第61話 月と脱糞のソイヤ
読者よ~増えろぉ~(読者増やしの儀)
お父様と共にアストの愛の告白を聞いてしまったわたし。
お父様は話を戻すために咳払いをして守って欲しい人を呼び出した。
「右からレーナ、ジャスミン、フィオナだ。お前にはこの3人を守って欲しい」
どれも美しい女性でお父様に見合うような女性には到底思えなかった。
するとお父様はわたしを変な目で見た。
「おいフェノン。文句があるなら聞こうじゃないか」
わたしはアストの胸元に寄りかかりながら思ったことを素直に言った。
「いや、月と脱糞だなぁって……」
「『すっぽん』と言え! 『すっぽん』と! なんだよ脱糞って!? やめろよ! 黒歴史なんだよ!」
「「「「ええっ!?」」」」
その場に居たわたし以外の人全員が驚いた声を出した。『魔王様は脱糞した』という事実がこの部屋に居た者たちの記憶に刻まれていったのだった。
この話が後に『魔王様脱糞事件』と呼ばれる事件の命名された原因になろうとは誰も思わないのであった。
「そんな事件起きねぇよぉ!?」
「魔王様、安心してください。私たちは魔王様が例え脱糞してたとしても嫌いになったりしませんわ」
安心してくださいと頑張って慰める妻たち。若干お父様が涙目になってるような感じがした。
その気持ちわかるよ。慰められると本当に惨めになるよね。
わたしはアストにより深く座ると何か硬いモノが当たった。
「……アスト?」
「フェノン、お前も人のこと言えないだろ」
わたしは俯きながら小さく頷いた。
実はアストのズボンはわたしのとある液体で濡れていた。アストはわたしの温もりを感じ取ってしまったのだろう。
けど、これもわたしを膝の上に座らせたアストが悪いと思わない? おまけに告白までされちゃったしさ。もう今すぐすることしたいぐらいだよ。
「フェノン、結婚するまでは余計なことするなよ?」
「はぁい……」
お父様がわたしに釘をさした。けどわたしが言いたいのはそんなことじゃない!
なんと果てしない練習の末、まだ若干『あ』の発音があるとはいえ、遂に『はい』と言えるようになったのだ……! もう昔のわたしとは違う。わたしだって成長するのだよ。
するとアストがわたしの頭を撫でてきた。
「練習したのか。偉いぞ。けど、今まで通りの方が可愛いくてフェノンらしいと思うぞ?」
「そうかな……? じゃあそうするね!」
わたしの2日間の練習が全て消し去った瞬間だった。
お父様たちが「うわっ、チョロ……」とか思ったような顔をした。
でもアストがそっちの方がいいならわたしは無理する必要はないから今まで通りにする。
それからなんやかんやでお父様との会話が終わり、わたしとアストはそれぞれの部屋に戻った。
そしてわたしは部屋に入るなり、リアに伝えた。
「それでね! アストがわたしのことを……!」
「そうかよかったな」
若干リアが落ち込んでるように見えた。
何かあったのかな? ……もしかして!
「アストは渡さないよ!?」
「なっ!? お前アスト様のこと何もわかってないだろ!?」
「『様』!? 『様』ってなに!?」
「フェノンすまん!」
リアはその場で土下座した。
リアの話を聞くとアストのさりげない行動に色々助けられてしまい、徐々に心を引かれていったらしい。
「だから何だというの!? アストはわたしのモノだから!!」
「お前この世界の法律知らないだろ。一夫多妻制だ。つまり男は何人とでも結婚できるんだよ。だから……良いだろ?」
「ダメ!」
即答だった。
わたしの心の中でリアがアストと結婚してアストと三人で暮らすのも良いと思ったりしたけど、アストがわたしを見捨ててリアだけを愛してしまうのではないかという不安が出てきてしまう。そんな心配するぐらいなら最初からお断りするべき。それがわたしの考え方。
「大体リアは男なんじゃないの? なに? ホモなの!? 石原くんなの!?」
「アイツとは一緒にするな」
そこだけはガチトーンだった。自分は身体が女なんだから石原くんとは一緒にするなということらしい。解せぬ。
「アストが良いって言ったらダメか?」
リアが難しい質問をしてくる。
確かにアストがわたしにリアを二人目の嫁に迎えたいとか言ったら断れないと思う。
「いいんだな?」
わたしは黙って頷いた。
その代わりに、絶対にわたしを出し抜いて先走らないことを約束させた。
もし破ったらリアは羞恥の湖に沈める。魔王の娘としてね。
「ねえリア、殺害予告の件なんだけど……」
「ああ、わかってる。俺もできる限りはやってみる」
突然と話題を切り替えてガチなお話に入る。アストには護衛を成功してほしい。というか成功してもらわないと困る。
出来るだけ多くの人に協力してもらうためクルミさんやエリーにも話をしに2人の部屋へと向かった。
「きゃあああああああああああああっ!!!」
クルミさんの部屋に向かう途中で誰かの悲鳴が聞こえた。
車イスのわたしはあまり速く移動出来ないので、リアに先に行くように伝えてクルミさんの部屋に向かった。
「フェノンくんか。今の悲鳴はなんだ? 殺人事件か?」
「知りませんよ。とにかく行きましょう」
クルミさんは車イスを押して悲鳴の聞こえた方に向かった。