第43話 悪夢のクルミさん
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ボットントイレに落ちそうになった後、エリーに泣きながら感謝をしたわたしは疲れて眠ってしまった。
すると扉が開き、リアとクルミさんが部屋に戻ってきた。
「ようやく寝たか……」
「リアちゃん死にそうだね。でもかわいいよ」
「余計なことを言うな」
リアは顔を赤く染めながらとても短くて、今にもパンツが見えてしまいそうなスカートを履いていた。
「まさかリアくんにこんな趣味があるとは、私も驚いたよ」
クルミさんがリアのスカートを当たり前のごとく捲った。その瞬間にエリーの顔は真っ赤になった。
「う、うん。趣味は人それぞれだから、私からは何も言わないよ……? だから堂々としててね?」
「それ、フェノンと最初に風呂に入った時にも言われた。どっちかというと女物のパンツ履いてる方が恥ずかしい……」
リアの顔はみるみると赤くなっていった。リア曰く「女物のパンツを履いたら完全に女になっちまう」とのこと。どうせ女風呂入ってるんだし、女子トイレ入ってるんだから意味無いのにね。
「リアくんは変態のようだね。いいだろう。今度全校集会の時に舞台に立たせて公開処刑してあげよう」
「それだけは勘弁してくれ……」
「じゃあ履くのだな。趣味はともかくとして、昼間から履かないでその辺を歩くのは同じ女性として止めるべきことだからな」
その後、リアとクルミさんの一進一退の攻防の末、リアはパンツを無理やり履かされた。
そのタイミングでわたしは目が覚めた。
「リアおねえちゃん? どうしたの?」
「アイツが俺に無理やりパンツを履かせたんだ……」
この人はいったい涙目で何を言ってるのだろうか? もしかしてこの人も普通じゃないの? 露出狂なのかな?
「よしよし……」
わたしはリアお姉ちゃんの頭をゆっくり撫でた。するとそのタイミングで扉が開いた。
「フェノン! ただいまー!」
「おかあさま! おかえりなさい!」
わたしはお母様に抱きついた。やっぱりお母様の方が安心する。1番安心するのはナタリーなんだけど、それは胸の中にしまっておく。
「とりあえずもう遅いからお風呂に入って寝なさい? お母さんは屋敷戻るけど、フェノンは今日だけはここに泊まるのよ? わかった?」
お母様行っちゃうの……? わたしも帰りたい……
わたしはお母様におねだりするけど、お母様は本当は連れて帰りたいけど、今は出来ないと言って断ってくる。しぶしぶわたしはここに泊まることを決意した。
「じゃあ明日朝一で来るから。フェノン、良い子にしてるのよ」
「うん……」
お母様はわたしの頭を撫でると部屋を出ていった。クルミさんがお母様が部屋を出ていったのを確認するとわたしをお風呂場まで誘拐していった。
わたしはただ震えているだけで動けなかった。
「フェノンさん。こんにちは」
わたしの目の前には何故か風紀委員長がいた。
なんであなたもここにいるんですか……。もしかしてわたしを精神的に殺そうとしてる!?
「なんか小さくなった?」
「委員長、実はゴニョゴニョ……」
クルミさんが何か風紀委員長の耳元で囁いていた。間違えなくわたしを殺すための作戦を考えているんだ……逃げないと!
わたしはその場から逃げるために走った。裸だけど。でも殺されるよりかはマシだ。
そして脱衣場のドアを開けようとしたところでドアノブに手が届かず、執行人である二人に確保された。その逃走劇の時間はおよそ10秒。非常に短かった。
「全く、逃げようとするとは今のフェノンくんからは考えられないな」
「そうね。本質的には似てるけど、行動面は随分違うのね……凄い怯えてるけどアナタ何かしたの?」
「いや、今回ばかりは何もしてないな。この頃のフェノンくんはエマさんとメイド以外とは誰とも会話してないらしいからコミュニケーション能力が低いのかもしれないな」
わたしは暴れて逃れようとするが、身体強化すら習っておらず、恐怖で身体の動きが鈍っているわたしと、身体強化をした大人であるクルミさんとの力の差は激しく、わたしはクルミさんから逃れることは出来なかった。
「言われて見れば口数も少ないような……」
「子供というのは簡単に変わるものなのだろ……つまり今のうちに何かを信じ込ませて、このまま育てれば私の言うことを何でも聞いてくれるようなおもちゃに━━━━」
「やめなさい。というか既におもちゃのように弄んでるじゃない」
何か物騒なお話をするこの執行人たち。わたしは恐怖のあまりその場で気を失った。
「おはようフェノン……寝てるね。かわいい。フェノンが小さい頃はこんな寝顔だったんだ……ナタリーに任せてたのがよくわかっちゃう。
おっと、先にやることはやらないと。とりあえず時間魔法は完了。あとは自動で発動するように仕込んで……」




