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要編  8 二人の進路



  シーン8 二人の進路



 国防大学では一般人を校内に招いて年に何回か、在学生による様々な行事が行われている。いくつか上げるとカッター競技大会、遠泳、開校記念祭、断郊競技会、訓練展示、演劇祭があり、その中でも人気の高い行事の1つが、開校記念日の最終日に行われる棒倒しだ。



 大隊ごとに敵味方に分かれ、さらに大隊の参加者は攻撃と守備の2群に別れ、守備は円柱棒が倒されぬよう死守し、攻撃は敵の円柱棒を倒すためだけに死闘するというルールだ。実に男臭い競技である。肉弾戦は少々、若干、時々、荒っぽくなることもある。



 毎年この行事を観戦しようと2万人強の観客が大学のグランドに集まり、要は第1学年の時から、宗弥は第2学年の年から、この競技に参加していた。



 参加者は大隊のないから200人が選抜され、第1大隊は要が第1学年の時に総合優勝し、そこから3連覇中だ。宗弥は医学部課程で、大学卒業まで6年間の在学になる。したがって要と宗弥の卒業年度は同期卒になるわけで、要が第4学年、宗弥が第6学年の卒業の年、勝てば棒倒し4連覇が叶う決勝戦であっけなく惨敗する。



 攻撃先鋒の1人が転び、その一瞬で攻撃のタイミングがズレ、波状攻撃がうまく機能しない間に味方の棒が倒された。



 要はその年の棒倒し総長を務め、宗弥は副総長として2人で指揮を取り、作戦立案、他の大隊の偵察、敵の誰がどういう特性を持っているか、その1人1人がどんな役割の任がこなせるのか、そんな細かなところまで熱心に調べ上げていどんだ決勝戦での惨敗だった。



 終了後、要と宗弥は宿舎に戻り、項垂うなだれて悔し涙を流す。



 要は準備を怠らず、挑んだ戦に敗北した事でさくに溺れたと痛感し、宗弥を誘って優勝大隊の校内練り歩きを、宿舎の玄関でいましめとする為に見ることにした。2人で玄関の階段に座り、練り歩きの雄叫びが遠くから聞こえて来た頃、1人の男が要と宗弥に話しかけて来た。



 自分たちの前に立った男を、要と宗弥は起立して迎える。


 その佇まいに、ただならぬものを感じたからだ。



 男は要に視線を向けると「君が第1学年の時から」と言い、宗弥に視線を移して「君が第2学年の時から」と丁寧に2人の顔を見たあと、「私は君たちの棒倒しを観戦していた。良い作戦を立案しているとそう思って、君たちに関心を持った。今年もよく棒倒しの参加者をまとめ上げていたが残念だったな。先頭のコケた奴、一回戦で左足首を捻挫した。知ってたか?」と聞き、宗弥が「えっ、いいえ」と答え、男は「だろうな、申告されていたら先陣切らせなかったよな。お前ら2人は一昨年から互いの突撃タイミングを計って、シンクロさせながら作戦遂行さくせんすいこうしていたろう?」と尋ね、「はい」と返事した要は口調が変わったこの人は、一体何者だと思い宗弥の顔を見る。



 宗弥は一直線に、男の顔に見ていた。



 男は話を続け「棒倒しは、個々の能力と戦略のみで行われる原始的ないくさだ。本能剥ほんのうむき出しの人海戦術じんかいせんじゅつになる。個々の特性が突出する。お前たち2人の運動能力と戦闘思考はずば抜けてる」と言った。



 男はギラリとした眼差しを2人に向け「俺と仕事しないか?」突然、口にする。



 要は精悍せいかんさを増した男の顔付きに、興味を引かれて意識しないままに「どんな仕事ですか?」と聞いていた。



 立ち話している3人の側面を練り歩きの先頭が歓喜の足取りで、雄叫びを上げながら通り抜け始め、要は掲げられた優勝旗を見て、完敗した悔しさを心にたぎらせた。優勝旗から男の顔に視線を戻すと、男もまた優勝旗を見つめていた。男は要に視線を移して歩み寄り、宗弥は男との距離を縮め、男は芯のある声で仕事の概要がいようを話し始める。




 話を聞いた要と宗弥は、卒業後の進路を決めた。







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