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第35話 副担任とお話し合い


 クルミさんに今日あったことを伝えたわたしは2階にある自分の部屋に戻って、リアに現状を伝えた。



「……それマジ?」

「うん、マジ。だからなるべく会話しないで。どうしても会話する時は必要最小限」

「ああ、わかった。任せておけ」



 リアは自信満々に言うけど、逆に少し不安になる。リアに伝えた後は生徒会室に戻って校外学習のセッティングをしていた。



「予算いくらあったっけ?」



 適当にファイルを取り出して探していると扉がノックされた。

 返事を返すと扉が開いて、副担任が入ってきた。



「あの、少しいいですか?」

「なんですか?」



 とりあえずわたしはファイルを元に戻してお茶を淹れて、副担任に出した。名前は忘れたけど、クラスメイトたちからは美紀ちゃんって言われてた。



「あっ、どうぞ座ってください」

「失礼します……」



 副担任をソファーに座らせてた後でわたしもその反対側にあるソファーに座る。



「フェノンさんでしたよね。まだ小さいのに生徒会長なんて凄いですね」

「そうでしょうか? ただやりたいことをやってるだけなのでそんなに凄いわけでは……」



 まずは穏やかな世間話から入っていった。けれど、わたしも副担任も情報を聞き出せないかと探り合っている。お互いに顔は笑っているけど、空気はピリピリとしている。



「……こういうのやめません? わたし苦手なんですよ」

「じゃあ単刀直入に言います。知ってる情報を全て吐いてください」



 思ったよりもシンプル過ぎて逆に驚いた。少しぐらいオブラートに包んでくるかと思ったのに。



「言える範囲でなら教えますけど、わたしもそちらの情報は欲しいですね。いまクラスはどんな感じになっているのか……とか?」

「わかりました」



 交渉が成立して、副担任もとい美紀ちゃんから話を聞いた。

 クラス転移をしたあと、クラスメイトの二人が居ないことに気づいた。けれど、その二人は見つからなかった。それから王城で鍛練を積み重ねて行くうちに1人の生徒が自殺してしまったそうだ。


 そこから少し歯車が狂い始めたそうだ。今は石塚くんのお陰で保っているが、彼が消えたらクラスは崩壊するレベルにまで来ている。

 そんなクラスメイトたちの目的は王都にいつ襲ってくるかわからない魔王を討伐して欲しいとのこと。お母様を探してるのはお母様と魔王が繋がっていると聞いたらしい。

 魔王を討伐すれば元の世界に帰してくれるとのことで、みんなで魔王を討伐するらしい。



「これぐらいですね。私からはここまでです」



 恐らく王家はクルミさんを追い出したことを黙って、死んだことにしたのだろう。それほどクルミさんが邪魔だったということなのだろうか?

 確かクルミさんは王城に居た頃は文字を覚えようとしてたはず……もしかして、王家は異世界人に文字を読まれるのを恐れている?



「そうですか。ではそれに見合った情報を教えますね」



 わたしはお茶を一杯飲んで、カップを置いた。



「まず、魔王は確かに存在しますが、別に戦争を引き起こしたりするようなものではありません。魔王は別の大陸に住んでるだけの魔族と呼ばれる種族の王様です。そして『古代種殺し』と魔王の接点は元冒険者時代のパーティーメンバーです」

「じゃあ魔物はなんだと言うんですか!? 魔王が作って苦しめているんじゃないんですか!?」



 王様から聞いてた話と全く違う話をしたわたしに驚いてソファーから立ち上がり、いきなり怒鳴り始めた。



「魔物はその辺に住んでいる魔力を持たない動物たちが多量の魔力を摂取した時に変化する自然現象です。そして、魔力を多く含んだ魔物は栄養価がとても高く、高級食材として重宝されます。これぐらい常識です。覚えておいてください」



 わたしが言うと落ち着いたのか、美紀ちゃんはソファーに座った。けれど、わたしはこれ以上に残酷なことを伝えなければならなかった。



「……これからわたしはあなたに酷いことを伝えます。それでもあなたは知りたいですか?」

「……」



 副担任は真剣な表情をしたわたしに対して、少し考え、頷いた。



「わかりました。実は召喚魔法は一方通行です。この世界から元の世界に帰る方法はありません。これはわたしが魔法に興味を持った時に調べた本です」



 わたしはクラスメイトたちが元の世界に帰れないことを伝えると、美紀ちゃんの顔色は少し悪くなっていた。


 恐らく王家の知られたくない真実はこれなのだろう。けれど、これ1つだけならクルミさんを排除する必要はないはず。クルミさん以外が解読しようとしたら、地球には無い単語が多いので、最低でも一年は掛かる。

 でもクルミさんは天才だから数日で全てを理解した。王家がクルミさんを追い出したのはその頭脳を恐れたから……?


 まあ、とりあえず説明に戻ろう。



「召喚魔法の定理。召喚魔法は転移魔法とも言われてます。特定の条件を絞ることでその対象となるモノを持ってくることができます。しかし、送り返すことは出来ません。持ってくることが出来るだけです。故にお金等の泥棒や強力な魔物の召喚を防ぐために召喚魔法は禁忌魔法とされているのです。……大丈夫ですか?」



 美紀ちゃんの顔色はとても青かった。少しやつれているようにも見えた。



「はい……」

「情報量が多すぎましたね。簡単に言うならあなたたちは王家に騙されてます。魔王の討伐後、王家の恐れる対象はあなたたちです。あなたたちはすぐに虐殺されるでしょう。今のうちに全員でこの国から出ることをおすすめします。わたしからは以上ですが……盗み聞きするぐらいでしたら中に来てください」

「え?」



 美紀ちゃんはわたしがいきなり扉に向かって言い始めたので、少し驚いた。

 先ほどから魔力の気配がするかと思ってたらやはり1人いた。恐らく先ほどの魔道具を使ってた人だろう。

 すると扉が開いて入ってきた。確か風紀委員長の……なんだっけ? まあいいや。



「お前先生に何を吹き込んで……」

「威圧感が凄いですね。女性なのですからそんな汚い言葉遣いはやめてくださいよ。わたしが教えたのはただの真実ですよ」

「黙れ!!」



 いきなり怒鳴り始めた。何か不味いことでもしてしまったのだろうか?



「お前の発言が正しい証拠などないだろ! 先生、こんなヤツの言葉なんて信じるだけ無駄です! 帰りましょう!」



 風紀委員長は美紀ちゃんを連れて生徒会室を出ていった。



「まあ、アイツらがどうなろうとわたしには関係ないか」



 わたしは再び校外学習の計画を練るためにファイルを取り出して席に戻った。



 連載していた『幼なじみを庇ったら幼なじみと親友の娘になりました』が遂に完結したので、29日までは1日に二本投稿します。時間は0時と13時に固定して更新します。

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