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第70話 月と脱糞のソイヤ!

まだもう少しお付き合いください。カクヨム版です。カクヨム版の後ろから7話目ぐらいのお話です。9割ぐらい一緒。だけど、重要な部分が少し違います。


 わたしたちは魔法学園の校外学習でアルカデア王国へと来ていた。



「ようこそアルカデア王国へ。どうぞお入りください」



 王城に着くと出迎えた執事みたいな人に案内される。

 一応王城で泊めてもらうので王様(おとうさま)と謁見の間で謁見するとのこと。



「よく来たな未来ある魔法学園の子どもたちよ。この三日間、おおいに楽しむがいい」



 お父様はそれだけ言って謁見の間から出ていった。

 その後メイドたちがわたしたちをそれぞれの部屋に案内した。

 わたしのルームメイトはリア。エリーはタテロールと同じ部屋らしい。

 すると部屋の扉がノックされ、扉を開けるとそこにはメイドさんがいた。



「魔王様がお呼びです。どうぞこちらへ」



 わたしはリアに部屋で待ってるよう言ってメイドさんについていくと1つの部屋に案内された。

 そして中に入るとお父様がいた。



「フェノン、足の調子はどうだ?」

「一応リハビリはしてますけど……」

「ああ、敬語やめてくれ。どうせ正式な場所じゃないし、俺は身内が敬語とかどうしても馴れないからな」



 お父様はそのままソファーに座ると先ほどまでずっとつけてた仮面を外した。

 やっぱり親友だった。けれど、見た目は30ぐらいのおっさんになってた。



「リハビリはしてるよ。けど全然ダメ。遅いけどちょっとだけ歩けるぐらい」

「そうか。フェノン、お前俺に言いたいことがあるんじゃないか?」



 さすがはお父様。わたしの考えなんてお見通しみたいだ。



「ルーズベルト領をゴールランド王国から買い取って」

「あれ!?」



 膝の上にひじを乗せて腕を組んでいたが、ガクッという感じで崩れた。

 あれ? お父様は持ち前のチート能力でわたしの考えお見通しじゃなかったの? え? もしかしてわたしが親友かどうかという質問をすると思ったの? 別にわたしから見ればそんなことはどうでもいい。

 1番大事なのはアストと結婚できるか否か。アストがわたしを好いてくれるかどうかだよ。



「そ、そっちか……わかった。いくら寄越してくれる?」

「……無限に出す」



 お父様は「コイツやべぇ……!」みたいな顔をした。でもこれでアストと結婚できると思えば安いもの。

 わたしはアストの為ならいくらでも出すよ。



「わかった。俺の負けだ。全額こっちで負担する。

 本当なら『え? お金?』みたいになるかと思ったんだけどなぁ……」



 ああ、『お父様助けてぇぇ』『仕方ないなぁ?』っていうヤツがやりたかったんだね。ごめんね。わたしの愛が強すぎて。

 お父様が額に手を当てていると、扉がノックされて1人のメイドが入ってきた。



「魔王様、お連れしました」

「入りたまえ」



 お父様が言うと1人のカッコいい青年が……アスト!?



「失礼します!」



 そしてアストがわたしの横にあるソファーに座った。

 アストを見てるだけで顔が赤くなってつい目を逸らしてしまう。



「アストくん、キミには頼みがある。実は今朝こんな手紙が王城に届いてな」



 お父様はアストに手紙を渡す。そしてアストがその手紙を読むとわたしもその手紙を読もうと車イスから頑張って覗こうとする。



「きゃっ!?」

「フェノンフェリナス!?」



 手紙を覗こうとしたわたしはそのまま車イスから落ちた。

 そしてアストがわたしを抱き上げるとあろうことかわたしを膝の上に座らせてわたしにも見えるように手紙を読み始めた。

 わたしの顔は真っ赤に染まり、心臓の速度も異常に速くなっている。

 そんな様子を見ていたお父様は気持ち悪くニヤけていた。



「殺害予告……ですか?」

「そうだ。俺の妻の誰かを狙ってるらしい。だからキミはそれを阻止して欲しい。いくら俺が強いとしても20人居る妻を全員、1人で守ることなんて出来ないからな」



 さらっと20人嫁が居ることを自慢してくるお父様。アスト、こんなのがお父様で本当にごめんなさい……



「わかりました。お引き受けします。報酬は……フェノンフェリナスだ」

「「え?」」



 いきなり何を言ってるのか分からず、その空間が静寂に包まれた。

 そして、その言葉を理解したわたしは声にならない声を出した。



「~~~~~~~~っ!!!?」

「フェノンフェリナス……いや! フェノン! 俺様はお前のことが大好きだ! 必ずお前のハートを盗んで見せるからな!」



 アストは堂々とそんなことを言ってるけど、既にわたしのハートはあなたに盗まれてます。

 同じ部屋に居たメイドさんたちは今にもツッコミをしてしまいそうなのを必死に堪えていた。



「わ、わたしもアストが好きなの……」

「……は?」



 顔を真っ赤に染め、頬っぺたを両手で抑えながら言ったわたしのに対して違和感を覚えるアスト。本当に気づいてなかったようだ。けどこれなら他の女を連れ回すわけないし安心できる。



「だっはっはっはっはっ!!! お前サイコーだな! ここまでアホなヤツ初めて見たぞ!」



 わたしは無言で吸魔石を10m以上離れた場所に投げ捨て、宝石を作り出し、魔力光線を発射した。

 しかしお父様の謎のバリアで守った。



「『幸福宝石手絡魔力砲撃(フェリナスバースト)』!!!!」



 大量の宝石で魔力光線を発射しつつ、宝石をそのままぶつける物理攻撃を繰り出した。



「ヤメロ! 俺を殺す気か!?」

「お父様が悪い!!」



 わたしはそれだけ言うと吸魔石を取ってきてくれたメイドさんから吸魔石を受けとる。まだ身長が小さくならないので、規定魔力値は使ってないようだ。



「フェノンが俺様のことを好いてる……だと!?」



 アストはとてもカッコいいのに少し残念な所がある。だけど、その残念な所がまたいいと思っているわたしはだいぶ侵食されてると思った。

 すると、お父様は話を戻すために咳払いをして守って欲しい人を呼び出した。



「右からレーナ、ジャスミン、フィオナだ。お前にはこの3人を守って欲しい」



 どれも美しい女性でお父様に見合うような女性には到底思えなかった。

 するとお父様はわたしを変な目で見た。



「おいフェノン。文句があるなら聞こうじゃないか」



 わたしはアストの胸元に寄りかかりながら思ったことを素直に言った。



「いや、月と脱糞だなぁって……」

「『すっぽん』と言え! 『すっぽん』と! なんだよ脱糞って!? やめろよ! 黒歴史なんだよ!」

「「「「ええっ!?」」」」



 その場に居たわたし以外の人全員が驚いた声を出した。『魔王様は脱糞した』という事実がこの部屋に居た者たちの記憶に刻まれていったのだった。

 この話が後に『魔王様脱糞事件』と呼ばれる事件の命名された原因になろうとは誰も思わないのであった。



「そんな事件起きねぇよぉ!?」

「魔王様、安心してください。私たちは魔王様が例え脱糞してたとしても嫌いになったりしませんわ」



 安心してくださいと頑張って慰める妻たち。若干お父様が涙目になってるような感じがした。

 その気持ちわかるよ。慰められると本当に惨めになるよね。

 わたしはアストにより深く座ると何か硬いモノが当たった。



「……アスト?」



 わたしはアストの方を見るとアストはわたしの視線に耐えられず、プイッとそっぽを向いてしまった。

 思わずかわいいと思って、そのままアストの股間に右手を……



「フェノン、結婚するまでは余計なことするなよ?」

「はぁい……」



 お父様に釘をさされた。けどわたしが言いたいのはそんなことじゃない!

 なんと果てしない練習の末、まだ若干『あ』の発音があるとはいえ、遂に『はい』と言えるようになったのだ……! もう昔のわたしとは違う。わたしだって成長するのだよ。

 するとアストがわたしの頭を撫でてきた。



「練習したのか。偉いぞ。けど、今まで通りの方が可愛いくてフェノンらしいと思うぞ?」

「そうかな……? じゃあそうするね!」



 わたしの2日間の練習が全て消し去った瞬間だった。

 お父様が「うわっ、チョロ……」とか思ったような顔をした。

 でもアストがそっちの方がいいならわたしは無理する必要はないから今まで通りにする。

 それからなんやかんやでお父様との会話が終わり、わたしとアストはそれぞれの部屋に戻った。

 そしてわたしは部屋に入るなり、リアに伝えた。



「それでね! アストがわたしのことを……!」

「そうかよかったな」



 若干リアが落ち込んでるように見えた。

 何かあったのかな? ……もしかして!



「アストは渡さないよッ!?」

「要らんわッ!! お前のリア充話を聞いててうんざりしてただけだわッ!!

 さっさとマトモな話をしろッ!」



 突然と話題を切り替えてガチなお話に入る。アストには護衛を成功してほしい。というか成功してもらわないと困る。

 出来るだけ多くの人に協力してもらうためクルミさんやエリーにも話をしに2人の部屋へと向かった。



「きゃああああああああああああっ!!!」



 クルミさんの部屋に向かう途中で誰かの悲鳴が聞こえた。

 車イスのわたしはあまり速く移動出来ないので、リアに先に行くように伝えてクルミさんの部屋に向かった。



「フェノンくんか。今の悲鳴はなんだ? 殺人事件か?」

「知りませんよ。とにかく行きましょう」



 クルミさんは車イスを押して悲鳴の聞こえた方に向かった。



カクヨムとの兼ね合いもあるので、土日でも1日1本になります。

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