第19話『秘密のメッセージ、揺れる心』
翌朝、教室の机に座ると、いつもより周囲が静かに感じた。
けれどそれは気のせいじゃなかった。
俺の机の上に、白い封筒が置かれていたのだ。
──差出人の名前はない。
まわりを見渡しても、誰も気にしていないふりをしているようで、逆に不自然だった。
そっと封を切ると、便箋が一枚。
筆跡は丸く、丁寧。
> 『あなたが誰を選ぶのか、ちゃんと見届けます。
でも、もし傷つけたら、私は許しません。』
読み終えた瞬間、指先が少し震えた。
──誰だ、これを書いたのは?
「おはよう、光くん!」
咲がいつもの調子で笑顔を見せる。
でも、その笑顔が今日だけは少し“演じてる”ように見えた。
俺は、とっさに封筒をカバンに隠した。
「お、おはよう」
「元気ないね? 昨日の澪ちゃんとのこと、まだ気にしてる?」
「いや……」
言葉が喉で詰まる。
便箋のことを話そうと思ったけれど、咲の笑顔を崩したくなくて黙った。
──それが、また一つのすれ違いを生むとも知らずに。
*
その日の放課後。
澪は、図書室で本を読むふりをしていた。
俺が来るのを、ほんの少しだけ期待しながら。
でも、俺は来なかった。
──いや、正確には図書室の前まで来て、引き返したのだ。
咲が、昇降口で待っていたから。
「ごめん、待たせた?」
「ううん。ね、今日も一緒に帰ろ?」
咲が手を差し出す。
俺は、自然とその手を取った。
けれど、昨日のような温かさが、なぜか今日は指先まで届かなかった。
*
帰り道、咲がぽつりと呟いた。
「私、ね。好きって言われるの、ずっと夢だったの」
「……うん」
「でも、ほんとのところ、言葉よりも行動のほうが……信じたくなる時もあるんだよね」
咲がふっと笑う。
「だから、光くん。ちゃんと私の手、握っててね。ぐらぐらしてると、不安になるから」
そのとき、俺はようやく気づいた。
──この手は、試されている。
俺がどちらを向くのか。
本当に咲だけを見ているのか。
けれど、胸の奥ではまだ、あの便箋の文字が消えていなかった。
> 『もし傷つけたら、私は許しません。』
*
そして、翌朝。
俺の机の中に、もう一通の手紙が入っていた。
> 『選ばれなかったほうの気持ちも、ちゃんと知って。
好きって、簡単に言わないで。』
──筆跡は前と同じ。
けれどその文字は、どこか怒っていた。
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