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第30話 生徒会長のお仕事 3


 昨夜は疲れていたからなのか起きたら既に16時を過ぎていた。



「やば、寝すぎた」



 布団から出ようとしたら部屋の扉が開いてリアが入ってきた。



「やっと起きたな。この寝坊助が」



 リアはそう言ってわたしにお茶とお団子を出してきた。



「その……昨日は悪かった。これ食べてくれよ」

「このお団子おいしい~! ……ん? いま何か言った?」

「なんでもねーよ」



 リアの謝罪は全て聞こえてたけど、わたしはそういうのは好まないので、お団子をほお張って誤魔化す。するとリアは安心したようで少し嬉しそうに言った。



「お団子、もっと食べたいな……」



 わたしはお団子を手に持った状態で考え始めた。

 わざわざ外に出ないとお団子は手に入らない。外に出るには許可が必要で先生の所に行くのがめんどくさい。ならお団子屋さんを学園内に持ってきてしまえばいいのでは?



「よし、決めた!」

「また変なこと考えてやがるな……?」



 わたしは早速生徒会室に行って書類の作成に取りかかった。書類内容は特定の店が学園内でも販売できるようにするもの。学園内での利益の1割を学園に渡すことにして、税金は今まで通り領主に払う。内容はこれだけ。

 領主は自分に損がなければ意外と許可をくれることが履歴を見るとわかった。なのでこれで突き通す。


 近いうちに学園内での大会があるらしいので、領主が何か文句を言ってくるならそこだと思う。今回の収入は生徒の制服に充てる。図書館との収入を合わせれば足りると思う。



「よし、サインして書類提出」



 あとは先生に任せて、生徒会室に戻ると授業が終わったからなのか珍しく広報部以外の書記がいた。どうせ仕事ないから来なくてもいいのに。



「会長、意見箱にこんなものがありましたよ」

「意見箱?」



 モブの1人が学園の職員室前にある箱から1枚の紙を出してきた。

 そんなものあったんだね。というか元生徒会長そういうの用意してるのに活用履歴がないから本当に意味がないよね。


 わたしはモブから紙を受けとる。まあ、基本的にわたしがなんでも改革してあげますよ。生徒会長ですからね。



『寮にいて生徒会長である幼女の泣き声がうるさい。なんとかしろ』



 ぐうの音も出ない意見だった。というか幼女言うなし。

 少しぐらい言い訳させてよ! リアがいじめてくるのが悪いんだよ!! ツラいんだよ! 暴言言われて刺さるものは本当に刺さるんだよ!!



「無視。こればかりはどうしようもない」

「会長がここで寝れば全て━━━━」

「ごめん。ちょっと何を言ってるのかわからない」



 というかなんでわたしが犯人だって知ってるの? もしかしてクルミさん? それともリアかな? いや、エリーの可能性も……



「そういえば大会はどうするの?」

「例年は会長が上から眺めて『見ろ人がゴミのようだ!』とか言ってるだけでしたけど、それ以外に何かするんですか?」



 思ったよりも酷かった元生徒会長。せめて表彰するなり警備するなりなにかしてよ。

 大会は団体戦と個人戦の2つでどちらも希望制で稀に優勝者が生徒会長の座を奪おうとするらしい。

 大体それで生徒会長は代わるらしいのだが、去年までは領主の息子が相手で誰も歯向かえなかったようだ。


 そんな領主の息子に歯向かっただけでなく、兄妹揃ってボコボコにしたわたしは頭のおかしいヤバい人という認識になったらしい。



「そういうことだったんだ……」

「しかも勝った相手が1年生ですから『自分も生徒会長になれるかも!』とか希望を持つ人も多いでしょう」



 普通に考えれば領主の子ども二人をフルボッコに出来る実力があるのは分かるんだけどね。

 けど、それを『見た目が幼女だから油断して領主の息子が負けた』と勘違いするやつも現れるかもしれないってことかな?



「僕は生徒会長の実力を知らないので何も言えませんが、生徒会長なら大丈夫です。頑張ってください」



 さらっと矛盾したことを発するモブ。君たちもういらないから帰っていいよ。


 そんなこと思ってると本当に帰っていくモブたち。本当に都合が良くて助かる。



「そういえば今度全校集会があったような……」



 わたしは書類を見直すとやはり4日後に全校集会がある。恐らくそこでわたしの挨拶的なやつが入るので、何を言うのか考えておかないといけないみたいだ。

 それと年に何回か校外学習を行うので、その場所も決めないといけない。



「やること多いよ……生徒会のメンバー全員変えようかな? それで会計とか欲しいのも付け足せばいいかな?」



 それからわたしは全校集会で話すことを決めて、先生に生徒会のメンバーの入れ替えを希望した。

 あの人たちは基本的に仕事しないし、書記の人も何かめんどくさそう。副会長に至ってはそもそも来ない。



「ーーーーっ!? だれ!?」



 生徒会室に戻ると誰かが誰か居るような気配がしたけど、明かりをつけると誰も居なかった。



「気のせいだったかな……?」



 いつもの椅子に座ると違和感を感じた。椅子は少し生暖かく、先ほどまで誰かが座っていたようだ。



「…………」



 よく見てみると書類の山が少し崩れていた。

 何か探してる書類でもあるのかな? とりあえず今のところ急ぐ書類は校外学習だけなので、他はいつも通り決められたファイルにしまって棚に戻す。

 どうせ今夜は眠れないだろうからこのまま生徒会室に籠ろうと考え、わたしは棚から地図を取り出した。



「ルーズベルト領がここだから学園はここかな?」



 校外学習の履歴を見てみると近場の街に観光するか、山に行ってサバイバル生活のどちらかしかなかった。



「近場だとパリス領の温泉街か隣にあるアルカデア王国の首都だね……」



 悩んでいると何か石ころみたいなのが生徒会室に投げ込まれた。首を傾げているといきなり白い煙を吐き出して思わず肩をビクつかせた。



「あれ……? なんか眠く━━━━」



 わたしはその場で倒れた。



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