表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第10話『雨の日の約束、三人の選択』

「……本当に、バカね。あんたって」


綾音の涙を見たあの放課後から、俺の頭はずっとぐるぐるしていた。


咲の告白。

澪の沈黙。

綾音の涙。


それぞれの「好き」が、俺にのしかかってきて、でも、俺には答えが出せなかった。



その日の放課後。

雨が降り出した。


校舎裏の、誰も来ない場所。

そこにいたのは、澪だった。


傘も差さず、制服が濡れていくのを気にせず、ただ空を見上げていた。


「……風邪、ひくぞ」


俺が声をかけると、澪はゆっくりこっちを見て、微笑んだ。


「……光はさ、どうして誰かを選ばないの?」


「……それは……」


「優しすぎるんだよ。全員を傷つけたくなくて、誰にも触れない。でも、それが一番、残酷なの」


雨音の中で、澪の声はやけにハッキリと届いた。


「……私はね、ずっとあんたの隣にいたんだよ?」


「うん」


「咲ちゃんが可愛くて、綾音先輩が完璧で……私なんか、影にしか見えなかったかもしれない。でもね」


澪は一歩、俺に近づいた。


「それでも私は、光が笑ってくれるのが嬉しくて……同じ景色を見てるだけで良かったのに……」


「……澪……」


「咲ちゃんがあんたを好きになった日、気づいたの。私はもう、隣にいるだけじゃいられないんだって」


澪は、震える指先で俺のシャツの袖をつかんだ。


「……選ばれなくてもいい。だけど、ちゃんと私を“ひとりの女の子”として見て。じゃないと……前に進めない」


その目には、涙が浮かんでいた。

でも、泣いてなんかいなかった。

澪は、ちゃんと前を向いていた。


「……ごめん。俺……」


答えかけたそのとき、携帯が震えた。


差出人は──咲だった。


> 「屋上にいる。話したいことがあるの」





雨の中、傘を差して階段を駆け上がった。

澪の背中が遠くなっていく。

でも、立ち止まることはできなかった。


屋上には、咲がいた。


傘を持たず、ずぶ濡れのまま立っていた。


「……ごめんね、急に呼び出して」


「咲……」


「光に、最後に伝えたくて」


咲は制服のポケットから、小さな手紙を取り出した。


「これ、読んで」


震える手で受け取ると、手紙の封はすでに切られていた。

それは、俺への想いを綴った手紙だった。


──好き。

──ずっと一緒にいたい。

──でも、叶わなくてもいい。あなたが幸せなら、それでいい。


その優しい文字に、胸が締めつけられた。


「光。私は……もう、待たない」


「……え?」


「今日、答えが欲しかった。でも、それってきっと、光にとって酷なんだよね」


咲は微笑んだ。でも、その笑顔は悲しかった。


「だから、これで最後。私の“好き”は、ここに置いていく。……あとは、光が決めて」


「咲……!」


引き止めようとした手は、届かなかった。


彼女は雨の中に、ゆっくりと消えていった。


残された俺の手には、あたたかい文字が詰まった手紙と──答えを出さなかった後悔だけが残った。



あの日、誰かを選ぶことの重さを、俺は初めて知った。


雨が止んだ空の下で、俺はやっと気づきはじめる。


俺の中で、誰の顔が浮かんでいたのかを──。



---


「面白かった!」




「続きが気になる、読みたい!」




「今後どうなるの!!」




と思ったら




下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。




面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!




ブックマークもいただけると本当にうれしいです。




何卒よろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ