第49話 王城デート(強制)
キミのハートにジャストミート!!!
みなさんこんにちは、フェノンです。実はわたし、生と死の狭間にいます。
「お姫さま、どうかこのボクと共に道を歩むフィアンセになってくれないか?」
笑ったら死。拒否したら死。「はい」と発音出来ないのがバレたら羞恥心で死。
何故こうなったのか、それはわたしが聞きたい。
いきなり部屋に案内されるなりベッドに座らされて謎の告白。しかも指輪を片手に構えている。用意周到過ぎる。
このままわたしがOK出したらこの後ここで何が起こるのかまで容易く想像できる。
所詮は第二次成長期の青少年のようだ。性欲にまみれている。おそらくこの城にいるメイドたちの中にも少なからず犠牲者がいるのだろう。
いくら前世の記憶があるとはいえ、わたしだって女の子だし人間だ。こんなよく知りもしない人物と結婚なんてお断りである。
なのでここはひとまず離しておく。
「ふぃあんせ? それってなんですか?」
「……は?」
王子の抜けた声。まさかわたしがこの世界での『フィアンセ』の意味を理解していないとは思っても居なかったようだ。
地球だと婚約者という意味があるらしいが、この世界での『フィアンセ』は意味が異なる。この世界では地球との意味が異なるものが少しばかり存在する。『フィアンセ』はその1つである。
ちなみに後から聞いたナタリーのお話だと『絶対に離婚しない結婚』という意味らしい。
嫌いになっても別れることができない結婚のようだ。ただし、夫婦共に他の異性を弄ぶことが禁じられるという契約魔法の1種なんだとか。
「よくわかりませんが、よく知りもしない人とは道を共に歩むことはできません。ごめんなさい……」
「い、いやボクが悪かったよマイハニー……急すぎたようですまなかった」
謝ってくる王子。けれどそれはわたしの笑いのツボを刺激しているだけだった。
いい加減にマイハニーはやめて欲しい……もう腹筋が死にそう━━━━
「さっきから言ってるマイハニーってわたしのことを言ってますよね? わたしの名前はフェノンフェリナスですよ?」
「え? あ、ああ……すまないフェノンフェリナスくん……」
気まずい空気を作って王子にめんどくさいヤツだという認識をさせれば勝手に向こうから引いてくれるはず。
「じゃあ早速だが城を案内しよう」
王子が手を差し出してきた。さすがにこれは手を繋がないと不敬罪になる場合もあるかもしれないので仕方なく手を取ってあげる。
先ほどまではお姫様抱っこだったのでなんとも思わなかったが、わたしと王子の身長差が思ったよりも酷かった。
わたしがまだ身長が110cmぐらいの幼女なのに対して第二次成長期を迎えた王子の身長は周りよりも少し成長が早かったようで既に170cmを超えていた。
そしてその身長差が生み出した答えがこれだ。
全力で腕をあげるわたしとちょっと腰を低くしてつらそうに歩く王子。メイドや執事たちとスレ違う度にメイドたちが王子を心配していた。ついでに言うとわたしのことは無視である。
「ここはボクのフェイバリットな部屋だ。ここに誰かを入れたのはキミが初めてだよ」
といいながら自慢をする王子。しかしわたしの曇りなき眼にはメイドが数人部屋の隅で待機しているのが映っている。指をさすと王子は慌てて追い出した。
それから色んな所に連れ回されたが、どれも王子の説明は矛盾だらけでデタラメが酷かった。王子の額からは冷や汗が出ており、少し焦りが見える。
そして最初の部屋まで連れ戻された。
ちなみに勇者様たちはちょうど留守だった。おそらくデートの日付が今日だったのは勇者様たちが居なかったからなのだろう。
「王城はどうだったかな?」
「綺麗な建物でしたね。矛盾だらけでしたけど」
「うっ、それを言われてしまうと少しツラいものがあるな……」
王子は何かお香のようなものをつけた。部屋中に良い香りが漂う。今のところ身体に変化がないので普通のお香だと思う。
それから今日のお話をしたり、王家の自慢をされたり、結婚のメリットを言われたりと洗脳を試みる王子だったが、ぶっちゃけわたしは最初から王子に興味がない。
そして日が沈んできたのでそろそろ帰ろうとベッドから立ち上がろうとすると王子が押し倒してきた。
「……え?」
この物語、恋愛要素も含まれてるのですが、未だに誰も恋をしていないという……
え? 王子? それは政略結婚だから違いますよ。
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