第14話『修羅場は放課後の教室で』
放課後の教室。
まばらに残る生徒たちのざわめきのなかで──俺の周囲だけ、空気が張り詰めていた。
「……咲、言いたいことがあるのは分かるけど、今ここで言うのはやめようよ」
澪の声は震えていた。怒りとも、悲しみともつかない感情が混ざっている。
「なんで? 私たち、もうそれぞれの気持ち伝え合ってるんでしょ? だったら…」
咲の声は淡々としていた。でも、強くて、どこか切実だった。
「……私は、まだ光くんに“返事”なんて求めてないよ」
「私は、ただ“答え”を聞きたいだけ。あんたと競う気なんて、最初からない」
「……っ」
咲は俺の目を見て、言った。
「私は、光くんのことが好き。ずっとずっと前から」
「それだけ。……それ以上も以下もないよ」
教室に、沈黙が落ちた。
俺は、何も言えなかった。
澪の顔が俯く。
咲はゆっくりと鞄を取って、ドアの方へ歩き出した。
「……明日から、少し距離置くね」
「光くんが、誰をちゃんと見てるのか、私も冷静になりたいから」
そう言って、咲は教室を出ていった。
その背中は、いつもより少しだけ、小さく見えた。
「……光くん」
澪が俺の袖を引っ張る。
「私は、どんな形でも、光くんの“そば”にいたいって思ってるから」
「……ありがとう」
言葉にするのが怖かった。
言葉にした瞬間に、何かが壊れてしまいそうで。
*
帰り道。
綾音先輩からメッセージが届いた。
> 「選ぶのはあんた。でも、“選ばない”という選択肢が一番残酷よ?」
それが、先輩らしい言葉だった。
*
次の日。
咲は学校を休んだ。
「……熱らしいよ」
と、クラスメイトが言っていた。
教室の席がぽっかり空いていて、
そこに咲の明るい声や笑顔がないことが、やけに寂しかった。
*
その放課後。
俺は咲の家の前にいた。
澪にも、先輩にも、何も言わずに──ただ、来た。
チャイムを押して、出てきたのは、咲だった。
すこし顔色が悪かったけど、それでも、俺を見て微笑んだ。
「……なんで来たの?」
「会いたかったから」
その言葉は、自分でも意外なほど自然だった。
「……ずるいよ、光くん。そういうの」
「ごめん。でも、ちゃんと話したい。俺の気持ちも、向き合いたいんだ」
咲は黙っていた。
風が吹いて、俺の髪を揺らす。
それが、今までの曖昧な日々を吹き飛ばしていくみたいで──
俺は、一歩、踏み出した。
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