第17話『秘密の朝と、手をつなぐ勇気』
朝、校門前。
いつもより15分早い登校。
空は薄く明るく、通学路を行き交う生徒はまだまばらだった。
咲は、すでにそこにいた。
制服の上からカーディガンを羽織って、両手を組んで待っている。
俺を見つけると、少し跳ねるように近づいてきた。
「光くん、来てくれてありがとう」
「当たり前だろ。約束したしな」
「ふふ、うれしい」
咲は小さな紙袋を俺に差し出した。中には、かわいくラッピングされたクッキー。
「これ……作ったの。昨日、夜なべして。ちょっとだけ、お礼がしたかったの」
「お礼?」
「うん。昨日、ちゃんと……気持ち、言ってくれたから」
俺は言葉に詰まりながら、クッキーを受け取った。
「ありがとな。……咲」
そう呼ぶと、咲の耳がほんのり赤くなった。
「もう一個、お願いしていい?」
「ん?」
「今日、放課後……一緒に帰ってくれない?」
「もちろん」
自然にそう返せた。
*
放課後、昇降口前。
咲と一緒に歩く帰り道は、前より少しだけ特別に感じた。
そして、ふと横を見ると、咲が黙ってこちらを見上げていた。
「……どうした?」
「……えっとね」
咲は、おずおずと俺の手に視線を落とした。
「手……つないでもいい?」
……その一言が、胸に響いた。
「……いいよ」
俺たちは、手を繋いだ。
最初はぎこちなかったけれど、少しずつ、指が絡まって、温度が伝わってくる。
それは、はっきりと“恋人”になった実感だった。
でも──。
背後から、誰かの視線を感じた。
振り返ると、街角の本屋前。
制服姿の女の子がこちらを見ていた。
「……澪?」
少し驚いた顔をしたあと、彼女は目を伏せて、ゆっくりと歩き去っていった。
咲が、手を強く握った。
「……大丈夫?」
「うん……でも、気になるな。澪……」
風が吹いた。
手のぬくもりだけが、確かにそこにあった。
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
あと、感想も書いてくれるととても嬉しいです!