第59話 リアの嫁入り(嫁入りするとは言ってない)
クルミさんの写真を見るとそこには仮面を取ったお父様……前世の親友の姿があった。
「それで真実を知ったフェノンくんはどう思った?」
「どうって……」
確かに親友という枠はTSモノの創作物では重宝される。
しかし現実はどうだ。
その親友はわたしよりも先に異世界転移して特典のチート能力でお母様やその他多くの可愛い女の子たちを侍らせてハーレムを形成してるだけでなく、ヒト族なのにも関わらず魔王になって魔族たちを率いるリーダーとなっている。
さらに言えばわたしのお父様でもある。
わたしはコレを親友と呼んでいいのだろうか?
「親友とは呼べないかもしれないけど、家族と言えればそれでいいよ……」
わたしは写真を見て少し笑っていた。
いつかわたしもお母様やお父様、……アストとこうしてみんなで写真を撮ってみたい。
「フェノンくん、その夢が叶うには早く10歳にならないとな?」
「はうっ!? き、聞こえてました……?」
わたしは顔を徐々に赤く染めながら恐る恐るクルミさんに聞いた。
「うむ、聞こえてたぞ。うっかり声に出さないように気を付けるのだな」
「んい……」
いくら異世界だとはいえ、一応結婚するにはそれなりの年齢に達してなければならない。
ちなみにこの国は10歳という規定がある。
しかし、この世界の成人の年齢は15歳とされている。15歳未満で結婚する女性はそれなりの覚悟を持って結婚しろという意味を込めて結婚式の際には非常に際どいウェディングドレスを着て結婚式をするらしい。
実際に服を見たことはないけど、クルミさん曰く超ヤバいらしい。
逆に興味を持ってしまう。そんなに際どいというのならリアに着せてみたいと思った━━━━
「お前人間じゃねぇぇ!!!」
━━━━着せてみました。めっちゃエロい。
背中は殆ど開いていて、おへそのライン丸見えだし、スカートも凄い短い。肩は全部露出していて、胸元にはハートの形の小さな穴があって、もういろいろとヤバい。
こんなの即逮捕レベルである。
「お前も着ろぉぉぉ!!!」
いきなり屋敷に呼び出されるなりナタリーたちに捕まって強制的に着替えさせられたリアが何か言っているが、わたしは着ない。
「着たらお嫁に行くの遅れちゃうからイヤ」
「そうですよリア様。フェノン様の嫁入りが遅れるのは大変なことなんですから辞めてください」
「あんな男らしいリアもお嫁に行っちゃうんだね~。子どもの成長が身に染みるよぉ~」
わたしとナタリーはウェディングドレスを拒否し、ツバキさんはもうお嫁に行く娘を見送る感じで泣いてた。
「母さんまでやめろ!!」
「あのリアちゃんがお嫁に行くなんて……」
「エマさんまで!?」
その後、リアはたまたま部屋の前を通りすがったクルミさんに捕獲され、クラスメイトたちに晒されていった。
「あの、ツバキさん……」
「どうしたの~?」
せっかくなのでツバキさんにも恋愛相談してみることにした。
というか他の人たちに相談したことがバカみたいに感じた。
だってナイフと水着と肝試しに心だよ!? おかしくない!?
「フェノン、お母さんはやっぱり合コンが」
「おかあさまの意見はどうでもいいので黙っててください」
わたしにはお母様が少し興奮してるように見えた。
ツバキさんもお母様を見て笑うと、わたしと目を合わせるようにしゃがんで話した。
「フェノンちゃんはもっと自分に素直になるべきだよ~? アストくんに良い所だけ見せてるようじゃダメなんだよ~。ギャップ萌えって知ってる~?」
わたしはギャップ萌えに関してはよくわからないので首を横に振った。
「男の子はね~? 女の子がダメだと思ってる所が逆にかわいいって思っちゃうんだよ~。それにありのままの自分を見せてればフェノンちゃん結構可愛いからアストくんの方から告白してくれるよ~?」
わたしはアストが夕焼けで誰も居ない見晴らしの良い場所で告白してくる妄想をして顔が赤くなり、両手で顔を覆った。
「そうかな……?」
「そうだよ~だから自信持って普段通りにしてれば大丈夫だよ~」
「うん、ありがとうございます! わたし頑張ってみます!」
わたしはお礼を言って自分の部屋へと戻った。
でも何もしないのも良くない気がする。今のわたしにもできること……部屋の中でできること━━━━
「あい……? あい! あい! ふあい!」
1人で『はい』という返事が上手くできるように練習するわたし。その様子を扉に耳を押し当てて、盗み聞きしているメイドが一人。
「(フェノン様、必死に練習してるようですけど、誰も居ない部屋でそんなことやってたら頭のおかしい人に見えますよ……)」
わたしが外にいるナタリーに気づいたのは入浴の時間を呼びに来るのが遅いと思って部屋の扉を開けた時だった。
「居るなら居るって言ってよぉ……」
「可愛かったので大丈夫ですよフェノン様!」
顔を真っ赤に染めながら両手で顔を覆いその場に座り込んでいるわたしと、ひたすらわたしを褒め続けるナタリー。
結局わたしがその場から動かなかったためナタリーがわたしをお風呂場まで誘拐していったのだった。
明後日からはいよいよ2泊3日の校外学習。何か進展があることを必死に願って寝た。
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