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序章―彼女の独白―




【……世界を構成する名称(ナマエ)


 世界に在るのは四つの海と、三つの大陸、二つの島。五つの大神殿、一つの大聖堂。


 神秘の碧海〖翡翠海(トゥリン)〗、戦禍の渦潮〖紅海(コウカイ)〗、青き大海〖スティルヴィア〗、黒き最果て〖死海(デットエンド)〗。

 北方大陸〖ゴルドワナ〗。機械技術と科学の発展都市が治める、氷に鎖ざされた極寒大陸。

 南方大陸〖サーザ〗。魔術と法術に守護さ(まもら)れた、温暖気候の巨大大陸。

 浮上の大陸〖理想郷(ガンディア)〗。四海の者は行く(すべ)を持たぬ、戦争(あらそい)の無い天空大陸。

 囚人の島〖監獄島(カンゴクトウ)〗。大陸全土の罪人の収容場。生きてはおろか、死んでも出られぬ虜囚の島。

 修道女の島〖エヴァンティユ〗。四海の何処かに在るとされる、謎に包まれし秘密の島。

 大神殿は大陸に五つ。北に一つ、南に二つ、天空に一つ。そして、囚人の島に一つ。

 大聖堂は一つきり。修道女の島に一つ。


 世界には、抹消された大陸が(ふた)つ存在する。

 それは闇を標すモノ。異世界へ繋がるとされている、世界の最果て。幻の双大陸。

 四つの大陸、一つの島で構成される〖カース・ラー大陸〗。〖東のアルバ〗、〖西のイルギリ〗、〖南のエルゼレ〗、〖北のオルド〗と大陸が並び、中央には〖ウルヴ島〗。未だ魔王の支配を受ける、混沌の象徴。漆黒の大地。

 一つの大陸、一つの島で構成される〖カース・ルー大陸〗。大陸の〖本州〗、島の〖離州〗で、小国同士が争い領土を奪い合う、混沌の象徴。戦乱の大地。


 世界の全てを知る者は、〝塔〟の番人、魔女達だけ……】







 この大陸は、魔族の脅威に晒されている。魔族とは、獰猛で危険な存在である魔物を使役する者達の総称であり、事実人々が魔族の使役する魔物に襲われる被害は多い。

 この大陸には、精霊が存在する。魔物と違い全ての人に見える訳ではないが故に、精霊を見る事の出来る人々は〝祝福を受けし者〟と呼ばれる。その祝福を受けし者達の中で、〝精霊使い〟と呼ばれる人々がいる。精霊使いとは精霊と契約する事を、精霊自身から赦された存在である。契約を交わした精霊使い達は精霊術を行使出来るという権限を与えられ、この精霊使い達が精霊術を行使して、魔物を使役する魔族達に対抗している。

 此処は、そんな世界。


――……私は精霊なんて見たことないけど……――


 精霊なんて、今世どころか前世でさえも見た覚えがない。そう、前世。私は朧気ながら、前世の記憶を持つ転生者である。しかもただの転生者ではない。現代日本からこの異世界に転移を果たし、暫く生活していたような気もするが、何らかの原因で死亡。その上での転生だ。正直欲張り過ぎだと思う。そもそも記憶が曖昧で、転移してからの生活やら死因やらは覚えていないという残念具合。

 いや、今はうろ覚えの記憶はどうでもいい。問題は精霊だ。私は精霊なんて見た事がない。見える人曰く、人間と同じくらいその辺徘徊しているらしいのだが。


――……いや、精霊が徘徊って何……?――


 何度も言うが、その辺彷徨く精霊なんて見えない。ていうか精霊が見えないんだから、精霊契約だって出来ない。精霊契約出来ないのに、精霊術なんて使える訳がない。だって私精霊見えないから!

 何故私がこんなに精霊問題で混乱しているのか。それは、声が聴こえるからだ。耳許で囁くように、優しい少女めいた声で、


『……ワタシが護っテあげル……』


 いや、怖過ぎる。いくら優しい声でも怖い。護るって何から?寧ろこの姿無き声の主から護って欲しいんですけど?!

 最初は気の所為だと思っていた。〝声〟というよりは〝音〟という感じで空耳かな?と思っていたら、音はその内声になった。それでも、何を言っているのかまでは解らなかった。やがて、声は耳許で囁くようになり、私はやっと何を言われているのかを理解した。だが言われている言葉は理解出来ても、言っている意味は解らない。本当に、切実に、この声の主は何者なのかを知りたい。


 今世の私は孤児である。この世界での孤児は、貰い手が見つかるまで世界の唯一神である創世の女神アイラを祀る神殿に預けられて、そこで育てられる。もし貰い手が見つからないまま働ける年齢になれば、神殿を出て自立する。その際は神殿側から仕事先を紹介されたり、斡旋してもらえたりもする。私は引き取り手に恵まれず、自立する年齢に達した時に神殿を預かる司教様から、神殿の手伝いを紹介された。なので、私の就職先は神殿だ。ちなみに仕事の内容は、孤児達の世話や神殿の掃除に炊事・洗濯・買い出し等。ヘルパーさんみたいだ。いや、ヘルパーさんの仕事とかした事ないから違うかもしれないけど。


 謎の音が声として聴こえるようになった日、私はすぐに司教様に相談をした。司教様も祝福を受けし者――精霊使いだからだ。その結果、声の主は精霊かもしれないというお答えを頂いた。司教様と契約を結んだ精霊を含め、他の精霊も視認すら出来ない私が、その精霊の声だけ聴こえるのは不可解だという事だったが。

 それに司教様は、自分にも見えないという事が尚更不可解だと言っていた。通常、精霊の見える者は、全ての精霊を見る事が出来る。だから、声だけ聴こえるというこの現象が、本当に精霊が関わっているのか判らず、声の主が精霊の仕業であるとは断言出来ないそうである。

 言い添えておくと、精霊がその辺徘徊していると言ったのはこの司教様だ。もっと他に言い方はありませんでしたか?司教様?


『……必ズ護ってアげるカら……』


 だから怖いって!その言葉の意味をそろそろ教えては頂けないでしょうか?後、姿も見せて頂けると大変ありがたいのですが……!?




 そう思った瞬間だった。視界が眩い純白に染まって……、代わりに意識は暗い漆黒に沈んでいった……。




彼女

転移→転移先で死亡→転移先に転生。

死んだと思ったら転移して転移先の異世界で死亡し転生した事は覚えているが転移先(前世であり過去)での生活や死因は忘却している。

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