってるよ」


「マジか、ありがとう」


澪が無言で定規を渡してくる。その手の温度に、昨日のことが思い出されて、少しだけ鼓動が速くなる。


──あの放課後、俺は確かに澪に言った。「そばにいてほしい」と。


でもそれは、“恋”って言葉からは、まだちょっと遠い曖昧な感情だった。


「……光くん、少し、いい?」


そのときだった。

教室の後ろから声をかけてきたのは──咲だった。


「咲……?」


「ちょっとだけ、廊下、来てくれる?」


俺が澪を見ると、彼女はほんの一瞬だけ驚いた表情を見せたが──すぐに目を逸らした。


「……いってきなよ」


その声が少しだけ寂しそうに聞こえたのは、気のせいじゃなかった。



廊下は、人通りが少なく、静かだった。

雨上がりの湿気が窓にうっすらと残り、午後の光がぼんやりと差し込んでいる。


「……光くん、昨日の放課後、澪ちゃんと一緒に帰ってたよね」


「見てたのか」


「……うん。少しだけ、ドアの外で」


咲はそう言って、少し恥ずかしそうに笑った。でもその笑顔は、いつもよりどこか弱々しい。


「私ね、ずっと言おうか迷ってたの。でも、もう言わなきゃって思った」


「……咲?」


「好き、なの。光くんのこと。ずっと前から」


言葉が、耳に直接響いた。


「中学の頃から、ずっと見てた。鈍感で、バカで、でも、優しくて。いつも誰かのことばっかり気にして、自分のことなんて二の次で……」


「……」


「ずっと隣にいたいって、思ってた。友達じゃなくて、ちゃんと……彼女として」


咲の目が、まっすぐに俺を射抜く。


俺の中で、何かが揺れた。

澪に伝えた「そばにいてほしい」という気持ち。

綾音にぶつけられた「誰か一人を選ばなきゃいけない」という言葉。


──なのに、俺はまた、言葉に詰まる。


「……ごめん、すぐに答えは出せない」


「……うん。そんな気はしてた」


咲は無理に笑った。優しい笑顔。

でも、そこにあるのは紛れもない「悲しみ」だった。


「でも、光くん。私は待たないよ」


「え……?」


「だって、待ってばかりの恋なんて、寂しすぎるから」


そう言って咲は、俺の腕を軽く掴んだ。


「次、文化祭の日。私がもう一度、光くんに告白する。──それまでに答え、出してね」


その言葉を残して、咲は廊下の向こうへと歩き去っていった。


立ち尽くす俺の胸の中には、答えの出ない“好き”が、いくつもいくつも重なっていた。



---


「面白かった!」




「続きが気になる、読みたい!」




「今後どうなるの!!」




と思ったら




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