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「先生! 事件だ!」
俺が勢いよくこころの相談室のドアを開けると、デスクに顔を落としていた先生が、がばっと顔を上げた
「ふぁふぇふぁふぉ! ふぉえふぁふぇんふふぁふぁふぃふぉふぁふぁふぁふぇ!」
「うわっ。口に物入れて喋んなって! 何言ってっかわかんないし。そんなことより、事件だよ!」
口の中にほおばっていた物を飲みこみ、先生が言う。
「……んんん、もう。騒がしいなぁ、藤崎くんは。事件って、今度は一体なんなんだい? この間のストロベリーサンデーと宇治金時かき氷とサイダーと……、フラペチ」
「いや、増やさなくていいから! それは今度、その気があったらな!」
「酷いな藤崎くん。私との約束を破るのかい?」
「その気があったらって言っただろ! そんなことより事件だって。先生も知ってるだろ? この間の事件の時にあった白瀬さん」
「あー、白瀬さんね。本当に可愛いよね。それにとっても良い子だよ。彼女は料理もできるみたいだし、お嫁さんに欲しいくらいだよ」
「また、馬鹿なこと言って。その、真面目で大人しい白瀬さんが斎藤と付き合ってるらしいんだよ」
「そうなのかい?」
先生がにこにこしながら紅茶をすする。
「いや、付き合ってるてのは噂なんだけどさ。今日、白瀬さんが斎藤に手作りのクッキーを渡してるの見たって奴がいてさ。あの二人、昼休みに二人してどっかいってたんだよ。しかも、白瀬さんから斎藤に声かけてだぜ? あの大人しい白瀬さんがだよ。絶対、付き合ってるよな?」
「さー、どうだろうね」
先生はそう言うと、お皿の上に綺麗に並べられたクッキーを頬張った。
「んー、おいひい」
二〇一七年 三月 一日
二〇一七年 三月一三日 最終加筆修正