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第32話 生徒会長としての仕事


 今日は遂に全校集会の日になった。



「いいかいフェノンくん、呼ばれたら必ず『はい』と返事するのだよ」

「いやです」

「ではなんて返事をするんだい?」

「わたしのことはどうでもいいので、自分の席に帰ってください」



 全校集会は現在、練習場で行われている。もうすぐわたしが呼ばれる番なのだが、横からクルミさんが話しかけてくる。



「そうか。それは残念だ。せっかくだから抱っこして壇上まで連れて行ってあげよう」

「やめてください」



 手を出してくるクルミさんから逃げる。

 そんなことされたらわたしの学生生活終わっちゃう! ……あっ、もう既にクルミさんに抱っこされてる所見られてるからとっくに終わってた。



「生徒会長、出番ですよ」

「うん、いま行く」

「返事は━━━━」

「黙っててください!」



 わたしはクルミさんを置いて壇上に行き、演台に立つと先ほどまで見えていた全校生徒が見えなくなった。そしてマイクも届かない。必死に腕を伸ばしてぴょんぴょんしていると司会役の人がマイクを取ってくれた。

 わたしは演台の前に移動して挨拶をした。



「わたしが新生徒会長のフェノンフェリナスと申します。1年生ですが、きちんと仕事はこなしていきますのでよろしくお願いします」



 すると周りが少しざわざわし始めた。生徒間の会話の内容は2パターンに別れていた。

 1つは「1年生に生徒会長が務まるのか?」というもので、2つ目は「あの娘かわいいね」というものだった。すると1人のモブが手を上げて発言した。



「どうせ元生徒会長の二の舞になるんじゃないか!?」



 元生徒会長の評判はかなり悪い。本人が居てもディスることができるぐらい悪い。まあ、ディスった奴らがどうなったかは知らないけど。

 わたしはその発言に答える。


「既にご存知かもしれませんが、わたしはこの学園で改革を進めてます。図書館に一般人が居たり、校門前でいくつかの店と協力して出店をしてます。他にも貴族と平民による差別問題の解消にも取り組んでます」



 意外とマトモに仕事をしていたわたしを見て驚く人が多かった。するとどこかの貴族っぽい格好をした人が差別など無い等と無意味なことを言い始めた。

 わたしは3冊の記録帳を見せた。



「生徒会には3冊の記録帳がありまして会長と副会長、書記の3人で1冊ずつ記録を書いてます。元生徒会長の記録には貴族の問題を無かったことにされて、尚且つ平民の問題はより大きく取り上げてます。これは他の2冊を見れば分かることです。これでも差別が無いと言い切れますか?」



 するとその貴族っぽい人は黙って下を向いた。



「この学園の校則には貴族も平民も同じ扱いとなると書かれてます。ですが、そういうことが起きてしまうのは服装の影響です。より豪華な服を着れば偉いと錯覚してしまうのです。なのでこの学園には制服を作ることにしました。

 今わたしが着ているのが女子生徒の制服です。一応見本が職員室に置かれてますので、気になる方はあとで見てください。それとこの制服は最初の一着だけは学園の費用から出るので皆さんがお金を払う心配はありません」



 そんなお金はどこにあるんだと反発する生徒もいた。わたしはそれにも丁重に答える。



「元生徒会長が新聞を発行していたのをご存知でしょうか? 実はあの新聞の発行代だけで年間の学園費用の半分使っていたんですよ。今回はその費用と図書館と購買、各出店からの売り上げで全員分作らせていただきます。売り上げ次第では数年以内に新しい寮の建設を行うことも出来るかと思います」



 この言葉を発した瞬間に男子生徒たちの歓喜の声が練習場内に響いた。男子寮は今にも潰れそうな勢いだもんね。その気持ちはわかるよ。



「わたしからは以上です」



 わたしは司会役の人にマイクを返して壇上から降りた。降りるとクルミさんが拍手をしながら立っていた。



「よく緊張しなかったな。私なら無理だ」

「い、いえ……今にも漏らしそうです……」



 わたしは内股になりながら両手で抑えていた。もう緊張でヤバかった。もう少し終わるのが遅かったら漏らしてたかもしれない。



「……そうか。お手洗いはこっちだ」

「ありがとうございます……」



 わたしはクルミさんに手を引かれてお手洗いに急いだ。ギリギリ間に合った。本当に死ぬかと思った。


 それから時間が経って全校集会も終わり、することもないので、わたしは教室に向かった。そして教室の扉を開けて入ると全員がわたしのことを見てきた。いつもならすぐに視線は無くなるのだが、今日はずっと見てくる。

 


「え? なに……?」

「フェノン、こっち来い」



 何故かリアに胸元を掴まれて教室の角へと連れて行かれた。



「賢いフェノンならこれが何かわかるよな?」

「えっ……? 冗談でしょ……?」



 リアはこの世界には無いはずの拳銃をわたしに突き出してきた。



「フェノンはやり過ぎたんだよ。あれだけの人前でな。これで終わりだ」

「!?」



 わたしは強く目を瞑った。けど、いつまで経っても発砲されない。



「……あれ?」



 恐る恐る目を開けると銃を構えたままのリアがそのトリガーを引いて、教室に大きな音が響いた。



「きゃあっ!?」



 思わず目を瞑ったわたしは再びゆっくりと目を開けるとケーキや風船等があって拳銃もパーティーグッズ用の物だった。



「「「「生徒会長お疲れ様ァー!!!」」」」



 モブたちがそんなことをやっている後ろでクルミさんがクスクスと笑っていた。どうやらリアの拳銃はクルミさんが用意したものらしい。

 わたしはあまりの衝撃的なことだったので、その場に座り込んでしまった。



「ビックリしたか? サプライズパーティーだ! ……どうした? 食べないのか?」

「………………た」

「え?」

「腰が抜けちゃったの!!」



 顔を赤くしながら大きな声で言った。そのあと教室に入ってきたクルミさんに抱っこされながらケーキを食べさせられた。そしてその様子をクラスメイトたちにガン見してくるという羞恥プレイを受けた。

 こういうのはお母様ぐらいしか興奮しないからやめてよぉ……



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