小説家になろうで「マイナス評価システム」を導入することの問題点
小説家になろうにおいて、作品に対する「マイナス評価」ができないことに対する不満の声は、昔からわりと多く見受けられるように思う。
昔から、と言っても僕がなろうで活動を始めて六年目かそこらだから、それ以前のことはよく分からないのだけど。
その声は当然、なろうの運営にも届いていただろうから、おそらく運営は「マイナス評価システムは導入するべきではない」というジャッジをこれまで下してきたのだと思う。
マイナス評価システムの何が問題かというと、一番大きなものはおそらく「私怨」や「いじめ」のようなものにシステムが悪用される危険性だろう。
すべてのユーザーが善意と矜持に基づいて、すべての作品を「正しく」評価しようとするのであれば、まあそれなりにうまく機能するのだと思う。
評価値がその人の主観的評価の域を出ないとしても、評価数が一定以上集まれば、その評価の集合体にはそれなりの信頼性が出てくるだろう。
しかし人間というのはそういう生き物でもなくて。
「あいつムカつく」とか「あいつは悪いやつだから制裁してやろう」とか、そういう作品のクォリティとは離れたところで、人を攻撃するための武器としてマイナス評価システムを利用しようとする手合いが無視できないほどの規模で現れるであろうことは、やってみなくてもだいたい予想がつく。
匿名掲示板や炎上とも、悪い意味で相性が良さそうだ。
もちろん、あらゆるシステムに問題は存在する。
なのでその悪影響がどのぐらい大きいか、大勢に大きな影響を与えるかどうかこそが判断の分かれ目になってくるわけだが。
僕は正直、トライアル&エラーが許されるなら、小説家になろうにマイナス評価システムを導入してどのような結果になるのか、様子を見てみるのも有りだろうと思っている。
問題が大きければ元に戻せることを前提として、だ。
しかし何しろ、現在進行形で動いている巨大プラットフォームである。
そうそうトライアル&エラーを繰り返して、利用者を好き放題に振り回すわけにもいかないのだろうなというのは、想像ができるところだ。
マイナス評価システムは、どちらかというと商業、それもその商品をお金を出して購入した人だけが評価できるシステムのほうが、うまく機能するのではないかと感じる。
例えばDLsiteやBOOK WALKERのようなダウンロード販売の販売プラットフォームでは、そのようなランキング方式をとっても面白いんじゃないかと思う。
(それもまた自主購入による評価操作とかいろいろ問題は起こりうるが)
そもそもあらゆる商品は、基本的には「そのパッケージの商品をお金を出して買おうと思った人」向けにデザインされているものであるから、もともとその種類の商品を買わないはずの人に評価をさせても適切な評価にならない。
例えば「ハーレムモノ」の作品を、「ハーレムモノが嫌いな読者」に評価させてもナンセンスなわけだ。
小説家になろうの作品は「商品」ではないのだが、現在のランキングは同様の理由で、本来の作品ターゲットでない読者からの低評価を無視し、「作品の強みを評価するシステム」としてはそれなりに適切に機能しているように思う。
一方で現在のランキングの最も大きな欠点として感じるのは、特定の種類の作品ばかりが上位に上がりがちだということだ。
読者人数に大きく依存したランキング形式なので、どうしても「その種類の作品を読みたい読者がたくさんいる種類の作品群」ばかりがランキング上位に上がりがちになる。
これに関しては、ランキング評価基準として読者人数への依存度を下げるしかないと思うのだが……その先の話は複雑な話になりすぎて思考がまとまらないので、ここまでにしておく。
以上、お疲れ様でした。