1話 あのクソ無課金プレーヤー
『スタ……スタ……スタ……』
空虚な靴音が誰もいない夜の公園に響く。
『スタ……スタ……スタ……』
伸ばした無気力な手がブランコの鎖に触れ、音が出る。
『キリリ、キリリリ』
直後——
『ガシャン‼』
——大きな音が公園中に響き渡る。
『キーコー、キーコー』
しばらくの間、ブランコは揺れ続ける。
「はぁーーー」
やるせない深いため息が周囲に広がっていく。
ん……あれ……?
俯いていた俺は顔を上げて、辺りを見回す。
夜……公園……ブランコに座っている俺……
現状を認識した俺は、だんだんと嫌になってきて、ため息が漏れる。
「はぁーーー」
またここに来てしまったのか……
さっきまでショッピングモールにいたというのに……ここまで来た記憶がまったくない。
どうして、この俺がこんな貧乏人のためのちっぽけな公園なんかに、何度も来てしまうんだ……
『ぐぅぅぅ~~~……』
あー……腹、減った。
最悪だ。マジで。
ポケットからスマホを引っ張り出して、震える指で画面を光らせる。
頼む……! って祈るような気持ちで、電子マネーの残高をチェックすると――
『4円』
……笑えねぇ。
これじゃー、ジュース一本買えやしねぇ。
くっそー、なんで俺がこんな目に……
『『『コロコロ~♪』』』
なんか、その虫の声すら、今の俺をバカにしてるみたいで、無性にムカついてきた。
「あ"あ"あ"ーーーっ! うるっせぇんだよ! 少し黙ってろ!」
『『『コロコロ~♪』』』
「……ッチ」
自分の有様を、虫さえ煽ってくるように感じた。
拳が勝手に強く握られていく。
……いや、虫にキレてどうすんだよ。
ムカつくのは、こいつらじゃねぇ。
──あいつだ。
俺をこんなドン底に叩き落とした、元凶。
俺の世界を、全部ぶっ壊しやがったクソ野郎。
家も、金も、居場所も、プライドも。
全部、あいつが奪った。
俺が今、こんな吹きっさらしの公園で夜を明かそうとしてんのも。
腹が減って死にそうなのも。
どうしようもなくイライラしてんのも。
どこにも帰る場所がねぇのも。
ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ……あいつのせいだ‼
絶対に許さねぇ。
あのクソ無課金プレーヤー