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第42話 助けられたら泣きながら感謝しよう



 わたしはいま死にかけている。わたしはクルミさんに抱っこされてめっちゃあやされているのだけど、恐怖と絶望から震えが止まらない。



「小さいフェノンくんはとても怖がりでかわいいね」

「なたりぃー……」



 ナタリーを呼ぶがその場にナタリーは居ない。それどころかいまわたしが何処にいるのかもわからないのだ。



「クルミさん、フェリナスちゃんが可哀想です! 貸してください!」

「断る。フェノンくんの怯えてる姿は何かそそるものがあるからな」



 わたしも暴れて抵抗しようとしたが、思うように身体が動かず、ただ怯えることしかできなかった。



「なた……りぃ~……」

「全く、私というものがありながらメイドの名前を出すとはいい度胸してるじゃないか」

「ひぃっ!?」



 や、ヤバい……殺される……!?

 わたしはあたかも(なつ)いたかのようにクルミさんに抱きつく。



「うむ、分かればいいのだよ。では早速みんなに知らせよう。こういうのは多くの人たちに手伝わせるべきだ」

「クルミさん、これ以上フェノンを泣かせないでください」

「何を勘違いしている。見たまえ、フェノンくんは私に懐いているぞ。泣いてなど居ないじゃないか」



 わたしはリアお姉ちゃんの方を見ると一瞬だけだったが、めっちゃ心配そうな顔をしていた。



「ガッツリ涙出てるけど!?」

「これは嬉し涙さ」

「言い訳も大概にしろ!」

「ほう、ではリアくんが私のおもちゃになるということで良いのかな?」



 黒い笑みを浮かべたクルミさんとそれを見て顔を青くしながら少し後退(あとずさ)ったリアお姉ちゃん。

 わたしは涙目でリアお姉ちゃんを見る。



「わ、わかった……フェノンが戻るまでだからな」

「よろしい。じゃあエリーくん、あとは任せたよ。リアくん、こっちだ」



 リアお姉ちゃんがわたしを庇って犠牲になった。身を挺してわたしを守ってくれたリアお姉ちゃんがとても格好良く見えた。

 もしリアお姉ちゃんが男だったら間違えなく惚れていたと思う。



「フェリナスちゃん、私と遊びましょっか?」

「うん!」



 エリーお姉ちゃんが1番マトモで安心できる。するとそのタイミングでわたしのお腹が鳴った。

 少し恥ずかしそうにお腹を抑えているとエリーお姉ちゃんが少し笑った。



「何か買いに行こっか?」



 わたしとエリーお姉ちゃんは手を繋いで部屋を出た。すると長い廊下で、窓からは学校の校舎みたいな建物が見えた。

 ここは学校なのかな? なんでわたしこんなところにいるんだろ……?


 それはとにかく、わたしはエリーお姉ちゃんと手を繋いで階段まで歩くと、わたしは手すりを駆使して一段ずつゆっくり降りて外に出た。



「フェリナスちゃん、こっちだよ」



 わたしはエリーお姉ちゃんに連れられてお団子屋さんの屋台に向かった。

 この世界にもお団子ってあったんだ……



「フェノンちゃん、いらっしゃ~い。またお団子食べるのぉ~?」



 知らない人に話かけられた。

 なんでこの人わたしの名前知ってるの!?



「あっ、そっか。知らないんだったね~。私はエマのお友だちのツバキだよ~。よろしくね~」



 お母様のお友だちだったんだ……お母様なら外で自慢しててもおかしくないし、納得。



「フェリナスちゃん、何が食べたい?」

「さんしょくだんご3つ!」

「エリーちゃん、お金はいらないから持って帰ってフェノンちゃんに食べさせてあげて~」

「あ、ありがとうございます!」



 エリーお姉ちゃんはツバキさんからお団子を受け取り、わたしと手を繋いで先ほどの部屋まで戻った。



「喉に詰まらせないように気をつけて食べてね」

「うん!」



 そう言いながらもエリーお姉ちゃんは不安だったらしく、お団子を手で小さくちぎってからわたしに食べさせた。


 そして全部食べ終えると今度はおしっこに行きたくなった。いつもならオムツだったのでそのまま放出してたけど、今日は何故かオムツがないので、そのまま出すわけにもいかない。



「おしっこ……」



 わたしは内股でもじもじとした状態でエリーお姉ちゃんに言った。



「そっか、こっちだよ」



 わたしはエリーお姉ちゃんにトイレまで案内されて便器に座ろうとするのだが、便器の穴が少し大きくてそのまま落ちてしまいそうになった。

 エリーお姉ちゃんが慌てて掴んで助けてくれた。あとはエリーお姉ちゃんに支えてもらいながら放出し、綺麗に拭いた。


 ここのトイレはどうみてもボットンなので、もし落ちてしまってたら間違えなく死んでいた。



「エリーお姉ちゃん、ありがとう……ありがとうございました……」



 わたしはその日、初めて泣きながら全く知らない赤の他人に感謝をした。

 そして、それと同時におまるを絶対に買ってもらうことを決意したのだった。



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