第5話『踏み出す勇気、隠された想い』
次の日の朝。
校門の前で、俺は見慣れた顔に呼び止められた。
「おはよう、光くん。……今日、ちょっと話せる?」
咲だった。制服のスカートが風に揺れて、胸の前でそっと手を組むその姿は、どこか決意に満ちていた。
「……うん、大丈夫」
咲は微笑んで、俺の隣に並んだ。
登校する生徒たちの視線を少し気にしつつ、俺たちは並んで歩き出す。
「ねぇ、昨日……ベンチにいたよね。校舎裏」
「……見てたの?」
「うん、声かけようか迷ったんだけど……誰かと話してたから。……先輩、だったのかな?」
「相原先輩。……ちょっと、言われたんだ。“選ぶのは自分だ”って」
「……ふふ、それっぽいこと言いそう」
咲は小さく笑う。
「私もね、決めたの。もう遠慮しない。光くんが誰を選ぶかなんて、そんなの私にはどうしようもないけど……でも、少なくとも、私は本気で“好き”って伝えたい」
「咲……」
「ずるいの、知ってる。でも、逃げたくないから」
そう言って咲は、俺の袖を少しだけ掴んで、ふわりと微笑んだ。
(……この笑顔に、俺は何度救われてきたんだろう)
だけど──
「おはよ、光……」
咲と別れて教室に入ると、今度は澪が待っていた。
その顔には、少しだけ焦りが滲んでいた。
「……咲ちゃんと、一緒だったんだ」
「うん、たまたま」
「……ふぅん、そうなんだ。……ね、今日、放課後って空いてる?」
「え、うん……特に予定は……」
「なら、ちょっと付き合ってよ。……お願い」
その声は強くないのに、断れない雰囲気を纏っていた。
(今度は……澪か)
---
放課後。
俺は澪に連れられて、電車に乗って少し離れた街まで出ていた。
「えっ……映画?」
「うん。恋愛モノ、興味ないかもしれないけど……」
「いや、全然いいけど……」
(なんで……こんなに急に?)
上映中、澪は何も言わなかった。
ただ、たまに俺の顔をちらっと見たり、ポップコーンをそっと差し出したり、静かな距離感を保っていた。
映画が終わった帰り道。
駅のホームで、澪がぽつりとつぶやいた。
「……あの映画、昔、光と一緒に見たやつの続編なんだよ」
「えっ? ……あ、あの夏休みの時?」
「そう。小学生の頃にさ。……覚えててくれたら、嬉しかったけど、まぁ無理だよね」
「いや、覚えてる。……あの時、泣いてたよな。ヒロインが振られるシーンで」
「そ、そんなこと言わなくていいの!」
澪が顔を赤くする。
「……でも、あの時思ったんだ。“誰かの一番になれる人”になりたいなって」
「……澪」
「だから、私も逃げない。……光に、ちゃんと、好きになってほしい」
その目は真剣で、でもどこか泣きそうで。
──その想いに応えられない自分が、情けなく思えた。
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帰り道。
スマホを見ると、相原先輩からメッセージが届いていた。
> 「君、動き出したね。よかった。
……でも、今のままだと、誰も救えないよ」
俺は思わず、スマホを強く握った。
(誰かを選ぶって、こんなに苦しいのか……)
でも、選ばなきゃいけない。
それが、俺自身のためであっても──彼女たちのためでもある。
---
──そして、その夜。
咲から1件のLINEが届いた。
> 「今度の日曜日、空いてる? デートしよっか?」
次の選択肢が、もう目の前に来ていた。
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