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第48話 王子からのお誘い(強制)



 ナタリーとお昼寝をして起きると夜だった。



「……ねすぎた」

「そうですね……」



 ナタリーと夕食の話をする時は大半がこの形から入る。

 昔からお昼寝ばっかりしてたので仕方ないといえば仕方ない。

 この部屋が日光に当たってベッドが気持ちいいぐらいにまで温かいのが悪い。


 すると部屋の扉がノックされ、扉が開くとお母様が部屋に入ってきた。



「フェノン、これお手紙よ」

「てがみ……?」



 わたしはお母様から手紙を受けとる。やけに綺麗で豪華な手紙だ。封筒の裏を見ると王家の印があった。



「いやな予感がする……」

「私もフェノンと同意見よ」



 この手紙は一応わたし宛に送られたものなのでお母様が開けるわけにもいかないらしい。家族でも他人の手紙を開けてはいけないというこの世界のルールなんだとか。


 わたしはナタリーからカッターみたいなものを借りて封筒を開け、中に入っている手紙を取り出して開いた。

 手紙を開くとヤバい文字が見えたので、見なかったことにして手紙を閉じて、ナタリーに読んでもらうことにした。



「拝啓 フェノンフェリナス・フォン・エリシュオン様


 初めましてフェノンフェリナス様、私の名前はカルロス・ゴールランド。ゴールランド王国第4王子です。

 私はあなたの写真を見てその綺麗な瞳と美しい銀髪、その可愛いらしい顔に運命を感じました。

 私はあなたのことが大好きです。付き合ってください!


 ※断った場合、国家転覆罪に問われ死刑となりますのでご注意ください。また、詳細は同封されている別紙にて


 Your future husband カルロス・ゴールランド」



 ナタリーが全文を読み終えるとその手紙を粉々に破いた。

 お母様も顔だけはいつも通り笑っているが、目は一切笑ってなかった。



「本当にふざけた手紙ね。フェノン、どうするの?」



 お母様はわたしに聞いてくるけどそもそも選択肢が1つしかない件について。


 ちなみに今までの話を詳しく言うとこの国の名前はゴールランド王国で、そこのクソ王子(おとうさま)の息子がわたしと結婚したいから付き合えよオラ。勿論拒否権はないけどな。というわけである。


 お母様と王子の繋がりは王家全体で隠蔽しているので、表向きの繋がりはない。

 つまり王家の狙いはわたしを通じてお母様の協力を煽るということなのだろう。



「どうせ行くしかないんでしょ?」

「そうね」

「なら行くよ。それで誰だかわからない男を突き放す!」



 ナタリーに場所を聞くと手紙から別紙を取り出して場所を教えてくれた。

 どうやら会う場所は王城で、王城デートのようだ。ハッキリ言うと絶対つまらないと思う。


 適当な所で残った勇者様方を誘拐して帰るとしよう。



「日時は……明日の朝ですか!?」

「「明日!?」」



 普通に考えて勇者様方で1週間も掛かる距離だというのに明日なんてほぼ不可能だが、向こうはお母様が居ればなんとかすると思っているようだ。

 もちろんわたしもお母様が居れば大丈夫だと思う。



「フェノン、今すぐ準備して。さすがに今から出ないと間に合わないから」



 わたしは敢えて私服である袴を選ばずに制服を着て、マントを羽織った。

 制服であれば「お前とは社交辞令だからな?」という意味を持たせて王子との距離感を作ることもできる。


 そしてリアからもらった帽子を被って、外に出るとお母様がわたしをお姫様抱っこで王都に向けて走り始めた。

 ちなみにエリーからもらったお団子のストラップは首から下げているペンダント型の吸魔石の横につけている。




 それからお母様が走ること12時間。わたしは無事に王都に到着した。さすがのお母様も疲れたようで、わたしがデートしている間は王都の宿で休んでいるとのこと。


 お母様は宿に入るとすぐにベッドの上で横になった。

 その姿は普段わたしが昼寝する時と全く同じもののように感じた。やはり親子なのだと実感させられた。

 ちなみにわたしはお母様が運んでくれてる時に寝ていたので睡眠は充分に取れている。


 わたしはお母様に一言言ってから部屋を出て、朝食を済ませてから王城に向かった。



「こんな朝早くから何者だ。今すぐ帰れ!」



 王家の番人がわたしの行く手を阻む。どうやら王城に行くことはできないようだ。仕方ない本当に残念だが、このまま宿に帰るとしよう。



「きゃっ!?」



 その時、わたしは地面に足をつっかえて転んだ。ここの道はレンガが適当過ぎて足場が悪すぎるのだ。断じてわたしがドジっ娘銀髪幼女だからというわけではない。



「待て、彼女はボクのお客さんだ。……大丈夫かい? マイハニー?」



 見た目だけは満点である13歳ぐらいの少年が爽やかな顔でわたしをお姫様抱っこして何かほざいてきた。


 だめ……笑ったら不敬罪で殺される……! マイハニーって……だめ。もうこの王子の顔見られない……!



「どうしたんだい恥ずかしがっちゃって? ほら、ボクの目を見てごらん。ボクの瞳はキミのハートにジャストミート」



 この王子は再び爽やかな顔で気持ち悪いことを言ってわたしを笑わせようとしてくるのでわたしは必死に王子から顔を逸らして我慢する。

 わたしの脳内は『笑ったら死笑ったら死笑った死……』という感じになっている。



「申し訳ありませんでしたカルロス王子。どうぞ中へお入りください」

「では行こうじゃないか。ボクの愛しのお姫さま?」



 これがわたしの笑ってはいけない24時間の始まりだった━━━━━━━━



キミのハートにジャストミート!

 速さ×時間=距離です!

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